育休が個人型確定拠出年金(iDeCo)のメリットに及ぼす影響を解説

個人型確定拠出年金(iDeCo)拠出中に育休を取得しても基本的に影響はありませんが、育休中については拠出金による税金の減額という個人型確定拠出年金(iDeCo)の特性について影響がでるケースも想定されます。拠出を休むことも可能なのでよく検討して拠出しましょう。

個人型確定拠出年金(iDeCo)と育休制度との関係

個人型確定拠出年金(iDeCo)に加入して、個人型確定拠出年金(iDeCo)の拠出金を毎月拠出している際に育休を取得することとなった場合、その育休取得により、毎月の個人型確定拠出年金(iDeCo)の拠出金は継続していけるのか、拠出金の払込み方法等に影響はでないのか、育児休業給付金を受けた場合の掛金の課税所得からの控除の効果はどうなるかなど様々な疑問があります。


それぞれ見ていきましょう。

育休に係る法制度について

まず育児休業制度について勤務先で差がでるのかを検討しておくと、法体系としては民間のサラリーマンは介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律、国家公務員は、国家公務員育児休業法、地方公務員は、地方公務員育児休業法と3つの法体系で整理されています。


いずれも原則生後1年まで取得可能や育児休業給付金が制度として認められているなど基本的な仕組みは同じです。

育休所得に係る経済的な効果について

育休を取得した場合の経済的な効果としてまず育児休業手当金が支給されます。


子どもが1歳の誕生日を向えるまで給付され、取得から180日経過までは標準報酬月額の67/100の割合で、残りの期間は50/100の割合で支給されます。


また、公的年金や公的医療保険の掛金分を免除してもらうことができます。


育休

育休

育休制度による個人型確定拠出年金(iDeCo)への影響

以上のような育児休業の制度を踏まえて、個人型確定拠出年金(iDeCo)を行っている者が上記のような育休制度を活用した場合にどのような影響を受けるでしょうか。


特に個人型確定拠出年金(iDeCo)の拠出金は育休中も拠出可能なのかということと、個人型確定拠出年金(iDeCo)の拠出方法について育休取得が影響を与えるのかについて検討してみましょう。

拠出金の取り扱いについて

個人型確定拠出年金(iDeCo)は、公的年金というより自分の資産形成に資する資産運用という機能を有するものです。


したがって、個人型確定拠出年金(iDeCo)の拠出金が免除されるが、拠出したのと同様の経済的利益を享受するということはありません。


また、自分の資産形成である以上、拠出金を払い込まなければ、単にその月の拠出金が運用原資に入らないだけということになります。


よって、育休の影響はないです。

拠出金の払込み方法について

個人型確定拠出年金(iDeCo)の拠出金そのものについては育休制度による影響はありません。


しかし、毎月の個人型確定拠出年金(iDeCo)の拠出金の払込み方法について個人払いで行っている場合は影響ないのですが、事業主払込みを行っている場合影響を受けます。


育休中は一般的に給料が出ないので事業主が給与天引きできないからです。


この場合は、個人払いに変更して拠出金を拠出していく手続きが必要となります。


育休2

育休と個人型確定拠出年金(iDeCo)の節税の効果

以上のように個人型確定拠出年金(iDeCo)の拠出金を払い込めるとした場合、毎年の所得税及び住民税の税額を計算する際の課税対象となる所得である課税所得から拠出金の総額を差し引くことができるという個人型確定拠出年金(iDeCo)の性質を活用できることとなるのですが、育児休業給付金が支給されている場合、常に有利になるか税制度を踏まえた上で検討が必要です。

所得税、住民税課税に係る制度

所得税、住民税の計算については、収入ー控除=課税所得、この課税所得について所定の税率を掛けて算出するというものです。


額面の給与などは、収入に代入され、基礎控除や社会保険料控除等が控除に代入されることとなります。


その上で、育児休業給付金の性質ですが、課税対象となる収入としない制度となっています。


すなわち収入としては0円として計上します。

給付金がある場合の税金額の計算方法

では、年度途中で育休取得するとした場合、途中までは、給与が支払われていますのでその分は収入に計上、しかし、育児休業以降の育児休業給付金は収入には計上しない。


そして基礎控除、給与所得控除を計上し、給与に伴う社会保険料等の支払について社会保険料控除に計上するという段取りになります。


そして、拠出金について課税所得から差し引きます。仮に税率が10%とすると拠出金の10%税金が安くなるということです。

育休中に拠出金を拠出するか疑問がある事例

このような計算方法で育休中の税額が算出されることとなるのですが、この計算方法をよく見た場合にはたして育休中に個人型確定拠出年金(iDeCo)の拠出金を拠出した方が得なのかという事例がでてきます。


確かに、運用益非課税の複利運用の特性を考えると拠出額と利回りを決めないと比較できないのですが疑義ある事例をあげてみます。

1月から育休を取得した場合

所得税及び住民税の計算については、1月から12月までの収入や控除の状況を対象としています。


この1月から12月までという期間を考えた場合、1月初頭に育児休業に入った場合、当該年の収入はほぼ0円ということとなるでしょう。


0円から拠出金を差し引いても0円なので税額を減額する効果が望めないということとなります。

給与が少ない状況での育休の場合

例えば給与収入が90万円、基礎控除や社会保険料控除等の控除が80万円、拠出金が月2万円の場合、課税所得は社会保険料控除等を差し引くと、10万の課税所得で、これから24万を全額を差し引けないので14万円分は個人型確定拠出年金(iDeCo)の機能を発揮しません。


この事例だと税率5%なので、本当は24万円の5%分1万2千円可処分所得が増額できたのが、5000円しか増額できないという状況になります。

まとめ

個人型確定拠出年金(iDeCo)を拠出している者が育児休業を取得する場合について、育休中も掛金を継続する場合は掛金の払込み方法について事業主払いの場合は注意して個人払いにしていくことに留意しましょう。


しかし、一歩立ち止まって、育休中に個人型確定拠出年金(iDeCo)の拠出金を払い込んでいくことが運用益非課税での複利運用という個人型確定拠出年金(iDeCo)の特徴を考えても有利になるのか考えてみる必要があるでしょう。

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