死差益の意味とは?計算方法や各社の推移、長寿化との関係を解説!

死差益の意味とは?

死差益とは、生命保険会社の利益の源泉の一つで、保険金が発生する想定の死亡率(予定死亡率)と実際の死亡率との差分から発生します。


保険会社は終身保険や死亡保険を販売する上で、予定死亡率を厚生労働省の試算より高く見積もっているため、死差益が発生します。


支払う保険金の金額が予定死亡率から算出された金額を上回った場合に損失が生まれます。 


損害保険では、死差益に該当するものを危険差益と呼んでいます。 


こちらは保険金支払いの試算数と実際に払った額で損益を計算します。

死差益の計算方法は?

死差益は、厚生労働省の発表する年代・性別ごとの死亡率データをもとに保険会社が想定した「予定死亡率」を基に計算します。


予定死亡率のように、保険料の計算の基になっているものを「保険料計算基礎」と呼びます。


予定死亡率が高く見積もられると、契約者の死亡数が増えて保険会社が契約者に支払う死亡保険金が増えるため、多くの出費を予定する必要があります。


より高い保険金の出費に備えるため、保険会社は保険料の値上げによってより多額の資金を集めることになるのです。


また、予定死亡率は主に予想死亡率から計算されるため、景気の変動を受けにくく、保険会社は死差益によって安定した利益を得ることができています。

三利源で会社の収益と保険料が決まる

保険会社は「三利源」と呼ばれる以下の3つの資産運用を利益の源泉としています。


  • 死差益(損害保険では「危険差益」)
  • 利差益
  • 費差益


利差益」とは、実際の運用収益よりも、想定された運用収益(予定利率)の方が大きい場合に得られる利益です。


そして「費差益」は、予定された事業費(予定事業費率)よりも、実際の事業費の方が安かった場合に得られる利益を意味します。


保険会社は、これらの「三利源」から利益を計算することで保険料を決定しています。


予定死亡率、予定利率、予定事業費率が実際よりも高いと、保険会社の利益が少なくなってしまうので、保険料は高くなってしまうのです。

死差益は長寿化により大きくなっている

死亡する人が少なくなれば、保険会社が支払う保険金は少なく済みます。


そのため、長寿化が進むことで死亡する人が予定より少なくなれば、短期的に死差益が大きくなります。


新規の保険参入者-保険契約者の死者数×保険金

で保険会社が利益を出すところ、


近年は死者数が長寿化によって減り、新規に保険料を納める人は増えるため、一人当たりの保険料の負担が減っていました。


将来人口減少によって保険料を納める人は減り、長寿化でたくさんいた契約者が死亡して保険金を多く支払う必要がでてくるため、保険料が上がります。


現在は医療の発達による長寿化が進み、保険会社の死差益(死差損益)は大きくなっているため、保険料の値下げが行われています。


しかし、長寿化の傾向はあっても、誰しもいつかは亡くなってしまうので、この傾向は短期的なものでしかありません。

生命保険会社の収益は死差益が大部分

保険会社の三利源は非公開とされてきましたが、2006年から三利源の内訳が開示されるようになりました。


開示された生命保険会社13社の内訳を見ると、どの会社も死差益に大きく依存している収益構造であることがわかります。


どの保険会社も全体の利益である基礎利益(業務利益)に対して、死差益の割合が非常に大きいのです。


例えば、開示された日本生命、第一生命、住友生命それぞれの死差益と基礎利益は以下のようになっています。


  • 日本生命:5800億円(基礎利益6386億円)
  • 第一生命:4356億円(基礎利益4694億円)
  • 住友生命3550億円(基礎利益2664億円)


また、死差益が大きく利益を出しているのに対して、利差益がすべての会社で赤字であり、費差益はすべての会社で黒字です。

20年後には死差益が減少する

保険会社の基礎利益を支えているのは死差益ですが、その死差益が20年後には減少すると考えられています。


死差益が減少する理由は、人口減少に伴って保有契約高が減少していくからです。


死亡保険の契約をするのは労働者であるため、総人口に占める労働力比率が高ければ保有契約高も増加します。


今後10年くらいは、労働力人口の比率が現在のままで推移していくと考えられているので、保有契約高はそれほど減少しません。


しかし、20年後は労働力比率が50%を下回るので、2015年の保険契約高と比較すると100兆円減少するとされています。


死差益の減少が避けられなければ、生命保険会社は保険料を値上げすると考えられます。

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