更新日:2020/06/19
火災保険の建物評価額の算出方法って?計算方法と注意点を解説
建物評価額は保険金額を算定する際に必要で、新価(再調達価額)と時価の2種類の評価基準があります。評価額の決め方は新価(再調達原価)で設定することをおすすめします。建物評価額は建物が新築の場合、消費税額を消費税率で割ることで計算出来ます。一部保険や超過保険にならないよう注意が必要です。
目次を使って気になるところから読みましょう!
火災保険の建物評価額の決め方・算出方法って?
火災保険とは、大切な我が家が火災に遭ってしまったとき、保障してくれるものです。
火災はめったにあることではないと思いがちですが、総務省消防庁の発表によると、2019年の全国における総出火件数は約37,000件です。1日あたり103件、14分に1件の火災が起きた計算になります。中でも建物火災は約20,000件も発生しているのです。人ごとでは済ますことのできない数字ですね。
日頃から火の取り扱いに気を付けるのはもちろんですが、いざというときのために火災保険に加入することも、安心して暮らすことのできる大事な要素となります。
適正な火災保険に加入するために、ぜひ知っておきたいのが算定方法とその基準です。
この記事では火災保険の建物評価額の算出方法について、
- 建物評価額の基準「新価」と「時価」とは
- 建物評価額の計算方法
- 火災保険の建物評価額は保険金額に
- 保険料の目安
以上のことを中心に解説していきます。この記事を最後まで読んでいただけると、火災保険の算定方法の理解に役立てていただけるかと思います。
火災保険の建物評価額には新価と時価がある
火災保険に加入するとき、どのくらいの保障があればよいのか、迷った経験はありませんか。どのくらいの保障があれば安心して暮らせるのか、いざというときに困らないのか、明確にわかる方は少ないかと思います。
建物の保険金額は一体何を基準に設定するのでしょうか。
火災保険の契約をするときは、保険金額は建物評価額を参考にします。そして、その建物評価額には「新価」と「時価」という二つがあるのです。
「新価」とは、同じ物件をもう一度建て直す、又は購入するのに必要とする金額(再調達価格)のことを意味します。
また、月日が経つごとに家も家具も古くなり、劣化することで価値が下がります。「時価」とは、そういった経年劣化による価値の減少と、使用による消耗分を差し引いた金額のことを意味します。
2,000万円で新築し、年数が経ってしまったため現在は1,500万円の価値になってしまった建物を例に挙げてみます。「新価」を基準にした火災保険では火災が発生し建て替えが生じてしまった場合、2,000万円を上限として保険金を受け取ることができます。しかし、「時価」を基準にした火災保険では現在の価値である1,500万円までしか受け取ることができません。
このことから、火災保険は「新価」を基準に掛けていた方がいざというとき保険金を多く受け取ることができ、修理や建て替えがスムーズに行えるためより安心であることがわかります。
火災保険の建物評価額の計算方法
火災保険は建物評価額を算定し、その価格を基準として保険金額を決定するという設定方法です。火災保険を決める際に建物評価額はとても大事な要素と言うことがわかります。
建物には新築物件、中古物件、マンションと様々あります。そして、建物評価額の計算方法も建物によって違いがあるのです。そこで、ここでは次の3つのパターンについて計算方法をご説明します。
- 新築物件の建物
- 中古物件の建物
- マンション
また、最近の火災保険は、損害を受けてしまった建物を同じように建て直したり、同等の建物を購入するだけの保険金額を受け取ることができる「新価」を基準とした契約が主のようです。そのため、この記事では「新価」を用いた計算方法をご紹介いたします。
建物が新築物件の場合
建物が一戸建ての新築物件の場合、建物評価額はどのように決まるのでしょうか。
建物だけの価格がわかるとき
購入(建築)したときの総費用から、土地代や諸経費を除いた建物だけの価格、それが建物評価額です。
土地は親から譲り受けそこに建物を新しく建てた、気に入った土地を購入しハウスメーカーに頼んで家を建てた、などはこの方法で算定することができます。
建物評価額=建物の価格
建物だけの価格がわからないとき
建売住宅でよくあるパターンが土地と住宅のセット売り。土地と住宅の併せた金額が購入金額として提示され、建物だけの価格はわかりません。
このようなときはどのように建物評価額を決めるのでしょうか。
簡単に計算できる方法があります。消費税は建物部分だけにかかり、土地にはかからないので、次の計算式をつかって算出することが可能です。
建物評価額=消費税額÷消費税率
消費税は建物部分しか課税対象ではないので、売買契約書に記載されている消費税額はすべて建物部分に対してのものです。そのため、消費税額を消費税率で割れば建物だけの価格が算出され、建物評価額がわかります。
消費税率は契約した時期、受け渡しを行った時期によって違いますので、注意が必要です。
建物が中古物件の場合
建物評価額を知るためには、建物の新築した年と新築したときの価格が必要ですが、中古物件の中には特に新築時の価格がわからないことが多くあります。
中古物件の建物の場合、建物評価額は状況に応じて以下の二つの方法で算出します。
新築年と新築時の建物の価格がわかる場合
新築時の建物の価格に新築時点から評価する時点までの価格変動率をかけることで建物評価額を算出する、「年次別指数法」という方法を使用します。
建物評価額=新築時の建物の価格×価格変動率
価格変動率は建築費倍率とも呼ばれ、毎年変動があるため確認が必要です。
新築年と新築時の建物の価格がわからない場合
建物の構造や所在地などを元に算出された1平方メートル当たりの標準的な建築費(新築費単価)に、建物の延べ床面積をかけて建物評価額を求めます。これは「新築費単価法」と呼ばれている方法です。
建物評価額=新築費単価×延べ床面積
新築費単価を使用する場合、単価は実態に合わせて20~30%調整することが可能です。
マンションの場合
マンションの建物評価額を求めるには、専有部分の建物の価格が必要です。
マンションの購入価格とは
マンションを購入するときはそのマンションの専有部分に加えて、土地代や共有部分にもお金を支払っています。そのため購入代金が専有部分の建物だけの価格、というわけではないのです。
マンションの建物評価額の算出方法
そこで、新築年と新築時の建物の価格がわからない中古物件の建物評価額の計算と同様に「新築費単価法」を使って計算します。
建物評価額=新築費単価×延べ床面積(専有面積)
例えば、新築費単価が15万円、専有面積が100平方メートルのマンションの建物評価額は、
15万円×100平方メートル=1,500万円
という計算式で求めることができ、建物評価額は1,500万円ということがわかります。
火災保険の建物評価額は保険金額にする
火災保険の建物評価額がわかることで、適正な保険金額を知ることができます。では、保険金額は建物評価額に対してどのくらいが適正なのでしょうか。
いざ火災に遭ってしまい、立て替える、または同等の建物を購入することになってしまったとき、保険料を建物の購入金額と同程度受け取ることができると、新しい住居に対する負担を少なく抑えることができるので安心ですね。そのことを考えると、保険金額は、新価を基準とした建物評価額と同額のもの(全部保険)に加入することが適切と考えられます。
保険金額が建物評価額に比べて少ない、または多いとどのようなことになるのでしょうか。そこで、以下の2つのパターンについて解説していきます。
- 建物評価額に比べて保険金額が少ない保険(一部保険)
- 建物評価額に比べて保険金額が多い保険(超過保険)
特に、期間が10年~35年と長期にわたる保険の中には、「時価」で設定されているものがあるため、注意が必要です。
保険金額が建物評価額より少ない一部保険
建物評価額に比べて保険金額が少ない場合、いわゆる一部保険の場合はどうなるのでしょうか。
受け取れる保険料
一部保険の場合、受け取れる保険料が損害額よりも少なくなる可能性があります。なぜなら、保険金額は支払われる保険料の上限になるためです。
例えば、評価額が3,000万円である建物の保険金額を、1,200万円に設定します。すると、保険料の上限は1,200万円になるので、火災によって2,000万円の損害があったとしても1,200万円までしか支払われません。差額の800万円は自分で負担をしなければならなくなるのです。
火事という精神的負担に、多額の金銭的負担まで加わるのは避けたいところですね。
古い保険に注意が必要
古い保険の中には「比例補填方式」という契約をしているものがあります。これは、評価額の80%に満たない設定にしていると、保険金額以下の損害であってもその割合分しか支払われないというものです。
例えば、割合を60%に設定した比例補填方式を採用した保険に加入しているとします。そして火事が起こり1,000万円の損害を受けてしまいます。すると、比例補填方式により設定された60%の600万円しか保障されないのです。
保険金額が建物評価額より多い超過保険
建物評価額に比べて保険料が多い場合、いわゆる超過保険の場合はどうでしょうか。
受け取れる保険料
一部保険とは違って、超過保険では保障が不十分ということはありません。ただ、火災保険では実際の損害額を超えて支払われることはないため、支払っている保険料に無駄が生じます。
例えば、評価額1,500万円の建物に2,000万円の保険金額を設定した場合、火災による損害額は最大でも1,500万円であるため、1,500万円以上は支払われることはありません。
支払う保険料は保険金額が大きくなればなるほど高額になるので、その差である500万円に対して無駄に保険料を支払っていることになります。
超過保険のデメリット
契約している火災保険が建物評価額以上の超過保険になっていると、受け取る保障に対して保険料を多く払いすぎていることになります。保障が不足することはないとはいえ、もったいないですね。
火災保険の保険料の目安はいくら?保険料を一括見積もりしよう
火災保険に加入して保険金額を設定したはいいものの、支払う保険料はいくらになるのでしょうか。家計のやりくりの点からも気になりますよね。
一社だけの見積もりで決めるより、数社まとめて一括見積もりはいかがでしょうか。保険料の目安もわかり、また保障内容など比べてみると違いも見えるので、一括見積もりで保険料の試算をすることはおすすめです。
また、古い保険に入っている方も一度見直しを考えられてみてはいかがでしょうか。見直しを考えられる際にも参考になるので、一括見積もりをおすすめします。
まとめ:火災保険の建物評価額は新価で計算しよう
火災保険の建物評価額について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。
今回の記事のポイントは
- 建物評価額には「新価」と「時価」がある
- 新築物件、中古物件、マンションの3つそれぞれの建物評価額の計算方法
- 保険金額は建物評価額と同額(全部保険)が適正な火災保険
- 保険料の目安を知るために一括見積もりがおすすめ
でした。
「時価」をもとに契約していると、十分な保障が受けられるとは言えません。そのことから建物評価額は「新価」で算定し、それをを元に設定した保険に加入することが重要と言えます。
また、地震保険は地震保険のみの加入はできません。火災保険と併せての契約しかできないうえ、地震を原因とする火災には火災保険の保障は受けられません。そして、日本はとても地震の多い国です。火災保険の加入を検討される際には、より一層の安心のためにも地震保険も併せて考えてみられてはいかがでしょうか。