個人型確定拠出年金(iDeCo)の加入者が非居住者になるとどうなる?

個人型確定拠出年金(iDeCo)の加入者がもし、海外移住や海外転勤になったとき、続けることが出来るのか不安ですよね。ここでは非居住者になった場合の個人型確定拠出年金(iDeCo)の取り扱いと、非居住者のメリット、デメリットがあるのか解説したいと思います。

監修者
株式会社Wizleap 代表取締役。東京大学経済学部で金融を学び、金融分野における情報の非対称性を解消すべく、マネーキャリアの編集活動を行う。ファイナンシャルプランナー証券外務員を取得。

非居住者のまま個人型確定拠出年金(iDeCo)は可能か?

今や、日本企業も海外進出が当たり前の時代になりました。次の転勤先はタイにアメリカに、オーストラリアに・・・なんて海外転勤もよく聞くようになってきました。


さて、そんな海外に行かなければいけない時にもし、『個人型確定拠出年金(iDeCo)』に加入していたら、いったいどうなるのだろう?と心配になりますよね。


『海外移住した際、個人型確定拠出年金(iDeCo)の取扱いはどうなるのか』解説したいと思います。


まず確認すべきは個人型確定拠出年金(iDeCo)の加入資格がどのような時に喪失してしまうかです。


~個人型確定拠出年金(iDeCo)の加入資格が喪失する要件とは~

  • 60歳以上
  • 公務員など共済組合の組合員または加入員
  • 農業者年金に加入している
  • 国民年金保険料の納付免除等の承認を受けている
  • 海外に居住している国内非居住者(国民年金の任意加入者含む)

〝海外に居住している国内非居住者″とあります。

ということは海外に行ったらもう継続できないの?

これってどういう状態のこと?

と疑問に思いますよね。


まずは非居住者という意味を整理したいと思います。

そもそも非居住者の定義とは?


我が国の所得税法では以下のように「居住者」・「非居住者」を示しています。

我が国の所得税法上、「居住者」とは、国内に「住所」があり、また現在まで引き続て1年以上「居所」がある個人を言います。

出典: http://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/2012.htm


「住所」とは「確認の生活の本拠」、いわゆる「住民票の住所」のことで、

「居所」とは、「その人の生活の本拠という程度には至らないがその人が現実に居住している場所」つまりは「本来の住民票に登録している住所以外に実際に居住している場所」です。

また、この1年という判定は183日以上どの国に滞在しているかを問います。これは183日ルールと言われ租税条約のひとつです。


簡単にまとめると『日本国内に住所がない』そして『1年に183日以上日本に住んでいない人』を非居住者と言います。


具体的に非居住者は、外国にある事務所(本邦法人の海外支店等及び現地法人並びに国際機関を含む)に勤務する目的で出国し外国に滞在していたり、2年以上外国に滞在する目的で出国し外国に滞在していたり、出国後外国に2年以上滞在していたり、1年以上にわたり日本以外に居住していたり、期間の定めのない海外転勤、海外留学をしていたり、事務連絡、休暇等のため一時帰国し、その滞在期間が6ヶ月未満であったり(ただし、上記に関わらず、本邦の在外公館に勤務する目的で出国し、外国に滞在する方は例外)などが対象となります。

一部の非居住者は個人型確定拠出年金(iDeCo)を続けることが可能

さて、上記の非居住者の内容を考えると、海外に転勤や移住して1年以上日本に戻らない場合は個人型確定拠出年金(iDeCo)を続けることはできない、となります。


来月から海外転勤で2年は日本に帰れないのにどうしよう!

せっかく始めたiDeCoなのに!


とグローバルに活躍されているビジネスマン・ウーマンの方は不安になりますよね。

しかし一部の人個人型確定拠出年金(iDeCo)を続けることは可能なのです。

非居住者が個人型確定拠出年金(iDeCo)を続ける条件は?

非居住者の方で個人型確定拠出年金(iDeCo)を続けるには


  • 日本のお勤め先にて厚生年金保険を継続して加入することができる方

であれば、海外転勤で、住民票をたとえ日本国内から除籍されたとしても個人型確定拠出年金(iDeCo)を継続して掛けることが可能です。


これは、もともと確定拠出年金制度自体が国民年金・厚生年金にプラスするための私的年金の制度であるので加入資格として「国民年金の被保険者の資格があること」を一番の要件としています。


なので海外勤務でも日本で厚生年金に加入していれば必然的に国民年金の加入者になるので続けることができるのです。


ただし、日本の企業からの派遣という形での転勤ではなく完全に海外現地の企業に移籍し、日本の企業との雇用関係がなくなる場合や、国民年金だけの加入者の方が海外へ移住する場合は個人型確定拠出年金(iDeCo)を続けることはできません。

海外移住の際、非居住者になることのメリット・デメリット

将来海外移住を考えられている方や長期でビジネスで海外に滞在される方など年金を続けることができるのであれば住民票を抜くべきかどうか悩みますよね。


海外移住の際非居住者になるメリットとデメリットをまとめます。

海外移住の際、非居住者になることのメリットは?

1.住民税

非居住者なので住民税は払う義務が発生しません。

ただし、海外移住した日からではなく翌年1月1日時点で非居住者の場合、その年の6月から住民税の支払い義務がなくなります。


2.健康保険

国民健康保険を支払う義務がなくなります。

加入義務がなくなので国民健康保険を返却すると保険料の支払いが免除になります。加入し続けることも希望すれば可能です。


3.免税

大手百貨店、家電量販店などでパスポートを提示すれば消費税の免税を受けることができます。


4.国民年金

国民年金を支払う義務がなくなります。

ただし、日本でのお勤め先にて、厚生年金の継続がある場合は今までと変わらず支払い義務があります。

また、年金の支給額を減らしたくない場合任意で国民年金の継続をすることもできます。


海外移住の際、非居住者になることのデメリットは?

1.確定拠出年金の加入資格の喪失

一部継続できる人もいますが、原則確定拠出年金の拠出の継続はできません。


2.日本の証券会社での取引、銀行の取引の停止

日本の証券会社での売買取引はできなくなります。

銀行の場合は永住者の場合は口座の保有もできないところが多数で、3~5年で帰国予定などの場合のみ保有を認められます。


3.海外単身赴任時、児童手当の停止

児童手当は子と住所を同一にする親に支払われるため、海外単身赴任などの際は受給者を必ず日本に居住する親の方に変更しないと受給が止まります。


4.日本の社会保障制度が対象外

もちろん、支払い義務がなくなる分任意加入などしなければ対象外となります。


iDeCoの加入資格についてはこちらで詳しく解説していますので、ぜひ読んでみてください。


将来非居住者になるならNISAより個人型確定拠出年金(iDeCo)

非居住者になると証券口座取引が制限されますが、NISA口座やジュニアNISA口座を持っていた場合、非居住者になると非課税の取り扱いがなくなり、


清算後(すべて売って)口座の廃止もしくは課税口座に移管しなければいけません。


これはNISAの非課税制度が日本に住む方が対象としている制度だからです。


対して個人型確定拠出年金(iDeCo)の場合もし拠出が継続されない方でも〝運用指図者″として運用内容を選ぶことができます。



将来海外に転勤や移住の可能性があるのであればNISAより個人型確定拠出年金(iDeCo)の方がおすすめと言えるでしょう。

まとめ

将来のために始める個人型確定拠出年金(iDeCo)ですが、原則的に非居住者になった場合拠出は出来なくなり、運用指図者として運用内容の変更のみ可能となります。


しかし、一部続けることができたり、居住者として拠出している間に受けれる節税効果を考えると、海外移住や海外転勤の可能性があるとしても個人型確定拠出年金(iDeCo)に加入し、続ける価値は充分あると思われます。


ランキング