更新日:2022/07/09
火災保険の重複契約で保険金は多くなる?重複契約時の告知義務とは
火災保険の重複契約・二重契約をしても受け取り保険金は増えません。また、火災保険と火災共済の重複加入では保険金の按分制度適用されます。さらに、簡易保険加入者協会の構成員が火災で家財等に損害を受けた場合に保険金がもらえる災害見舞制度は重複受け取りはできません。
目次を使って気になるところから読みましょう!
- 火災保険の重複契約・重複加入で受け取り保険金は増える?
- 火災保険の重複契約・重複加入でも保険金は多くならない
- 火災保険の保険金は損害額が限度
- 火災保険の重複契約が有効な場合
- 重複加入のデメリット
- 注意:重複加入は保険会社にバレる?重複契約の告知義務とは
- 火災保険と火災共済を重複契約するメリットはある?
- 他の保険・特約の重複契約による補償の重複に注意
- 地震保険の重複加入もメリットはない
- 補足:簡易保険加入者協会の災害見舞制度は重複加入できる?
- 重複加入に注意したい2つのケース
- 注意したいケース①引っ越し時に重複加入
- 注意したいケース②住宅金融公庫で特約火災保険に入った人
- まとめ:火災保険の重複契約している場合は1社に絞ろう
目次
火災保険の重複契約・重複加入で受け取り保険金は増える?
ご自分の建物や家財にかける火災保険、加入するからには万が一の時しっかりと保険金を受け取りたいものです。
火災保険を重複契約してその分多く保険金が下りるなら、確かにお得ですよね。
しかし、火災保険では、重複契約しても下りる保険金が多くならないことをご存知でしょうか。
重複契約をすると基本的に保険料が過分にとられてしまい、得られるメリットはそう大きくはありません。
そこで今回は、「火災保険の重複契約の有効性と注意点」について
- 重複契約で受け取れる保険金は増えない理由
- 火災保険と火災共済の両方に加入するメリット
- 自動車保険の個人賠償責任特約との重複を確認
火災保険の重複契約・重複加入でも保険金は多くならない
生命保険であれば、不正な目的などによるケースを除いて、重複契約の場合は加入した分だけ保険金(給付金)が下ります。
では、火災保険のような損害保険でも生命保険と同じように、重複契約した分保険金が多く下りるのでしょうか?
残念ながら火災保険をはじめとした損害保険では、重複契約しても必ず多額の保険金が受け取れるわけではありません。
重複加入で得する場合も稀にありますが、基本的に降りる保険金は増えず、単に無駄にお金を払ってしまうケースが多いです。
以下で火災保険の重複加入について詳しく見ていきましょう。
火災保険の保険金は損害額が限度
火災保険の保険金の限度は「損害額」です。したがって、重複契約していても貰うことの出来る保険金は合算して「損害額」がマックスです。
例えば、評価額2,000万円の家にA保険会社とB保険会社とそれぞれ契約し災害により全壊した場合には、保険金は最大での2,000万円になります。A保険会社から2,000万円の受け取りをしたら、B保険会社からは保険金は0です。どちらからも2,000万円ずつ貰い総額4,000万円となることはありません。
生命保険や医療保険の場合、複数社契約している場合にはその分受け取ることが出来ます。そのため医療保険では、実際に負担した金額よりも保険金受取額の総額はが大きくなる場合もありますよね。
しかし、火災保険においては、そのようなことは絶対出来ません。
重複契約することは出来ますが、保険会社は重複がないか告知により必ず確認するため受取金額の総額が損害額以上になることがないようにしています。
そのため、重複契約自体は違法ではありませんがメリットはありません。重複契約している場合に告知しないと契約違反となりますがこのことについてはこの後に詳しく説明します。
火災保険の重複契約が有効な場合
あまりメリットのない重複契約ですが稀に有効なケースもあります。
<重複契約が有効な場合>
- 増築や改築した分を他保険会社で契約した場合
- 建物の評価額よりも少ない金額で契約している場合
- 建物と家財をそれぞれ違う保険会社では契約している場合
支払う保険料については、保険金の合計が建物の評価額内となるように計算して設定していれば過剰に払っていることにはならないですが事務手続きが2つ分となることを考えると手間がかかるだけでメリットはないと言えます。
重複加入のデメリット
火災保険の重複加入には、具体的にはどのようなデメリットがあるのでしょうか。
重複加入のデメリットは、主に以下の4つがあげられます。
- 保険金の請求手続きが煩雑になる
- 保険金の給付に時間がかかる
- 保険金の給付に制限がかかることがある
- 支払いが複雑になる
複数の火災保険に重複加入していると、万が一自宅が火災や災害の被害を受けた際には複数の保険会社に請求する必要があり、その分手続きが煩雑になります。
災害などで被害を受けて精神的にも大変な中、複数の保険会社とやり取りするのは負担が大きくなります。
また、複数契約があると保険会社同士でもやり取りや調整が必要になるため、給付までに時間がかかる可能性も高くなります。
加入している二つの保険会社で補償内容が異なっていると、一方の契約では支払うことができるがもう一社の契約では支払えない、ということもありえます。
複数加入の場合、各社で補償内容だけでなく支払いのルールが違うこともあり、保険金の支払いもわかりにくく複雑になります。
注意:重複加入は保険会社にバレる?重複契約の告知義務とは
火災保険の重複加入時には、告知の義務があります。
複数の保険への加入を各保険会社へ報告せずに、それぞれの保険会社から保険金を受け取ることはできません。
これが単なる報告忘れの場合であれ、意図的に報告しなかった場合であれ、保険会社から不当請求を疑われることになります。
不当請求とみなされると、保険金が下りなくなり、契約を解除されることもあるので気を付けましょう。
火災保険と火災共済を重複契約するメリットはある?
火災等による損害を補償してくれる商品には、火災保険のほかに火災共済があります。
双方とも保険加入者が被った実損害を補償する商品である点は同じです。
火災保険は保険会社が取り扱う商品であり、火災共済は共済事業を行う非営利団体(生活協同組合等)が取り扱う商品です。
火災保険と火災共済を組み合わせて加入することによるメリットやデメリットはあるのでしょうか。
残念ながらメリットはありません。デメリットの方がはるかに多いのです。
しかし、保険加入したことで、保険会社(共済)それぞれに保険料(掛金)を支払う必要があります。ですから、その分家計への負担は重くなってしまいます。
また、火災共済や火災保険を申し込む場合は、インターネットで申し込みが完了できるので便利と言えます。
しかし、損害が発生し保険金を請求する場合には、次のような多くの書類が必要になります。
- 保険金請求書
- 損害見積書:火災等による建物・家財への損害の程度を立証する書類
- 損傷箇所の写真:損傷箇所を証明する写真
- 修理見積書:実際に修理を行った業者から取得した書類
メリットがないのにこれだけの書類を用意しなければならないのです。
このように、火災保険と共済との重複契約はあまり意味がない方法といえます。
他の保険・特約の重複契約による補償の重複に注意
重複契約以外にも注意したいのが他保険との特約など補償内容の重複です。
火災保険の中にある特約は、火災保険同士の重複以外にも自動車保険など他の種類の保険にもつけることができるものがあります。しかし、重複加入同様に2つ付けているからといってどちらの補償も受け取ることが出来るというわけではありません。
特約の重複は、意外と見落としがちなので気を付けましょう。ここでは、重複に気を付けたい以下の3つの特約について説明します。
- 個人賠償責任特約
- 類焼損害・失火見舞費用補償特約
- 借家人賠償責任特約
まず、1つ目は個人賠償責任特約です。この特約は、被保険者またはその家族が他人に怪我をさせたり、他の人の物を壊してしまい賠償責任が生じた場合に使うことの出来る補償です。
この補償は、火災保険の他に自動車保険等にも付けることが出来る特約です。自動車保険にも加入している人は重複しないように注意しましょう。
2つ目は、類焼損害・失火見舞費用補償特約です。この特約は、自分の家の火災により近所の住宅や家財に被害を及ぼしてしまった場合の補償です。建物と家財で別々の火災保険を契約している場合に補償が重複している場合がありますので注意しましょう。
3つ目は、借家人賠償責任特約です。この特約は、賃貸の場合の大家さんに対する補償です。借家で火災等を起こし建物の損害を与えてしまった場合に大家さんに対しての損害賠償を補償するものです。
この特約は、他に傷害保険を契約している場合には重複する可能性がありますので注意しましょう。
このように故意ではなくても他の保険と重複していることもありますので気を付けましょう。
地震保険の重複加入もメリットはない
地震保険の場合、保険金額は火災保険の30%から50%の範囲でしか設定出来ません。さらに上限金額は建物であれば5,000万円、家財であれば1,000万円となっています。
もし地震で家が全壊してしまった場合には建替え費用が足りないという場合もあります。
そのため地震保険を複数加入すれば、貰える保険金も多くなるでのは?と考える人もいるのではないでしょうか。
しかし、地震保険に関しても火災保険と同様に補償される金額に限度があるため重複加入のメリットはありません。
もし、地震に対してもっと備えたいと考えるのであれば、保険会社によっては保険料を上乗せし補償を高くすることが出来る場合もあります。
また、地震保険とは別に「地震補償保険」という保険があります。こちらは火災保険とセットで加入する地震保険とは違い単独で加入することの出来る保険になります。
地震補償保険は、被災した場合の「罹災証明書」により被害内容を確認し契約している保険契約に基づいた保険金は支払われるため地震のための補償を厚くすることが出来ます。
ただし、いづれの方法においても保険料の支払いが追加で生じますのでよく考慮したうえで決めましょう。
補足:簡易保険加入者協会の災害見舞制度は重複加入できる?
災害見舞制度とは、簡易保険加入者協会の構成員が、火災等で家屋・家財に損害を受けた場合、お見舞金が下りる相互救済制度です。
こちらの場合も、簡易保険加入者協会および他の保険会社から、重複して保険金・お見舞金は受け取れません。
災害見舞制度では次の場合にお見舞金が下りることとなります。
- 他社の保険契約等より、いまだ保険金(共済金)が支払われていない場合
- 他社の保険契約等から保険金(共済金)が支払われたとき、損害額より当該保険金(共済金)の合計額を差し引いた額が支払われる
重複加入に注意したい2つのケース
火災保険は一度加入すると、その後は意識せずに過ごすことが多い保険です。
そのため、以下のような場合には、気が付かない間に重複加入していた、という可能性があります。
- 賃貸から賃貸への引っ越し時
- 昔、住宅金融公庫で特約火災保険に入っていた場合
火災保険の重複加入にありがちなこれらのケースについて紹介しますので、自分には当てはまらないか確認しておきましょう。
注意したいケース①引っ越し時に重複加入
賃貸物件から賃貸物件へ引越しをする場合、現在契約中の火災保険で異動手続きを行い、新しい家でも契約を継続することができます。
しかし実際には、現在契約中の火災保険を解約し、引っ越し先で新たな火災保険に加入することが多いでしょう。管理会社が指定する火災保険しか選べない物件もあり、その場合には、現在の火災保険は解約し管理会社指定の火災保険に入り直すこととなります。
このとき、既存の保険を解約し忘れ、新たに火災保険に入ってしまうケースがあります。
引越しの際は保険以外にも手続きが多くあり、重複加入も見逃されがちなので注意しましょう。
注意したいケース②住宅金融公庫で特約火災保険に入った人
かつては、住宅購入時に住宅金融公庫で住宅ローンを借りる際に、公庫専用の火災保険「特約火災保険」への加入が必須でした。
このとき住宅ローンとセットで加入したため、住宅金融公庫で住宅ローンを借りた人の中には、公庫の完済と一緒に火災保険も契約が終わっていると勘違いしているケースもあります。
たとえば、以下のような事例もあります。
20年ほど前に、住宅金融公庫でローンを借り同時に期間30年の特約火災保険に加入。その後ローンは完済したが、火災保険は継続したままだった。しかし、そこから10年以上経ち、火災保険に加入しているままだと気が付かず、新たに火災保険に入ってしまった。結果、重複していることに気づくまでの間、必要のない保険の分の保険料を払い続けてしまった。
かつて住宅金融公庫で特約火災保険に入ったことのある人は、一度、自分の加入状況を確認しておきましょう。
この事例のように火災保険に重ねて加入してしまわないよう、古い契約書類等は1ヶ所にまとめておくと、後から確認がしやすくなります。
まとめ:火災保険の重複契約している場合は1社に絞ろう
火災保険の重複契約の有効性と注意点について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。
今回の記事のポイントは
- 火災保険を重複契約したからといって下りる保険金は多くならず、保険料を無駄に払うだけになる
- 重複加入の告知義務に違反して保険金を請求すると、保険金が下りないだけでなく、契約解除もあり得る
- 火災保険を重複契約した場合は下りる保険金が按分されるので、多くもらえるわけではない
- 保険金請求の手続きには多くの書類が必要であり、2社に対して請求するのは手間がかかる