更新日:2020/05/01
火災保険の保険料は経費計上できるの?仕訳方法を解説
火災保険の保険料は、事業所(店舗や事務所)に関係する場合は経費計上が可能です。自宅兼事務所や店舗併用住宅の場合は、一部が経費として仕訳され、賃貸マンション等の賃貸経営の場合は保険料控除の対象にはなりませんが、経費計上が可能です。今回は火災保険料が経費計上できる場合を解説します。
目次を使って気になるところから読みましょう!
- 火災保険の保険料は経費計上できるの?仕訳方法を解説
- 火災保険の保険料が経費計上できる場合
- ①店舗・事務所等事業に関係する場合は経費計上可能
- ②店舗兼住宅・自宅兼事務所の場合は一部経費計上可能
- ③長期契約の場合はその年に帰属する分のみ経費計上可能
- 参考:賃貸マンション等の賃貸経営の場合も火災保険料は経費計上可能
- 火災保険の保険料が経費計上できない場合
- 火災保険の保険料の仕訳例を紹介
- 仕訳例①火災保険の契約期間が一年契約の場合
- 仕訳例②火災保険の契約期間が長期(長期一括払い)の場合
- 注意:自宅の火災保険は確定申告の保険料控除対象外
- 個人でも地震保険は保険料控除が可能
- まとめ:火災保険の保険料は経費計上できる場合とできない場合がある
目次
火災保険の保険料は経費計上できるの?仕訳方法を解説
火災保険の保険料は経費として計上できるのでしょうか。
平成18年の税制改正で、個人としての火災保険料は所得税や住民税の控除対象外となりましたが、経費として計上することは可能です。
では、個人事業主や会社を経営している場合、火災保険料はどのように計上すべきでしょうか。
今回は、「火災保険の保険料は経費計上の可否とその方法」について
- 火災保険の保険料が経費で計上できる場合
- 火災保険の保険料を経費計上できない場合
- 火災保険料の処理の仕方
火災保険の保険料が経費計上できる場合
火災保険の保険料が経費として計上することが出来る場合には、どのようなケースが考えられるのでしょうか。
個人の住宅や家財にかかる火災保険の場合では、その保険料は経費として計上することは出来ません。
ですが、個人事業主の場合や会社経営の場合であれば、火災保険料は経費として計上が出来るものがあります。
また、火災保険料を経費計上する時の勘定科目は、「損害保険料」になります。
火災保険の保険料がどう経費として扱えるのか、店舗や事務所にかかる保険料と店舗兼住宅においての保険料で見ていきます。
①店舗・事務所等事業に関係する場合は経費計上可能
火災保険の保険料は、店舗や事務所などの事業用の建物や事業用及び商用の動産に対してかけているものについては、経費として計上することが出来ます。
火災保険は、地震保険もセットにして加入している場合が多いです。
地震保険に関しても同様で、経費として計上が出来ます。
他に経費で計上することが出来る保険では、自動車保険があります。
営業用で使用しているものや、商用として使っている自動車にかけている自動車保険の保険料も経費に計上が可能です。
また、これらの保険料は、保険契約をして保険料を払い込んだ時点で経費として計上することが出来ますが、年をまたいだ場合で保険料を計上するという時は、「前払費用」として計上します。
②店舗兼住宅・自宅兼事務所の場合は一部経費計上可能
住宅の一部を店舗に使用しているケースは多いですが、この場合も保険料を経費にすることが出来ます。
経費に計上できる範囲は、建物のうちの店舗などの事業用として使用している部分になります。
事業用として使用している部分を全体の面積等との割合から保険料を算出し、経費として計上します。
住宅用の火災保険でも十分な補償ですが、店舗に注目した「店舗保険」、事務所などの「一般物件の火災保険」もあり、補償範囲や内容が事業用として充実している保険です。
これらは補償範囲も広く、保険料も通常の火災保険よりも高くなります。
保険料を抑えたい場合は、住宅用の火災保険に入る方が得と言えます。
また、店舗保険や一般物件の火災保険の保険料も、経費に計上します。
③長期契約の場合はその年に帰属する分のみ経費計上可能
長期契約での火災保険の場合では、保険料は一括で支払う場合が多いです。
金銭的に見ると支払いは一括であるので、仕訳も契約をした年度に一括で支払った金額を計上すると考えがちです。
しかし、その場合の仕訳は、その年に対応する保険料を期間按分した金額を計上することになります。
例えば、10年契約で火災保険に加入した場合、保険料である20万円を一括で支払ったとします。
その場合は、20万円を10年で割った金額を1年分の保険料とし、つまり2万円をその年度の保険料として経費に計上します。
以後、毎年、同額の保険料を経費として計上していくことになります。
また、翌期以降の保険料の計上では、「長期前払費用」として計上します。
参考:賃貸マンション等の賃貸経営の場合も火災保険料は経費計上可能
賃貸マンション等の賃貸物件などの不動産経営をしている場合、その物件にかける火災保険の保険料は経費に計上することが出来ます。
経営している賃貸物件にオーナーが住んでいる場合の火災保険の保険料は、経費として計上できる部分とそうでない部分があるので注意が必要です。
オーナー自身が住居としている部分についての地震保険料は確定申告や年末調整での保険料控除で計上します。
賃貸としている部分についての火災保険料や地震保険料は不動産の経費として計上します。
経費で計上できる部分と、経費では計上出来ないが個人の所得税や住民税の控除となる部分をしっかりと把握しおきましょう。
火災保険の保険料が経費計上できない場合
火災保険の保険料が経費として計上出来ないものには、事業以外で使用している自宅などにあたる不動産や動産になります。
店舗兼住居となっている不動産に関しては、住居の部分だけにあたる保険料が経費としては計上することは出来ません。
地震保険については、住居の部分にあたる保険料は「地震保険料控除」として確定申告や年末調整時に計上します。
また、自宅の一室全てを利用して商用の衣類をストックしていた場合、その部屋に対する火災保険の保険料を経費として計上することが出来ます。
それにかかる保険料の算出には、床面積などで割合を出し、按分した分を保険料として計上します。
火災保険の保険料の仕訳例を紹介
住居や家財などにかけている火災保険の保険料は経費とすることは出来ず、店舗や事業所などの事業にかかる火災保険の保険料のみが経費として計上できることがわかりました。
では、経費で計上する場合、火災保険料の計算や仕訳はどのようにするのでしょうか。
次にあげる
- 火災保険の契約期間が一年契約
- 火災保険の契約期間が長期契約(一括払い)
仕訳例①火災保険の契約期間が一年契約の場合
火災保険の契約期間が1年とした場合の保険料は、「損害保険料」と「前払費用」の科目を使って仕訳を行います。
<火災保険料12,000円>
12,000円×9/12月=9,000円(当期の保険料)
7/1仕訳:(損害保険料)12,000円/(普通預金等)12,000円
期末仕訳:(前払費用)3,000円/(損害保険料)3,000円
期首仕訳:(損害保険料)3,000円/(前払費用)3,000円
になり、月で割った金額9,000円が「損害保険料」として計上されます。
この様に、契約期間が次年度にまたがっても全額をその年の経費とすることが出来ます。
上記の仕訳を行ったら、継続する場合は毎年同じ内容で仕訳をする必要があります。
仕訳例②火災保険の契約期間が長期(長期一括払い)の場合
火災保険の契約期間が長期だった場合、保険料を一括で支払ったとしても、保険料は期間按分する必要があります。
<火災保険料150,000円一括支払い、契約期間5年で計算>
当期分の保険料の仕訳
150,000円×9/60月=22,500円(当期の保険料)
7/1仕訳:(損害保険料)150,000円/(普通預金等)150,000円
期末仕訳:(前払費用)30,000円/(損害保険料)127,500円
(長期前払費用)97,500円/
※次期保険料=30,000円(127,500円×12/51日)
翌期分の保険料の仕訳
翌期では、以下の仕訳をします。当期の保険料=30,000円(127,500円×12/51日)
期首仕訳:(損害保険料)30,000円/(前払費用)30,000円
期末仕訳:(前払費用)30,000円/(長期前払費用)30,000円
注意:自宅の火災保険は確定申告の保険料控除対象外
事業用の建物にかける火災保険の保険料は確定申告時においては控除の対象外ですが、経費として計上することが出来ます。
自宅の住居などにかける火災保険の保険料も、確定申告や年末調整では控除の対象外となります。
平成18年の税制改正前では、確定申告や年末調整において「損害保険料控除」という項目があり、火災保険料も控除の対象でした。
しかし、改正以降は「損害保険料控除」という項目は廃除され、「地震保険料控除」及び「旧長期損害保険料控除」という項目で、それらに該当する保険料が控除の対象となりました。
自宅の火災保険が「旧長期損害保険料控除」の対象である場合は、税制改正前と同様に控除の対象になるので確認が必要です。
個人でも地震保険は保険料控除が可能
火災保険の保険料は確定申告や年末調整での控除の対象とはなりませんが、火災保険とセットで加入していることの多い地震保険の保険料は控除の対象となります。
そうすると、火災保険の控除がないとなると控除額が減ることになるのではと思いますが、地震保険料控除額の枠はかなり広くなっています。
地震保険料控除額は、50,000円以下の保険料では全額が、50,000円以上の保険料では一律50,000円が控除されます。
まとめ:火災保険の保険料は経費計上できる場合とできない場合がある
火災保険料の経費計上について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。
今回の記事のポイントは
- 火災保険料は事業用としてかけた火災保険であれば経費計上できる
- 店舗兼住宅の場合の火災保険料は店舗にかかる分のみが経費として計上可能
- 火災保険の契約期間によって仕訳が違う