分娩費用は医療保険がおりる?異常分娩では保険金がおりるが自然分娩はおりない?

妊娠中はもちろん、入院費用を含む分娩費用は大きな出費ですよね。今回、分娩費用で医療保険がおりるか、帝王切開や鉗子分娩などの異常分娩ではない自然分娩(正常分娩)でも医療保険金がおりるか解説します。また、分娩費用が健康保険適用になるのかも解説します。

監修者
株式会社Wizleap 代表取締役。東京大学経済学部で金融を学び、金融分野における情報の非対称性を解消すべく、マネーキャリアの編集活動を行う。ファイナンシャルプランナー証券外務員を取得。

分娩費用は医療保険の保険金がある?健康保険適用についても解説


人生において大きな意味を持ち、おめでたいイベントの一つが「出産」ではないでしょうか?

しかし、出産には多くのお金がかかるのも事実です。

「自分の入っている医療保険から給付金は出ないのかしら?」「出るとしたらどんなケース?」といった疑問を持っている方もいらっしゃるのではないでしょうか?

この記事では
  • 自然分娩と異常分娩における出産費用の相場
  • 医療保険が適応される出産はどんな場合?
  • 公的制度で申請できる出産時の手当の種類
  • 妊娠前の医療保険の加入と、出産後の保険の見直し
について解説していきます。

この記事を読んでいただければ、出産において医療保険から給付金が支払われるケースや、公的制度による出産手当などがご理解いただけるはずです。

ぜひ最後までお付き合いください。

分娩費用はどれくらいかかる?

ひとくくりに出産費用といっても、さまざまな種類に分かれています。入院代や分娩費用はもちろん、差額ベッド代やちょっとした治療費など、いくつも費用がかかっているのです。


そんな出産にまつわる費用ですが、自然分娩と異常分娩では、かかる費用の内容が異なっているのをご存じですか。また、かかる病院によっても費用のかかり方が違っています。


また、分娩の違いによって、保険が適用できる場合もあります。


ここでは、分娩の違いで生じる費用の合算や内訳について解説します。

自然分娩(正常分娩)の場合

公益社団法人国民健康保険中央会の発表によると、平成28年度の妊婦が負担する費用の平均は、505,759円でした。


また、総合病院、診療所(個人病院)、助産所の入院費と分娩費用を表にまとめました。

総合病院診療所助産所
入院費145,741円84,086円84,246円
分娩費用231,318円274,317円259,589円

総合病院、診療所(個人病院)、助産所で分類してみていくと、入院費は総合病院が最も高くて 145,741円で、診療所と助産所はそれぞれ84,086円、84,246円と、6万円以上の差が出ています。


一方で、分娩料は診療所や助産所がそれぞれ274,317円259,589円に対して、総合病院では231,318円と低くなっており、合算すると総合病院での費用の方が若干高めです。


出産に利用されているのは総合病院と診療所が大半で、助産所は減少しています。


また、入院日数は5~7日程度です。


参考:公益社団法人 国民健康保険中央会出産費用(平成28年度)

異常分娩(帝王切開)の場合

帝王切開は、出産時、母子にトラブルがあったときに行われる治療行為です。


帝王切開なら手術費に22~24万円ほどかかりますが、医療行為になるため、健康保険が適用され、自己負担額は3割で済みます。


また、投薬なども保険がきくので、分娩費用だけを見ると、自然分娩よりも安い場合が多いようです。


さらに、帝王切開や前もっての入院などで費用が高くなる場合、高額療養費制度も利用できます。前もって協会けんぽに申請しておくと、費用面で不安がありません。


帝王切開のほうが、保険でカバーされる部分が大きいですが、母体への負担は大きくなり、入院日数も2週間前後と長引くため、入院費の高い病院になると、自然分娩とそれほど変わらなくなるでしょう。

正常分娩では民間の医療保険がおりない上に、健康保険適用外

医療保険への加入目的は、「入院・手術があった場合に給付金が受け取れる」というところではないでしょうか?


「出産」の場合でも、一般的には数日間の入院がともないます。


そうすると、入院があるわけですから、請求すれば給付金を受取れるのではないかと考えるのも無理はありません。


しかし、出産において入院費が給付されるのは、正常分娩以外の異常分娩と呼ばれるケースとされています。


つまり、正常分娩では医療保険は適用されないということになります。


その理由は、それが病気やケガではないとみなされているためです。

医療保険がおりる異常分娩とは?入院費も保障される?


異常分娩に該当する場合は、医療保険から入院・手術給付金が支払われることがあります。

異常分娩とされるのは、帝王切開、吸引分娩、早期破水、切迫早産等で、それらを理由とする入院の場合、医療保険の給付対象となります。


その際1つの目安となるのが、退院時に病院から受け取る領収書や診療明細書です。


領収書や診療明細書の「入院料等」「手術」の項目に記載があれば医療保険の請求対象である可能性が高いといえます。


また、出産時だけではなく、妊娠初期のつわりや子宮外妊娠、妊娠中毒症などによる入院も、給付の対象となります。


保険会社によって請求できる範囲は違いますので、その対象かどうかは各保険会社に問い合わせてみることをおすすめします。

帝王切開の時の医療保険による保障

出産における手術で最も確率が高いのが帝王切開といわれる手術です。

厚生労働省発表の「医療施設調査(平成26年)」によると、すべての出産件数のうち帝王切開となった人は約24.8%となっています。

つまり、約4人に1人は帝王切開で出産していることになります。

帝王切開とは、自然出産では母子の健康状態にリスクをともなうと考えられる場合に、妊婦の腹壁や子宮口を切り開いて胎児を取り出す手術になります。

分娩方法が帝王切開ということであれば、手術をともなう異常分娩ということになり、一般的に入院給付金・手術給付金等の給付が受けられるということになります。

子宮外妊娠手術の時の医療保険による保障

子宮外妊娠とは、正常な妊娠が期待できる子宮の範囲以外のところに妊娠が認められた場合をいいます。

子宮外妊娠の場合、妊娠の継続はむずかしく、自然に流産したり、組織に吸収されることがあり、慎重な経過観察が必要といわれています。

また、ある程度妊娠が継続した場合には、手術が必要となるケースもあります。


特に卵管が破裂してしまった場合、出血多量で母体の命に関わることもあり、緊急搬送されて手術になるという場合もあります。


以上のことから、子宮外妊娠は医療保険における、入院・手術(手術があった場合)の給付対象となります

分娩費用と分娩介助料について

出産時にかかる費用として耳にするのが「分娩費」「分娩介助料」という言葉です。

この「分娩費」と「分娩介助料」の違いを理解している人はほとんどいないといってもよいでしょう。

産婦人科医の協会から発行される「日産婦医会報」によると、「分娩費(料)」とは、正常分娩における医師の技術料+分娩時の看護料を総称したものとされています。

これについては、時間外診療による加算も含まれるとされています。

分娩費については各医療機関が独自にその額を決定してよいとされており、出産した病院によって、金額が違ってくるのもそのためです。

「分娩介助料」は、異常分娩における処置や手術が行われた際、入院・手術が健康保険制度の対象となった場合の助産師による介助、その他の費用(自費)を請求する上での用語とされています。

この分娩介助料については、助産の手当に対する自費料金のことで、その金額設定は各医療機関が独自にきめていいとされていて、出産した医療機関によって違いが出るようです。

つまり、その出産が正常分娩で健康保険の適応にならない場合が「分娩費」、異常分娩で手術等があり、健康保険の適応となった場合の自費部分が「分娩介助費」と考えてよいでしょう。

公的医療制度による出産費用の補助

出産については、正常分娩であった場合は入院等にかかる費用は全て自費ですし、異常分娩であったとしても、保険制度の対象にならない部分については自費になります。

つまり、出産には多くの費用がかかり、その大半は自費ということです。

ですので、費用がかかりすぎることにより、出産をためらう人がいてもおかしくはありません。

そういった事情を考え、国は出産にかかる費用の一部を手当金として受け取ることができる公的制度を準備してくれています。

それが「出産育児一時金」「出産手当」といわれるものです。


ここからは、それぞれの制度について具体的に説明していきます。

出産育児一時金

出産育児一時金とは、妊娠4か月(85日)以上で出産をするすべての健康保険加入者が受け取ることのできるお金のことです。

出産育児金の支給額は、生まれてくるこどもひとりにつき42万円です(平成30年現在)。


ただし、出産する医療機関が産科医療保障制度に加入していない場合や、妊娠22週目未満で出産した場合は40万4千円になります(双子以上の場合は、そのこどもの分だけ支給されます)。


出産育児一時金の支給方法は「直接支払制度」「受取代理制度」の2つに分けることが出来ます。


直接支払制度は、医療機関などが出産育児金の請求と受取りを、妊婦さんに代わって行う制度のことです。


妊婦さんは事前に「直接支払制度」の合意書に記入し、出産時に健康保険証を医療機関に提出するだけの簡単な手続きです。


受取代理制度は、妊婦さんが健康保険組合から出産育児給付金の申請書をもらい、医療機関に記入してもらう必要があります。


記入済みの申請書は妊婦さんが健康保険組合に提出する必要があるなど、直接支払制度よりも少し手間のかかる制度といえます。


手続きの方法に違いはありますが、退院時に支払う金額に違いはなく、出産費用から出産育児一時金を引いた金額を医療機関の窓口で支払います。


出産費用が出産育児一時金だけでは足りない場合は、その差額を窓口で支払うことになります。


高額医療の出産費についてはこちらで解説していますので、ぜひ読んでみてください。

出産手当

出産手当とは、出産のために会社を休んだ場合、給与のかわりに健康保険から支給されるお金のことです。


産休のために収入が大幅に減ってしまう可能性のある家庭にとっては非常にありがたい制度であるといえます。


対象者は、出産日以前42日(双子以上の多胎である場合は出産日以前98日)から出産の翌日以後56日までの範囲に会社を休んだ健康保険加入者です。


出産手当の支給金額は、1日につき既定の日額給与の2/3とされています。


たとえば標準報酬月額が250,000円の場合だと、標準報酬日額が8,333円(1円未満切り捨て)となり、1日の支給金額は5,550円(10円未満切り捨て)となります。


出産手当の支給を受けるためには、産休に入る前に申請書をもらっておく必要があります。


申請書には自分で記入する箇所のほか、医師や助産師が記入する箇所、会社側が記入する箇所があるため、漏れのないように注意が必要です。


申請書の提出先が会社である場合は、出産後に書類を郵送などで提出すれば会社側で手続きを行ってくれます。


自分で社会保険事務所へ行って手続きをしなければならない場合もありますので、早めに会社に手続き方法を確認しておきましょう。

傷病手当金

傷病手当金は、業務外のケガや病気で仕事に行けないときに、健康保険から受け取れる給付金のひとつです。


3日間連続して休業し、4日目以降も続けて休業するときに申請することができます。


通常は、妊娠や出産は病気ではないので、傷病手当金は申請できませんが、切迫早産や妊娠悪阻などで仕事に行けないときは請求できます。


しかし、出産手当金との併用はできません。出産手当金を受給している場合はそちらが優先されます。


ただし、出産手当金と傷病手当金の報酬日額を比較して、傷病手当金の方が高いと、その差額分が受け取れます。


報酬日額など不明な点があれば、協会けんぽに確認して見るといいでしょう。

高額療養費制度

高額療養費制度は、1か月にかかった治療費が自己負担額を超えると、それ以上にかかった費用を払い戻してもらえる制度です。


70歳未満で、保険料が3割負担であれば、世帯収入にもよりますが、自己負担額はおよそ8~9万円ほどです。


仮に、出産費用に20万円かかった場合、11~12万円が戻ってくる計算になります。


ただし、出産は病気ではないので、自然分娩では利用できません。帝王切開や切迫早産などの治療行為として認められる出産のときに申請することができます。


保険外負担分(差額ベッド代など)や、入院時の食事代などは対象外です。

医療費控除

医療費控除は、年間で使った医療費の合計金額から、手当金、高額療養費の利用額などを引いた金額が10万円を超えると、所得控除が使える制度です。

 

つまり、実際の負担額が10万円を超えると、年収に応じて還付金が受け取れるのです。上限も200万円となっているので、控除額はかなり大きいですね。


また、被保険者だけでなく、家族が使った分も合算できます。


妊娠してからの検査や通院費用、助産師の分娩にかかる費用、治療のためのマッサージ費用、購入した日薬品など、医療費として認められる部分が幅広くなっています。


確定申告で申告することで控除されるので、領収書などをきっちり保管しておきましょう。


ただし、年間の収入が200万円より低いときは、「収入の5%」を超過した分が対象になります。

医療保険に加入するなら絶対に妊娠前がおすすめ


妊娠すると、出産やいざというときに備えて、医療保険への加入を考える方も多いです。


しかし、妊娠後の保険の加入はできないケースが多く、加入できたしても出産に対する保障がないことをご存じでしょうか。


特に、自然分娩に対する保障は、保険適応外になることが大半です。


ここでは、妊娠中の保険の加入が難しい理由と、医療保険への加入は妊娠前に済ませておくメリットについて解説します。


これを読んでもらえれば、医療保険は妊娠前の早めの加入がオススメである理由がわかっていただけるでしょう。

帝王切開後は医療保険に加入できないことが多い

帝王切開後は、医療保険に加入できないことが多いです。また、加入するとなっても、たいてい一定の条件下でしか加入できません。


帝王切開を経験すると、産後の一定期間は、子宮に関する病気のリスクが高まるため、子宮に関わる保障は期待できません。


また、妊娠中の加入には告知が必要になり、特定部位不担保特定疾病不担保という、一定期間、特定の部位や疾病については保障対象外になる条件付きの加入になることが多くあります。


子宮などはこの部位に対応するため、妊娠後に加入した保険で、実際の出産費用をまかなうのは困難です。


ただし、妊娠前から入っている医療保険ではそんなことはありません。帝王切開は治療行為にあたるため、保険金が受け取れます。


医療保険への加入は、妊娠前に済ませておくことをおすすめします。

医療保険に加入した場合の分娩費用シミュレーション

帝王切開などの異常分娩になったら、出産費用は保険でも対応できるのでしょうか。妊娠前から、医療保険に加入していたとして、シミュレーションしてみましょう。

30歳の女性で、ある保険商品Aに加入していた場合で見てみましょう。

帝王切開の手術を行い、2週間入院したとすると、受け取れる保険金は以下の通りです。
種類金額
入院給付金5,000円×14日=70,000円
手術給付金50,000円
合計120,000円
また、社会保険からの給付金として、出産育児一時金が42万円受け取れます。

さらに、帝王切開の手術や入院にかかる費用を30万円とすると、自己負担額は3割負担になるので、30万円×0.3=9万円となります。

出産育児一時金で十分まかなうことができますが、医療保険からの12万円があれば、保険がきかない部分での費用にも対応することができますね。

このように、医療保険で事前にそなえておくと、異常分娩でも安心です。

出産後は保険の見直しがおすすめ!

子どもが生まれると、これまでの生活スタイルが大きく変わります。夫婦のことだけでなく、子どもの生活や人生プランも同時に考えなくてはいけません。


これまで以上に、いろいろな場面で費用がかかってくることも想定されます。


そのため、出産後は新しく保険に加入したり、これまでの保険の見直しが必要です。


特に、子供の将来に備えて学資保険に加入したり、母親であるあなたになにかあったときのために生命保険の補償内容や特約を見直したりと、保険料と補償内容を考えたほうがいいですね。


しかし、どういう保険がいいのかや、どのように見直せばいいのかわからない場合もあると思います。


マネーキャリア相談では、経験豊富なファイナンシャルプランナーが多く在籍しているので、一度ご相談ください。


あなたと子どものライフプランに沿った、適切な保険をご案内いたします。

まとめ:自然分娩では医療保険金はおりない上に健康保険適用外



ここまで、「出産において、医療保険がつかえるケース」や「公的医療制度による出産時の手当」などについて解説してきましたが、いかがでしたか?


この記事のポイントは、

  • 正常分娩であれば、医療保険の給付はうけられない
  • 医療保険からの支払対象となる具体的なケース
  • 分娩費用と分娩介助料、その意味と違い
  • 出産時には、公的制度からお金を受取ることができる

でした。


出産は、人生において大きな意味を持つ、おめでたいイベントの一つですが、そこには多くの費用がかかってくることも事実です。


その費用については、正常分娩であれば公的制度から出産に対する費用の一部がうけとれます。


さらに、異常分娩であれば、加入している医療保険から給付金が支払われる場合もあります。


出産におけるお金の心配を解消し、安心して出産というおめでたいイベントに望みたいものですね。


ほけんROOMでは、他にも読んでおきたい保険に関する記事が多数掲載されていますので、ぜひご覧ください。

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