役員退職慰労金とは!計算方法や注意するべき税金に関する知識を解説

役員退職慰労金とは会社の役員が退職する際に支払うお金です。役員退職慰労金の制度は会社の課税金額を抑えることには効果があるますが、きちんと理解しておかないと経営を圧迫することになってしまいます。今回は計算方法から注意点まで税金に関する知識を解説します。

内容をまとめると

  • 役員退職慰労金とは役員退職時に支払う報酬
  • 退職金は退職金給与制度に基づいて支給されるが、役員退職慰労金の規則はなく株主総会や定められた定款に順じて支払われる
  • メリット①:損金算入できる
  • メリット②:分離課税扱い
  • メリット③:社会保険料対象外
  • デメリット①:会社の財務を圧迫
  • デメリット②:株主総会がうまくいくかで社内の環境が変わる恐れも
  • 成果主義に時代がシフトしてきたため役員退職慰労金は廃止傾向
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監修者
株式会社Wizleap 代表取締役。東京大学経済学部で金融を学び、金融分野における情報の非対称性を解消すべく、マネーキャリアの編集活動を行う。ファイナンシャルプランナー証券外務員を取得。

役員退職慰労金をわかりやすく解説

社長や役員等の退職慰労金についての知識をきちんと習得していますか?


役員に退職慰労金を支払う際は、注意しなければならない点がいくつか存在します。退職慰労金の仕組みを理解しておかなければ思わぬ会社の損益につながることになりかねません。


そこで今回は役員退職慰労金について

  • 役員退職慰労金の概要
  • 退職金との違いとは?
  • 役員退職慰労金の計算方法は?
  • 役員退職慰労金の利点
  • 役員退職慰労金の欠点
  • 役員退職慰労金の相場
  • なぜ役員退職慰労金は廃止傾向なのか?

を中心に解説していきたいと思います。


この記事を読むことで役員退職慰労金の制度についての制度の内容からメリット、デメリットまですべてを理解できます。


ぜひ最後までご覧ください。

役員退職慰労金制度とは?

会社に貢献や功労した役員は退職時に多額の報酬を受けますよね、それが役員退職慰労金制度です。 


支払額が大きい役員退職慰労金は準備をするのも大変です。


しかし役員退職慰労金制度をしっかり把握しておくことで、社員のモチベーションにつながるだけではなく会社の納税額を抑えるのにも大いに活用できます。 


 役員退職慰労金制度は会社によって多少の違いがあります。この機会に会社の制度がどのように決められているのか確認してみましょう。

役員退職慰労金と退職金の違い


従業員への退職金と役員への退職慰労金の一番の違いは、退職金制度があるかどうかです


退職金は退職金給付制度に順じた扱いをしなければいけないのに対し、役員退職慰労金は規定を作成する必要がありません。特に金額の上限も決められていないのです。


ただし株主総会にて決議にして議事録に残す必要があります。オーナー会社で一人しか株主がいない場合でも株主総会を行い議事録を記さなければなりません。


退職慰労金は損金に算入できますが、議事録を作成しなければ法人の収益から差し引く経費として認められませんので必ず作成しましょう


さらに定款で役員退職慰労金の支給について定めておくと安心です。税務検査が入った時にも支給法に沿って支払ったものと証明できます。

役員退職慰労金の適正な計算方法

役員退職慰労金の計算方法は功績倍率法です。

役員の月額報酬(最終月)×勤続年数×功績倍率=適正な役員退職慰労金

で求めることが可能です。

功績倍率は
  • 代表取締役(社長):3.0 
  • 専務取締役:2.4
  • 常務取締役:2.2
  • 平取締役:1.8
  • 監査役:1.6
が過去に国に採用されたことから適用している会社が多いようです。

代表取締役・25年勤務・最終月額報酬110万を例に計算をすると

110×25×3=8250

となり役員退職慰労金は8,250万となります。

自由に設定できる功績倍率ですが、高すぎると不当な支給にあたり監査の目が厳しくなります。よって以上のような平均に沿う形をとっているのです。

また、退職前に月額報酬の変動があった場合は1年あたりの平均額を用いた以下の計算で算出することがあります。

類似法⼈の役員退職給与平均額(1年あたり)×役員勤続年数=役員退職慰労金


最終月に役員報酬を0とした場合、1年あたりの平均法でなければ割り出すことができないからです。

特殊な場合に「1年あたりの平均法」を使いますが、スタンダードなのは「功績倍率法」です。

役員退職慰労金のメリット


まず紹介するのは、役員退職慰労金を支払う利点についてです。


メリットは主に3つ

  1. 課税金額を抑える効果がある
  2. 退職所得の分離課税による優遇
  3. 社会保険料の範囲外のため負担が少ない

メリットを押さえておくと会社にとって大きな節税効果を生み出すことになります。

①課税金額を抑える効果がある|損金算入の否認に注意!

損金算入できる役員退職慰労金は節税効果があります


役員退職慰労金の金額は高額であることが多いため損金計上をすると、その年の利益を圧縮できます。利益を小さくすることは法人税のかかる部分を少なくするということなので節税になるのです。


退職金と役員退職慰労金の違いについてでも触れましたが、国税庁から不当な価格と認められると損益算入が否認され法人税がかかってしまします。


株主総会で決議をするのはもちろんのこと、対策として定款をつくりこの方法に基づいて支払額を決めたとわかるようにした方が安心でしょう。

②退職所得として分離課税で課税される

退所得税なので分離課税で他と合算されません。退職所得金額のみで計算できます。


退職所得金額は

(役員退職慰労金支給額-退職所得控除額)×1/2=退職所得金額 

の計算式で割り出されます。


通常給与の支払いには2分の1をかけることができません。しかし役員退職慰労金は2分の1をかけることができるため通常給与の半分の所得金額となります。


国税庁の所得税の税率を参考にしながら例を挙げますと、


  • 年間給与額:1000万
  • 役員退職慰労金:4000万

の場合


10,000,000×33%ー1,536,000=1,764,000

40,000,000×45%ー4,796,000=13,204,000


1,764,000+13,204,000=14,968,000の所得税となります。


所得を仮に合わせると


50,000,000×45%ー4,796,000=17,704,000


最終的には250万以上の差がでているため、分離課税で課税されることがいかに節税効果があるか分かります

③社会保険料の対象外

社会保険料を会社が負担しなくてよいのも役員退職慰労金を支払う上でのメリットです。


通常の給与であれば健康保険や厚生年金を始めとした社会保険料を会社が負担します。


しかし役員退職慰労金は社会保険料の対象ではありません


退職をした後に受け取るため厚生年金保険法や健康保険法の報酬・賞与条件にあてはまらないからです。


社会保険料の範囲外のため個人としても法人としても節税の恩恵を受けることができるのです。

役員退職慰労金のデメリット


役員退職慰労金を支払う際の欠点も知っておくことが大切です。


デメリットは主に2つ

  1. 財政状況の悪化
  2. 株主総会がスムーズにいかないと職場環境への影響も
です。

デメリットを理解しておかなければ、思わぬ落とし穴に落ちてしますことがありますので注意しておきましょう。

①財政状態の悪化の可能性

役員退職慰労金の支払金額は大きいものです。そのため会社のキャッシュを圧迫してしまいます


特に財政状況が厳しい会社にとっては経営悪化になりかねません。


退職慰労金制度を導入すると決めた場合には念入りなキャッシュフロー計画と資産形成が必要です。


役員や従業員の退職金準備に生命保険を活用して積立する方法を解説!の記事に保険による退職金の準備方法が解説されていますのでご参考にしてみてくださいね。

②株主総会で決議がうまくいかないと職場環境悪化の可能性

株主総会で役員報酬が円満に決まれば良いのですが、うまくいかない場合もあります。


決議が円滑に進まなかった場合職場環境が悪化することにあり、会社としては大きなデメリットになってしまうでしょう。


決議がうまくいかないということは、提示した報酬に関してだれかが否定したことになります。株主総会の議事録はしっかり残されるため今後の亀裂を生む可能性があるということです。


株式総会で円滑にすすむように根回しをしなければならない時もあります。そこにも手間がかかるためやはり欠点にもなりかねないということは頭に入れておくべきでしょう。

役員退職金の相場はいくら?

役員退職慰労金の相場が実際に気になる方もいらっしゃると思いますので一部を紹介します。


※カッコ内は年商


製造業

在任期間支給額
社長(5~10億)26年4,000万
常務(5~10億)11年2,232万
取締役(5~10億)12年1,500万


卸・小売業

在任期間支給額
社長(4億)29年4,425万
取締役(5~10億)9年520万
専務(5億未満)25年1,000万



建設業

在任期間支給額
社長(1億)25年4,300万
専務(5~10億)45年2,500万
取締役(5億未満)15年450万


サービス業

在任期間支給額
社長(5億未満)16年832万
専務(5~10億)29年4,200万
社長(2億)9年3,200万

従業員数月額報酬によって大きな違いがでますので参考までにご覧ください。

役員退職慰労金は廃止傾向の傾向


役員退職慰労金は現在廃止傾向にあります。


長年会社へ尽力した社員への報酬として続いてきましたが、世間は年功序列で給与を支払っていた時代から成果主義へ大きく移行しているからです。


一般従業員は成果主義に準じ体制が変わってきていますが、いまだに勤続年数を主としている役員退職慰労金は時代にそぐわなくなってきました。


勤続年数だけでは高額の退職慰労金を払う理由にはならなくなったのです。


すでに役員退職慰労金を廃止している上場会社もあり、業績での報酬支払いに変わっています。


これから役員退職慰労金制度を続けていくのか、廃止にするのか会社は選択をせまられるでしょう。

【参考】役員退職慰労金規程のひな形

ひな形を記載しておきますので、役員退職慰労金規程作成を検討している方は参考にしてください。

「役員退職慰労金・弔慰金規程」
  • 第1条:総則
  • 第2条:目的
  • 第3条:退任の定義
  • 第4条:適用の範囲
  • 第5条:退職慰労金の額の算定基準(功績倍率を定める)
  • 第6条:在任期間
  • 第7条:功績加算
  • 第8条:弔慰金
  • 第9条:支給時期
  • 第10条:亡くなった役員に対する死亡退職金等
  • 第11条:その他(規定にのってない事項の決定方法等)
  • 第12条:規程適用開始日
記載すべき条目は、以上の形式を参考に規程を定めることですべてをカバーできますよ。

規程作成後は取締役会で決議し承認を得た後で議事録を作成すれば正式に施行となりま


規程を作成していない中小企業もありますが、確実性を高めるため導入を検討してみるのも良いでしょう。

まとめ

役員退職慰労金について解説してきましたがいかがでしたでしょうか。


今回のポイントは

  • 役員退職慰労金とは役員退職時に支払う報酬
  • 退職金は退職金給与制度に基づいて支給されるが、役員退職慰労金の規則はなく株主総会や定められた定款に順じて支払われる
  • 最終月額報酬×勤続年数×功績倍率=役員退職慰労金
  • メリット①:損金算入できる
  • メリット②:分離課税扱い
  • メリット③:社会保険料対象外
  • デメリット①:会社の経営を圧迫
  • デメリット②:株主総会がうまくいくかで社内の環境が変わる恐れも
  • 成果主義に時代がシフトしてきたため役員退職慰労金は廃止傾向
でした。

役員退職慰労金の制度をきちんと理解し、会社のメリットにしましょう。

役員退職慰労金に関する悩みはマネーキャリアへご相談ください。マネーキャリアでは法人の方も無料で相談可能なため、この機会に利用してみてはいかがでしょうか。

ほけんROOMでは、法人保険に関する記事が他にも数多くありますので興味のある方は合わせてご覧ください。 

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