高専の学費はいくら?私立と公立の授業料と比較しながら徹底比較!

5年間教育の高等専門学校。長い分学費は高くなりますが、実際どのくらいかかるのか気になりますよね。今回は高専の授業料や寮などの費用を、公立や私立と比較しながら詳しく解説します。また学費が高くて払えないと心配な方に向けて、奨学金制度についてもご紹介します。

監修者
株式会社Wizleap 代表取締役。東京大学経済学部で金融を学び、金融分野における情報の非対称性を解消すべく、マネーキャリアの編集活動を行う。ファイナンシャルプランナー証券外務員を取得。

高専の学費はいくら?

内容をまとめると

  1. 高専の学費は単年度での比較の場合、約20万円/年ほど公立高校よりも高い 
  2. 高専と「公立高校+専門学校の計5年」で比較すると高専の方が学費は安い 
  3. 入学料や授業料が免除になる制度や給付型の奨学金制度がある

高専とは「高等専門学校」の略称で、中学校卒業が入学資格になります。高専の特徴は大きく2つあります。

  1. 5年間一貫教育
  2. 専門技術者の養成が目的

中学校を卒業したら高校への進学をイメージする方が多いかもしれませんが、高専には上記の通り、高等学校(高校)とは異なる特徴があります。


国立高専の学費の相場は5年間で約126万円です。学費は文部科学省の省令で定められています。(入学検定料は除く)


公立高校の3年間の学費の平均が約45万円、私立高校でも約100万円と考えると少し高い印象もありますが、5年間通うことや、特殊な施設・設備が用意されていることを考えると、価格差に納得する方もいらっしゃると思います。


この記事では、

  1. 高専の学費の内訳や学費以外に必要な費用の解説
  2. 公立高校との学費の比較
  3. 無償化・学費減免制度の詳細

について解説します。


高専と公立高校の費用を知りたい方や、学費減免制度の適用を考えている方にとって参考になる情報をお伝えしますので、ぜひ最後までご覧ください。


全国の高専の一覧

高専は国公私立合わせて57校あり、その内訳は国立51校、公立3校、私立3校です。

まず全国にある高専を以下の通り地区別にまとめましたので、ご覧ください。


全国の高等専門学校一覧 ※工業高等専門学校を「高専」と略称で記載

  • 北海道地方
    函館高専、苫小牧高専、釧路高専、旭川高専
  • 東北地方
    八戸高専、一関高専、仙台高専、秋田高専、鶴岡高専、福島高専
  • 関東地方
  • 茨城高専、 小山高専、群馬高専、木更津高専、東京高専、 東京都立産業技術高専(東京都立)、サレジオ高専(私立) 
  • 中部地方
    長岡高専、富山高専、石川高専、国際高専(私立)、福井高専、長野高専、岐阜高専、沼津高専、豊田高専 
  • 近畿地方
    鳥羽商船高専(商船高専)、鈴鹿高専、近畿大学高専(私立)、舞鶴高専、大阪府立大学高専(府立)、明石高専、神戸市立高専(市立)、奈良高専、和歌山高専
  • 中国地方
    米子高専、松江高専、津山高専、広島商船高専(商船高専)、呉高専、徳山高専、宇部高専、大島商船高専(商船高専) 
  • 四国地方
    阿南高専、香川高専、新居浜高専、弓削商船高専(商船高専)、高知高専 
  • 九州・沖縄地方
    北九州高専、久留米高専、有明高専、佐世保高専、熊本高専、大分高専、都城高専、鹿児島高専、沖縄高専

高専の学費の内訳

続いて、学費の内訳を確認していきましょう。

上記の通り高専は圧倒的に国立が多いので、国立高専の学費をメインにご説明していきます。

※私立高専の学費例は後ほどご紹介しますので、私立高専を目指している方も最後までご覧ください。


国立高専の学費は以下の通りです。

  • 初年度:319,200円
  • 2年目以降:234,600円


国立の学費は文部科学省の省令によって定められており、すべて一律になります。

よって、熊本高専であっても、長野高専であっても学費は同じということです。


但し、主に学費減免制度等の適用有無や、入寮の有無によって必要な費用は変わってきます。


次のトピックスで入学検定料も含めた費用や、教科書代等の費用、その他入寮費などを詳しく解説していきます。



入学検定料・入学料と授業料の費用

⒈入学検定料も含めた年間の費用について


以下の表の通り、入学検定料も含めると初年度が約34万円、以降毎年約23万円を学校に納付する必要が有ります。


国立高専の学費一覧表(1年間あたり)

科目初年度2年生〜5年生
入学検定料16,500円
入学料84,600円
授業料234,600円234,600円
335,700円234,600円


2高等学校等就学支援金について


後ほど2020年度から始まる高等教育無償化については触れますが、ここでは現行の授業料減免制度である高等学校等就学支援金についてご紹介します。
対象は高専の1〜3年生です。4年生以降は支給されませんので、ご注意ください。

高専(国立)向けの高等学校等就学支援金による支援内容(年額)
市町村民税+都道府県民税所得割額支援金支給額 自己負担金
50万7,000円以上

(目安年収:約910万円以上)  
なし234,600円
25万7,500円以上~50万7,000円未満

(目安年収:約590万円以上〜約910万円未満)
118,800円115,800円
8万5,500円以上~25万円7,500円未満

(目安年収:350万円以上~590万円未満)
178,200円 56,400円
非課税~8万5,500円未満

(目安年収:0円~350万円未満 )
234,600円0円

教科書代などその他の費用

入学検定料や学費、就学支援金についてご説明しましたが、その他に必要な費用を確認していきましょう。徴収される費目やその額は、学校や学部、学年によって異なりますが、以下のとおり参考としてご紹介します。


  • 学生会費が約5,000円〜1万円(年間)、
  • 研修旅行などの行事費用は5年間で約10万円〜20万円、
  • 教科書代は約3万円〜7万円(年間)
  • 体育用品が約2万円前後、
  • 後援会費が約1万円〜2万円、
  • その他保険等が1,000円〜3,000円(年間)

あたりが一般的です。


教科書代が高額であることがよくわかります。


具体的な例を見ていきましょう。


例1.石川高専の場合
  • 学生会入会金:1,000円(初年度のみ)
  • 学生会費:8,000円(年間)
  • 海外研修旅行積立金:20,000円(総額120,000円)
  • 教科書・教材費:約50,000円
  • 体育用品:約18,000円
  • 教育後援会費:20,000円(+初年度のみ、入会金10,000円) 
  • 参照:石川工業高等専門学校HP


例2.長野高専の場合
  • 学生会入会金:1,000円(初年度のみ)
  • 学生会費:5,800円(年間)
  • 旅行等費用:約100,000円(2年生)、約30,000円(4年生)
  • 教科書・教材費:約70,000円(1年生)、 約30,000円(2~5年生)
  • (独)日本スポーツ振興センター
    災害共済給付掛金:1,550円/年
  • 参照:長野工業高等専門学校HP

高校寮に入った場合の費用

入寮を予定している方が最も気になるのは、寮にかかる費用ではないでしょうか。

これも学校により変わるのですが、寄宿寮(部屋代)が年間1万円前後、寮費(光熱費やエアコンリース代等)が年間約6万円〜10万円といった費用感が一般的なようです。教科書代などと比較すると「安い」と感じる方も多いかもしれません。この他に食費等がかかります。


具体的な例を見ていきましょう。

例1.舞鶴高専の場合

  • 寄宿料(2or3人部屋):月額700円
  • 寄宿料(1人部屋):月額800円
  • 食費
    :(1日874円)×(1カ月の日数)-(欠食が認められた食費)=(当月の食費)
  • 食堂運営費(月額 :各月の営業日数×256円(光熱水量等)
  • 学寮諸経費(男子):月額9,900円(エアコン経費含む)
  • 学寮諸経費(女子):月学9,100円(エアコン経費含む)
  • 寮生会費
    :2,400円
  • 参照:国立舞鶴工業高等専門学校


例2.熊本高専の場合

  • 寄宿料(2人部屋):月額700円
  • 寄宿料(個室):月額800円
  • 給食費(3食):月額29,667円
  • 寮運営費:月額5,400円(光熱費含む)
  • 参照:熊本高専専門学校

全国にある高専の学費の内訳例の一覧

いくつかの高専をピックアップして、学費の内訳を見ていきましょう。学費の定義は高校によって分かれますので、ここでは、
  • 入学料
  • 授業料
  • 各種会費

を学費に含めました。 


高校寮費や旅行・研修等費、体育用品(体操着など)、教科書代等は含んでおりませんので、ご注意ください。これらの費用については、上のページに記載しておりますのでご参照ください。

サレジオ高専の学費

サレジオ高専は東京都の町田市にある高等専門学校で、京王相模原線の「多摩境駅」から徒歩で約10分の場所に位置します。カトリックの教育精神の基づく学校です。


もともとは東京都杉並区にあった学校ですが、2005年に町田市に移転しました。


私立の高専なので、学費は高額です。他の国立高専とは、入学金と授業料(年間)だけで約50万円の差があります。年間トータルでは70万円ほど以の差が出ています。


一方で、施設・設備は充実しており、サポートも手厚い面もあるようです。

それでは、サレジオ高専の学費の内訳を見てみましょう。


サレジオ高専の学費内訳(年間)

費目金額
入学料 300,000円 
授業料500,000円
実験実習料48,000円
施設設備資金 180,000円
公費 45,000円 
父母入会金10,000円
父母会費9,800円

年間納付金(学費関係):1,092,800円


参考:サレジオ工業高等専門学校HP

沼津高専の学費

続いて沼津高専の学費を紹介します。同校は、JR沼津駅または三島駅からバスを使い、最寄のバス停から徒歩10分の位置にあります。これまで卒業生を約1万人輩出している学校です。


特徴としては、地域との関わりを重視しており、「沼津高専地域創生交流会」を通じて地元企業の支援をおこなっています。また医用技術者を養成する社会人講座「富士山麓医用機器開発エンジニア養成プログラム(通称F-met)」を主催し、医用関係の産業が盛んな静岡県東部の振興に貢献しています。


また地元議員の組織が地域と学校を繋ぎ、地元に密着した高校であることが伺えます。

それでは、沼津高専の学費内訳を確認しましょう。


沼津高専の学費内訳(年間)

費目金額
入学料 84,600円
授業料234,600円
学生会入会金1,000円
学生会費5,000円
教育後援会入会金15,000円
教育後援会費 22,000円


年間納付金(学費関係):362,200円


参考:沼津工業高等専門学校HP

久留米高専の学費

久留米高専は、福岡県久留米市にある高専で、久留米駅からバスで10分ほどの位置にあります。本科卒業生の6割を占める就職希望者への求人倍率は、平成30年度44倍に上り、就職力の高さが伺えます。


また、久留米市との「テクノネット久留米」の創設(平成24年度)を皮きりに、産学民の連携を推し進めており、九州大学をはじめ、地元大学との連携が強いことも特徴といえます。

それでは、久留米高専の学費内訳を確認しましょう。


久留米高専の学費内訳(年間)


費目金額
入学料84,600円
授業料234,600円
学生会入会金1,500円
学生会会費8,500円 
後援会入会金3,000円
後援会会費24,400円


年間納付金(学費関係):356,600円


参考:久留米工業高等専門学校HP

明石高専の学費

明石高専は兵庫県明石市にある学校で、JR魚住駅から徒歩5分の場所に位置します。学生数800人に対して、専任教職員スタッフが約120人おり、きめ細かい指導を特徴としております。


広いキャンパスでは、年間を通じて様々な学校行事が開催されており、クラブ活動も盛んに行われています。ロボコンなどの各種コンテストに積極的に参加しているようです。

それでは、明石高専の学費内訳を確認しましょう。


明石高専の学費内訳(年間)

費目金額
入学料84,600円
授業料234,600円
学生会費 入会金2,000円
学生会費4,800円
後援会入会金15,000円
後援会費26,000円 


年間納付額(学費関係):367,000円


参照:明石工業高等専門学校HP

茨城高専の学費

茨城高専は茨城県ひたちなか市にある学校で、JR常磐線勝田駅よりバスで10分程の場所に位置しております。茨城高専は、工学に焦点を当てた教育を行うことで数多くの人材を輩出しています。


また、特出すべき事項として、同校は、全国51の国立高専から2校だけが選出された「グローバル高専モデル校」であることです。すでに国際的に活躍する人材を輩出するプログラムを実施しており、これからの技術分野においてグローバルに活躍する人材の育成に注力していくことが伺えます。


そんな茨城高専の学費内訳を確認していきましょう。


茨城高専の学費内訳(年間)

費目金額
入学料84,600円
授業料234,600円
学生会入会金 1,000円 
学生会費 6,000円
後援会入会金 20,000円
後援会費23,000円 


年間納付額(学費関係):369,200円


参考:茨城工業高等専門学校HP

高専と公立高校との授業料や卒業までにかかる学費の比較

高専は修業年限が5年間でに対し高校は3年間ですが、両校ともに中学校卒業後の進学先として比較されます。単年の授業料や卒業までに必要な学費を比較していきましょう。

1.高専と公立高校の入学料・学費の比較(単年度)
内訳高専公立高校
入学料84,600円5,650円
学費234,600円118,800円
総額 319,200円124,450円
※高等学校等就学支援金は考慮せず

2.高専5年間と公立高校3年間+専門学校2年間(計5年間)の比較
内訳高専(5年間)公立高校+専門学校(計5年間)
5年間の学費1,257,600円2,636,400円
※高等学校等就学支援金は考慮せず 
※専門学校は情報処理分野を想定

3.高専5年間+専攻科2年間と公立高校3年間+国立大学4年間の比較
内訳高専+専攻科(計7年間)公立高校+国立大学(計7年間)
7年間の学費1,811,400円2,787,250円
※高等学校等就学支援金は考慮せず

「入学検定料・入学料と授業料の費用」でご紹介した通り、「市町村民税+都道府県民税所得割額」に応じて就学支援金が支給されます。上記の数字は、就学支援金を考慮していない費用になりますので、ご注意ください。

高専も公立高校の無償化・学費免除制度が適用される

高専も高等学校等就学支援金の対象になります。これにより実際、学費が免除になる方もいらっしゃいます。ただし、多くの情報サイトでは「支援額に差はあれど、全ての生徒が何らかの支援の対象となる」といったような記載がありますが、これは違います。


詳しくはこの記事の「入学検定料・入学料と授業料の費用」をご覧いいただければと思いますが、市町村民税+都道府県民税所得割額が50万7,000円以上(年収約910万円以上)になると、支援の対象外となりますのでご注意ください。


実は、高専の授業料だけでなく、入学金も免除となり、且つ別途給付型奨学金がもらえる制度もあります。それが、2020年4月からスタートする高等教育の就学支援新制度です。大学業界では「大学無償化」などと呼ばれていますが、実はこの制度は高専も対象です。


詳しく確認していきましょう。


高等教育の就学支援新制度のポイント1

  • 【支援対象】大学・短期大学・高等専門学校・専門学校
  • 【支援内容】1)授業料等減免制度の創設 2)給付型奨学金の支給の拡充 
  • 【対象学生】住民税非課税世帯 及び それに準ずる世帯の学生

高等教育の就学支援新制度のポイント2

①授業料等減免上限

入学料授業料
国公立高専約8万円約23万円
私立高専約13万円約70万円


②給付型奨学金上限

自宅生自宅外生
国公立高専約21万約41万
私立高専約32万約52万


高等教育の就学支援新制度のポイント3

全員が授業料等減免および給付型奨学金の上限までもらえるわけではありません。

上限まで支給されるのは、住民税非課税世帯(目安年収約270万円以下)です。

住民税非課税世帯に準ずる世帯には、2段階に支給額が分かれています。

  • 目安年収270万円以下までは、上限を支給
  • 目安年収300万円以下までは、上限の2/3を支給
  • 目安年収380万円以下までは、上限の1/3を支給                

※両親・本人・中学生の家族4人世帯の場合の目安。 

※基準を満たす世帯年収は 家族構成により異なる


参考:文部科学省 高等教育の就学支援新制度について

高専の学費のまとめ

高専の学費についてご紹介いたしましたが、いかがでしたでしょうか。

学費が「高い」「安い」という判断は、単年度なのか複数年度なのかによっても異なることも、お分かりいただけたかと思います。


今回の記事のポイントは以下の3つです。

  • 高専の学費は単年度での比較の場合、約20万円/年ほど公立高校よりも高い
  • 高専と「公立高校+専門学校の計5年」で比較すると高専の方が学費は安い
  • 入学料や授業料が免除になる制度や給付型の奨学金制度があるので、要件を要確認

今回は、グローバル高専モデル校に選定された茨城高専のように、各高専の特徴も少しご紹介しました。私立高専を除いては学費に差はありませんが、是非各校の特徴も調べてください。


この記事は、高専の学費の支払い計画を立てている方や、高専か公立高校かの進路を検討する方、加えて支援制度が気になる方のご参考になりますので、ぜひ何度でもご覧ください。

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