帝王切開の費用は自然分娩より安い!? 保険の適用や費用内訳を解説

5人に1人の妊婦が該当する帝王切開、出産費用相場はいくらなのでしょうか。自然分娩より高いイメージの帝王切開ですが、健康保険適用となるため自然分娩よりも安い出産費用で済む場合があります。帝王切開を予定している方はもちろん、妊娠中の方は全員知っておきたい内容です。

監修者
株式会社Wizleap 代表取締役。東京大学経済学部で金融を学び、金融分野における情報の非対称性を解消すべく、マネーキャリアの編集活動を行う。ファイナンシャルプランナー証券外務員を取得。

帝王切開の出産費用・入院日数は?自然分娩とどう違う?


お腹に宿る大事な命、無事に生まれてくれることを祈る気持ちはみんな同じです。


出産は、普通分娩とも言われる自然分娩と、手術で子宮から直接赤ちゃんを取り出す帝王切開とに分かれます。


自然分娩では出産が難しい場合や多胎妊娠の場合に帝王切開を選択する事が多いですが、最近は出産全体の約20%、5人に1人が帝王切開だと言われています。


帝王切開を聞くと手術になるため、費用が余計にかかったり、負担が多くなるのではないかと心配される方も多いようです。


しかし、実は帝王切開の方が費用を安く抑えられる場合があるというのをご存じでしょうか。


そこで今回のこの記事では、帝王切開での出産費用について、
  • 出産費用に健康保険は使えるのか
  • どんな費用がかかるのか
  • 高額医療費の対象になるか
  • 出産でもらえるお金
  • 予定帝王切開と緊急帝王切開の違いと費用など
以上のことを中心に解説していきます。

この記事を読んでいただければ、妊婦さんなら誰でも経験する可能性がある帝王切開について知っていただくことができ、何かあったときも費用に関する不安を和らげることができるでしょう。

ぜひ、最後までご覧ください。

帝王切開の出産費用|内訳や相場・自然分娩の費用と比較

自然分娩はもちろん、帝王切開で手術などが必要になった場合の出産費用の相場をご存じですか。


それぞれに要する費用を比較すると、以下の通りです。

出産費用
自然分娩50万円
帝王切開60~70万円


自然分娩で大きな割合を占めるのが入院料分娩料で、これらを合わせると35万円程度です。


それにプラスして、新生児保管料検査処置費産科医療補償制度差額ベッド代などをまとめると15万円ほどで、すべてを合算すると50万円ほどです。


一方、帝王切開ではまず入院料が高くなります。


自然分娩の入院日数は6日~8日ほどですが、帝王切開になると母体の健康面を考えて、入院期間が10日~2週間と長引くことがほとんどで、入院費用も2倍近くかかります。


また、手術や薬剤費が追加で発生したり、体調面を考えて個室にしたりと、別途必要な費用も増えます。


自然分娩よりも10万円~20万円ほど高くなるのは、こういった理由があるからです。

自然分娩の出産費用より帝王切開の方が安い⁉その理由とは

帝王切開は健康保険や民間医療保険の適用対象となるため、出産費用が安くなる場合があります。

自然分娩は病気ではありませんので、病院には行きますが、かかる費用については基本的には全額自己負担です。


対して帝王切開は手術などを伴い、健康保険の対象にもなる病気の扱いとなります。


出産費用としては帝王切開の手術費用と出産にかかる入院費用産後ケアなどの費用が合算されます。


実は出産費用のうちの分娩費用だけを考えると、全額自己負担の自然分娩よりも3割負担で済む帝王切開の方が安いのですが、出産に伴う入院は自然分娩よりも長引くことが多いので、結果的には帝王切開の方が費用がかかることが多いです。


他方、帝王切開は病気の扱いですので、健康保険の対象となるだけでなく民間の医療保険の手術や入院の対象にもなります。


仮に1日1万円の入院手術に関する保険の加入していたとして、10日間の入院保険金10万円と帝王切開にかかる手術共済金20万円が補償されると、合計30万円の保険金がもらえる事になります。


出生一時金の42万円と合わせると72万円もらえる事になり、保険金の一切出ない自然分娩の場合よりも安くなる可能性もあるのです。


妊娠したときは、自分の医療保険がどのようなものだったかをしっかり確認するとよいでしょう。

帝王切開の出産費用に関する健康保険・社会保険適用について


帝王切開の出産は、実は病気とみなされます。手術も行うため、自然分娩と比較すると追加で発生しますが、健康保険などの社会保険を適用することができます。


そこで次は、帝王切開で適用できる社会保険の範囲や、医療費が一定額を超えると、それ以上にかかった費用を払い戻すことができる高額療養費制度について解説します。


適用できる範囲がわかっていれば、どの程度費用がかかるかの目安にできますし、払い戻しがあれば手術で高額な費用がかかっても安心できますね。

帝王切開は健康保険・社会保険適用の対象になる

自然分娩の時に出産費用として病院でかかる費用は全額自己負担であり、選んだ産院によって費用に差があります。


しかし、帝王切開になると病気と同じ扱いとなるため、帝王切開にかかる出産費用は全額ではなく通常の医療を受けたときと同じく3割負担になります。


20万円の費用がかかれば、病院の会計窓口で支払う金額は6万6千円程になるでしょう。


ここで注意したいのが、3割負担の健康保険が適用になるのは、帝王切開にかかる費用の分だけであり、出産のための基本的な検診や病院に支払う入院費、食事代などは適用にはなりません


そのため帝王切開で出産した時は、入院などの自然分娩と同じ費用に加えて、帝王切開のための手術や処置などに対する費用を3割負担の金額で支払います。


出産費用として病院に支払う金額のすべてが3割負担になる訳ではないので、そこは注意が必要です。


自然分娩で50万円かかるところで、帝王切開の分娩費用が20万円かかったら、窓口で支払う金額は70万ではなく56万6千円ほどになるというのが目安です。


出産に関する手当のもらい方次第ではさらに窓口で支払う金額を減らすことも可能です。

高額療養費制度が利用できる

帝王切開の場合は健康保険の対象ですので、出産費用の一部は高額療養費制度の適用対象となります。


高額療養費制度は、ひと月に支払う医療費のうち、自己負担限度額を超えた分について健保組合などから払い戻がされるもので、1つの医療機関で1回の支払額が21,000円以上の支払いについて適用となります。


自己負担限度額については、所得金額などで異なります


また、請求方法も健保組合や共済組合ごとに異なり、窓口で支払った医療費をもとに組合で還付の手続きをとってくれるところや、自分で請求しなくてはならないところなどさまざまですので、ご自分の健保組合に一度問い合わせてみるとよいでしょう。


帝王切開を予定している人は、事前に1か月の窓口負担金の限度を設ける「高額医療費の限度額適用認定証」を申請しておくこともできますので、こちらも問い合わせてみる事をお勧めします。


差額ベッド代や食費など、高額療養費の対象にならない出産費用もありますので注意が必要です。

出産前に限度額適用認定証を申請しよう!出産費用はいくら戻る?

高額療養費制度を利用すると、かかりすぎた費用が払い戻されるので安心ですが、一時的には多額の費用がかかるため、どうしても経済的な負担は発生します。


しかし、限度額適用認定証を持っていると、そんな心配はありません。これを提示することで、窓口での支払いを自己限度額に抑えられるのです。


自然分娩であれば高額療養費制度の適用はありませんが、妊娠や出産ではなにが起こるかわかりません。特に、急に帝王切開に切り替えなくてはいけないなどの状況になることもあるでしょう。


そのため、事前に認定証を申請しておくことで、費用負担を軽減できるのです。


自己限度額は所得や年齢によって変わりますが、たとえば8万円を超えると、それ以上の分については払い戻されるとします。


手術費や治療代に22~25万円ほどかかるのが相場なので、この制度を利用すると、


22万円ー8万円=14万円


は、事前に用意しなくても大丈夫ということになりますね。

出生一時金は自然分娩でも帝王切開でも金額は変わらない

出産費用は基本的に高額になりがちですが、今は健康保険から出生一時金というお金をもらう事ができます。貰える金額は42万円で、自然分娩でも帝王切開でも金額は変わりません。


この42万円は、出産後の退院の時に窓口で全額支払った後に受け取るか、窓口での支払いから直接42万円を補填して残りの金額を自己負担分として払う直接支払制度にするかを選択する事ができます。


もし50万円の出産費用がかかったときに直接支払制度を選んでいれば、窓口では差額の8万円を支払えばよいことになります。


国民健康保険でも、民間の健康保険組合でも出生一時金は貰う事ができますが、健保組合によっては他にもお祝い金などの手当が支給される場合があります。


健保組合ごとの独自の手当なので、こちらも直接ご自分の健保組合などに問い合わせてみましょう。


高額医療の出産費についてはこちらで解説していますので、ぜひ読んでみてください。

帝王切開の出産費用に関する民間医療保険について


医療保険では、女性特有の疾病として帝王切開を含んでいるものが多く、含まれていなくても特約で付けられる場合がほとんどです。


そのため、自然分娩とは異なり、帝王切開では入院給付金手術給付金が受け取れます。


たとえば、入院給付金日額が1万円、手術給付金が日額の10倍という保障なら、14日間の入院でもらえる保険金は以下の通りです。

  • 入院給付金=1万×14日=14万円
  • 手術給付金=1万×10倍=10万円

自然分娩よりも費用がかかる分、このように給付金が受け取れると、妊婦負担も少なくなるので、助かりますね。


しかし、出産に関わる場合、気をつけなくてはいけません。タイミングを間違えてしまうと、加入がムダになってしまうこともあるのです。


次は、保険の加入について注意すべき点を解説します。

帝王切開の出産費用を保障する医療保険について注意すべきこと

医療保険でも、手術や入院で給付金が受け取れます。特に、帝王切開になると入院期間も通常より長期になり、費用も必要になるので、給付金が受け取れると心強いですね。


しかし、加入に際して注意点があります。実は、帝王切開の費用を保障したければ、妊娠前に加入しておく必要があります。


妊娠中は、健康管理が難しく、体調の安全面のリスクも高まるため、加入を断られるか、加入できても、たいてい特定部位不担保とみなされます。


部位不担保とは、特定の入院や手術の費用を保障対象から外すことで、妊娠中は不担保期間となり、帝王切開や異常分娩でかかった費用は保障されません。


また、1人目の出産が帝王切開だと、2人目の妊娠までに加入しても同様で、1人目の出産から5年間は不担保期間と考えられます。


事前に加入しておけば、妊娠や出産の保障はもちろん、それ以外の場面でも保障を受けられるので、早めに加入しておくことをおすすめします。

予定帝王切開と緊急帝王切開にかかる金額の例

ここでは予定帝王切開緊急帝王切開にかかる金額の例をそれぞれ詳しく解説していきます。


予定帝王切開と緊急帝王切開がどのような場合に必要か詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください!


予定帝王切開と緊急帝王切開の違いについて具体的に知ることができます。

予定帝王切開にかかる金額の例

帝王切開にかかる出産費用は産院によって異なりますが、平均は自然分娩に6万くらいプラスした55万円程と言われます。具体的にかかる出産費用を見ていきましょう。

入院料

出産の前後には入院が伴います。産院によって相場は大きく異なりますが、差額ベッド代や食事代などを含んで2万円前後かかることが多いです。産前産後の状態によって入院日数が長くなる可能性があるため、出産費用の大きな部分を占めます。

帝王切開では10日前後の入院が多く、20万円位が目安となります。

分娩料

出産のときには助産師や産科医、看護師などの付き添ってもらう事になりますが、その時にかかるのが分娩料です。産院によって異なりますが、20万円前後が相場です。

帝王切開の時は健康保険が適用され、6~7万円ほどが目安です。

その他にも新生児管理保育料や、産科医療補償制度、おむつ代といったその他の費用がかかります。

緊急帝王切開にかかる金額の例

緊急帝王切開にかかる出産費用は、予定帝王切開の時とほとんど変わりません。


手術の扱いになるので、健康保険の適用となり、分娩費用は3割負担になります。


具体的には以下のようになります。

入院料

自然分娩でも緊急帝王切開の時でも入院一日当たりで部屋代がかかります。金額は産院によってさまざまですが、1日2万円位が目安となるでしょう。


但し、自然分娩より入院期間が長くなる可能性が高いことや、個室に入ったときは差額ベッド代がかかる事に注意します。

分娩料

産院によって異なりますが、相場は20万円程度です。緊急帝王切開になった場合は3割負担となるので、7万前後を見積もっておくとよいでしょう。

帝王切開の出産費用まとめ|保険適用なら自然分娩より安いことも


帝王切開になったときの出産費用や、保険適用の有無などについて説明してきましたが、いかがだったでしょうか。


この記事のポイントは、

  • 自然分娩よりも帝王切開の方が入院期間や出産費用などが掛かる傾向がある
  • 帝王切開での出産費用は高額になるように思われるが、健康保険適用の対象になり、高額医療費制度なども利用できる
  • 出生一時金は一律42万円だが、健保組合によっては他にも手当がもらえる事がある。医療保険に加入していれば、請求も可能
  • 予定帝王切開は事前に帝王切開が決まっているが、緊急帝王切開は自然分娩として始まったお産の途中で母子の安全を守るために帝王切開に切り替える事で、妊婦さんなら誰にでも起こり得る

でした。


出生一時金や健康保険、医療保険などをうまく使えば、高額なイメージのある帝王切開も自然分娩の出産費用とそれほど変わりません。


妊娠してからでも加入できる医療保険などもありますから、検討してみるのもよいですね。


ほけんROOMでは、他にも読んでおきたい保険に関する記事が多数掲載されていますので、是非ご覧ください。

関連記事

ランキング