
更新日:2022/04/18
【獣医師執筆】犬や猫の歯周病はペット保険の補償対象?|原因や治療費も紹介

大人の犬の多くがかかると言われている歯周病。歯周病は悪化してしまうと重い病気に繋がってしまう病気で、ペット保険に入っていないと治療費も高額になります。そこでこの記事では、歯周病が補償の対象になっているペット保険の紹介や、歯周病の治療費や予防法などを解説します。
内容をまとめると
- 歯周病が補償対象になるペット保険は多い
- 歯周病は完治しないため、予防と治療が大切な病気
- 歯周病の治療は非常に高額なのでペット保険に加入することが重要
犬や猫の歯周病はペット保険の補償対象になる?
こんにちは。MOFFME編集部で、動物病院に7年務めている獣医師の田中です。
年を取るにつれて、可愛い愛犬の口の臭いが気になってきたなんてことありませんか?
口臭の原因の多くは歯周病によるものです。
今回の記事では犬・猫の歯周病について獣医師目線から語らせていただきます。
歯周病は犬猫で非常に多い病気です。ある統計では「3歳齢以上の犬猫の80%は歯周病である」というデータもあるほどです。
実際に私も日常診療において、重症度の差はあれど中高齢の犬猫の歯周病罹患率はかなり多いと感じています。
ワクチン接種前での身体チェックでは口の中もみていますが、歯垢・歯石が全くない子の方が珍しいです。
そんな身近な病気の歯周病はペット保険の補償対象になるのでしょうか?
お答えとしては、多くの保険会社で補償対象になります。
それでは歯周病に対しての保険~治療まで色々と説明していきます。今回のポイントを以下にまとめました。
- 歯周病が補償されるペット保険会社
- そもそも歯周病ってなに?
- 犬猫の歯周病に対しての治療・予防
- ペット保険は歯周病に対しての備えになるか
犬や猫の歯周病が補償対象になっているペット保険会社はどこ?
先ほど歯周病が補償対象かどうかはペット保険によって異なることをお伝えしましたが、多くのペット保険で補償対象とされています。
しかし一部例外もあるため、加入する前に確認することが重要です。
また、補償内容も各社で変わってきますので、内容をしっかりと確認する必要があります。
名前を出すことはできませんが、歯周病を補償対象にしているペット保険会社は、
- Ai社
- P●社
- Ra社
- An社
- Fp社
- Pf社
の6社です。
以下で、補償内容の一例を紹介します。
歯周病を補償してくれる保険会社について詳しく知りたい方は、以下のボタンからLINEで聞くことができます。気になる方はぜひ活用してください。
注意:歯石除去はペット保険の補償対象にならないことがある?
歯周病の治療の際には同時に歯石除去が行われる場合が多いです。
ここで重要なことは、ペット保険では病気になってからの治療は補償対象となりますが、予防としての治療は補償対象にはならないということです。
例えば、もし歯周病にかかり、その治療として歯石除去を行った場合は、歯石除去は治療と認められ補償対象になる可能性が高いです。
しかし、歯周病を予防するために歯石除去を行った場合、それは病気の予防にあたるため補償対象にはなりません。
ペット保険はあくまで、手術費用などの病気の治療費を補償してくれるものだと覚えておきましょう。
補足:歯周病にかかっている犬や猫はペット保険に加入できる?
これについては保険会社によるとしかいえません。
けれども、冒頭でお伝えした通り歯周病は若齢の子を除き、ほとんどの犬猫が患っている病気です。
「歯周病にかかっているからペット保険自体に加入できない」という保険会社は少ないと思います。
ただ、入る段階で歯周病と診断されているのであれば歯周病に対しての診療費は保険適応にはならない場合がほとんどでしょう。

犬や猫もかかる!歯周病はどんな病気か
歯周病とは「歯の周囲組織が破壊される病態で、歯周病菌による細菌感染症」と定義されています。
人間は虫歯が多いですが、犬猫は虫歯にはなりにくく・歯周病になりやすいです。
これは唾液のpHの違いからくるもので、人は中性~やや酸性気味・犬猫はアルカリ性の唾液をもちます。
虫歯の原因であるミュータンス菌は酸性の環境を・歯周病菌はアルカリ性の環境を好むことから、犬猫は歯周病にかかりやすいのです。
この項目では
- 歯周病の原因
- 歯周病の症状
- 歯周病の治療費
- 歯周病か確かめる方法
- 予防方法
について詳しく解説します。
犬や猫の歯周病の原因は?
では歯周病になっていく過程を説明していきます。
まず、食物・細菌・水分などによって歯垢が形成されてやがて歯石になります。
ちなみに歯垢が歯石に変わる時間は、人だと1カ月かかりますが、犬は3日しかかかりません。これも唾液がアルカリ性の為、石灰化が起こりやすい環境になっているからです。
この歯石の形成により口腔内の細菌バランスが変化し、他の細菌より歯周病菌の方が増えてしまうと、歯周病菌により歯の周りの組織が破壊され歯周病という状態になるのです。
犬や猫の歯周病の症状は?歯が抜けるだけでなく穴があくことも?
歯周病の症状は軽度~重度まで様々です。
放っておくと歯肉炎や歯槽膿漏などの病気を引き起こすこともあります。また、命に関わるような重篤な状態になることもあるので、たかが歯の病気とあなどらないことが大切です。
【口臭】
これが飼い主さんも気づきやすく、最も身近な歯周病の症状でしょう。
進行した犬の口の臭いはザリガニに似た香りになります。
重度の歯周病では同じ空間にいるのが辛くなるほどキツイ臭いになることもあり、飼い主さんのQOL(生活の質)が落ちることもあります。
【歯の脱落】
歯を支える組織がもろくなり、歯が抜けます。特に前歯が多いです。
【下顎の骨折】
小型犬に多いです。
下顎の骨は上顎より細い構造をしている為、歯周病により骨組織まで破壊されると簡単に骨折することがあるのです。
【根尖周囲膿瘍】
難しい言葉ですが、簡単に言うと歯の根っこが感染を起こし、顔が腫れる・顔に穴が開きます。
よく「目の下が急に腫れた」「顔に穴が開いた」と駆け込んでくる患者さんがいますが、多くはこの症状によるものです。
【心内膜炎・敗血症】
歯周病にかかると、歯肉を通じて歯周病菌や細菌が産生する毒素・炎症物質が全身に運ばれてしまうことがあります。
その結果、心内膜炎や敗血症が引き起こされ命を落としてしまう可能性があるのです。
動物の歯科専門医の中には、抗がん剤を行う動物は、事前に歯石除去を行い歯をキレイにしておいた方がいいという意見をもつ人もいます。
これは、抗がん剤の副作用で免疫力が低下することで、歯周病菌による敗血症にかかりやすくなると考えられているからです。
犬や猫の歯周病の治療費・手術費用はどのくらいなのか?
犬や猫が歯周病かどうかを確かめるにはどうしたら良い?
犬猫の歯周病が疑われるのは以下の症状です
- 口が臭い
- 口をクチャクチャさせる
- 歯肉が赤く腫れている・簡単に出血する
- 歯がグラついている
- 歯石・歯垢がついている
- 固いものを食べなくなった
- 口を掻く・痛がる
- 食欲がおちる
自宅でできる犬や猫の歯周病予防・対策|歯磨きでケアしよう
歯周病の対策・予防法は何といっても歯みがきです。
歯みがき頻度は1日1回が望ましいですが、難しい場合は3日に1回は行うといいでしょう。
歯ブラシを使って磨くのが一番いいのですが、大人しく使わせてくれる子の方が少ないかと思います。
その場合は無理せず、指に濡らしたガーゼを巻き付けて歯ブラシ代わりに磨いてあげるのでも大丈夫です。
それでは歯みがきの方法です。
- まずは口を触らせることに慣らせる
- 慣れてきたら歯ブラシを、無理なら指ガーゼなどで歯みがき
- 終わったら褒める
【口を触らせることに慣れさせる】
まずは小さい頃から、飼い主さんが撫でる延長線上で口回りを触ってあげましょう。口を触らせてくれなければ歯みがきはおろか口の中すら見せてくれません。
このステップを疎かにして無理やり歯を磨こうとすると、診察でも口を見せてくれない子になってしまい、口腔内が鎮静・麻酔をかけないと確認できない状態になることもあるので気を付けましょう。
【道具を使って歯みがき】
歯ブラシを使う場合は、必ず動物用を選びましょう。
人用のものはサイズ・硬さが合わず歯肉を傷つけてしまうことがあります。
歯の1本1本を丁寧に磨いていきましょう。力加減は優しく、ソフトに。
特に奥歯は磨きにくいですが、最も歯石がつきやすい場所です。頬を後ろにめくって奥歯を露出させて磨きましょう。
【最後は褒めまくる】
歯みがきをするといいことがあると覚えさせることで、毎日のブラッシングがやりやすくなります。
上手に我慢出来たら思いっきり褒めてあげましょう。
歯石は歯磨きでは落とせません。
歯磨きの際に歯石を発見したら動物病院に連れていきましょう。
なお、このときの歯石除去は「歯周病の予防」にあたるため、ペット保険の補償対象にはならないことに注意が必要です。
他にもペットがかかる歯・口腔の病気はある?
歯周病以外にも犬や猫がかかりやすい歯・口腔の病気として、次のようなものがあります。
- 歯根膿瘍
- エナメル質の形成不全
- エプリス
歯根膿瘍とは、歯の根元(歯根)部分に膿が溜まってしまう病気のことです。これは歯周病が進行して起こります。
特に犬の歯は根元に向かって深く伸びているため、膿が溜まるだけではなく歯の付近の骨に穴が開いてしまうこともあるのです。このような病気にならないためにも歯周病の予防は必須です。
エナメル質の形成不全は、歯の表面のエナメル質の形成が阻害されてしまい十分に発達できなかった状態のことを指します。歯が茶色くなっていたり、ザラザラした表面になっていたらこの疾患を疑いましょう。
遺伝でなることも多いため、明確な予防方法はありません。なりやすい時期からしっかりとホームケアをしておくことも大切です。
エプリスは口腔内に見られる腫瘍のひとつです。歯肉の良性腫瘍ですが、顎の骨まで広がってしまうこともあるため、早期の発見が必要です。
唾液に血が混じっていたり、食べにくそうにしていたりしたら一度病院に行くことをおすすめします。
補足:ペットの歯磨きに関する疑問
ペットが歯磨きを嫌がるがどうすればいい?
歯磨きを嫌がる場合には、原因として、
- 歯磨きにストレスを感じている
- 傷や歯の疾患がある
ことが考えられます。
歯磨きがストレスとなっている場合は、歯ブラシのにおいを嗅がせたり舐めさせたりして、徐々に歯ブラシに慣れさせていきましょう。
歯磨きをするたびに褒めてあげることや、ご褒美をあげることで、歯磨きが楽しいものだという認識を持たせることも大切です。
口の中に傷があったり虫歯などが痛んでいることが考えられる場合は、動物病院で診てもらうことをおすすめします。
痛がっているところを無理に磨いていては、いよいよ歯磨きをさせてくれない子になりかねません。 歯磨きに嫌な印象を持たせないように、徐々に慣らしていきましょう。
いつ歯磨きの練習を始めたらいい?
犬や猫の歯周病に備えるためのペット保険は必要か
歯周病は中高齢になるとほとんどの犬や猫がなる病気です。
特に犬は歯石がつきやすいので一生のうちに3回ぐらい歯石除去を行う子もいます。
そんな身近な病気の歯周病に対する治療費は決して安いものではないので、歯周病に備えて早くからペット保険に入ることは必要だと思われます。
将来起こりえる可能性が高い病気に対して、若い頃から保険をかけておくことは大事です。
口が臭うなどの症状に気づいてから保険に入ろうとしても、歯周病に対しては保険適用外となるペット保険会社がほとんどでしょう。

まとめ:犬や猫の歯周病は一部のペット保険の対象になる
歯周病についてご理解いただけたでしょうか?この記事のポイントは
- 歯周病に対しては多くのペット保険会社が補償対象
- ほとんどの犬猫は将来的に歯周病になる
- 重度になると顎の骨が折れたり、顔に穴が開くことも
- 予防は歯みがきが一番。だけど無理やりはしない
となります。
歯周病予防をしっかり行い、飼い主・犬猫ともに健康な日々を送れるようにしましょう!
MOFFMEでは、他にも読んでおきたい保険に関する記事が多数掲載されていますので、ぜひご覧ください。
