介護保険制度利用で購入できる物品とは?福祉用具の購入ルールを解説

介護保険では、介護に必要な物品の購入についても支給を受けることができます。ただしすべての物品が支給の対象となるわけではなく、そこには細かなルールがあるのです。介護保険における福祉用具購入のルールについて、具体的な提案も交えて解説します。

監修者
株式会社Wizleap 代表取締役。東京大学経済学部で金融を学び、金融分野における情報の非対称性を解消すべく、マネーキャリアの編集活動を行う。ファイナンシャルプランナー証券外務員を取得。

介護保険制度を利用して物品は購入できる

在宅介護では、労力だけではなく金銭の負担もかなりのものです。 

特に高額で驚くのが介護生活に必要となる物品の値段。 

介護用というだけで、ゼロがひとつ増えるような高額設定です。 


しかしその購入は、ちょっと待ってください。 

介護保険を使って、1~2割の自己負担で購入できる介護用物品もあるのです。

介護保険で物品を購入する場合は、まずは全額実費を負担する

たとえば1万円の物品を購入する場合、1割負担の方なら1000円で購入できます。 

しかし介護保険を使って物品を購入する場合、いったんは建て替えなければなりません。 


購入後に市町村にから払い戻しを受ける償還払いという形になります。 


高価な物品を買うときには、まとまった手持ちの金銭は必要です。 

介護保険で購入できる物品は”意外に限られている”

ただし福祉用具の給付には、以下のような基本ルールがあります。 


「身体状況や介護の必要度の変化に応じて交換ができるよう、原則は貸与とする」 


そう、あくまで購入は例外なのです。 

その例外に該当するのは、以下のような「貸与になじまない」物品です。 


  1. 他人が使用したものを再利用することに心理的抵抗感がともなうもの  
  2. 使用によってもとの形態や品質が変化し、再利用できないもの 

これは具体的にどういう物品なのでしょうか。

物品購入を対象としている5つの商品例

購入の対象となる例として、5つの物品を挙げたいと思います。  
  • 腰掛便座
  • 自動排泄処理装置の交換可能部
  • 入浴補助用具
  • 簡易浴槽
  • 移動用リフトのつり具の部分 

腰掛便座

腰掛便座には、


・居室に置けるポータブルトイレ

・和式便器の上に置いて洋式にする据置式便座

・洋式便器の座面の高さを上げる補高便座

・便座が電動またはスプリングで昇降する立ち上がり補助便座


などがあります。


自動排泄処理装置の交換可能部

自動排泄処理装置とは、寝たままにの状態で尿や便を自動で吸引できる装置です。


装置本体は購入対象ではありませんが、直接肌に触れる部分や尿や便の経路となる部分は購入の対象となっています。


たしかに排泄用品が誰かが使用した後のものというのは、抵抗感がある方が多いでしょう


入浴補助用具

入浴補助用具は、入浴時の座位保持や浴槽への出入りを補助するものです。

入浴用いすや浴槽用手すりなどがあります。


簡易浴槽

簡易浴槽とは「空気式または折りたたみ式で、取水や排水に工事をともなわないもの」とされています。


 もちろん入浴時には誰もが裸になるもの。

肌に直接触れるものは、新品を使いたいというのは通常の感覚でしょう。


移動用リフトのつり具の部分

ぶら下がるリフトのハンモックの部分、というと分かりやすいでしょうか。 

これは使用回数を重ねると変形してしまうものなので、中古では支障があるのです。


物品購入の”対象外”の商品例

購入の対象外になるのは、以下のような物品です。  
  • 車いす(付属品含む) 
  • 特殊寝台(介護用ベッドのこと。付属品含む) 
  • 床ずれ防止用具 
  • 体位変換器 
  • 手すり 
  • スロープ 
  • 歩行器 
  • 歩行補助つえ 
  • 認知症老人徘徊感知機器 
  • 移動用リフト(つり具の部分を除く) 
  • 自動排泄処理装置の本体部分  

また購入の対象となる福祉用具であっても、都道府県の指定を受けていない事業者から購入したものは介護保険給付の対象となりません。 


全額自己負担となってしまうのでご注意ください。 

介護保険適用の”幅を広げる”2つの方法

「介護用ベッドを買おうと思っていたのに、全額自己負担なの?」 

と不満に思う方もいるのではないでしょうか。 


なにしろ介護用ベッドは高価です。 

それなりの機能があるものなら10万円くらいから、中には40万円近くするものもあります。 


福祉用具利用にあたって、介護保険適用の幅を広げるにはどうしたらいいのでしょうか。

その2つの方法をご紹介します。

1. 物品購入でなくレンタルであれば、介護保険適用の幅が広がる可能性もある

介護保険を利用して購入できる物品はかなり限られているということをお伝えしました。 

しかし購入ではなくレンタルする場合には、保険適用の幅はぐっと広がリます


先ほどお伝えしたように、介護用ベッドや車イスは、もし購入すれば全額自己負担となるものです。 

しかしレンタルであれば、料金の1~2割の負担で利用することが可能となるのです。 


1割負担者であれば、


  • ベッド…1ヶ月800円~1300円
  • 車イス…500円~700円

この程度の負担で利用することができます。


しかし、介護用ベッドと車イスのレンタルができるのは原則として要介護2以上の方に限るというのが辛いところです。


下記リンクは厚生労働省の調査による福祉用具貸与の参考資料です。レンタルのご参考にしてください。


http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000168702.pdf

2. ”民間”介護保険加入なら、物品購入の”制限なし”

ここまでは、公的介護保険に関することを述べてきました。 


「あれもダメこれもダメって、いったい何を買えばいいの?」 

「もっとそれぞれの事情に合わせた柔軟な対応はできないの?」 


あまりの制限の多さに、私自身介護保険に携わる者として利用者様からお叱りを受けることも少なくありません。


公的介護保険だけでは十分でない。 

そう感じる方も少なくはないはずです。 

そういった場合には、民間介護保険への加入をおすすめします。 


特に介護にかかる初期費用は大きくなる傾向にあります。 

まず民間の介護保険は、介護が必要となったときに「介護一時金」というまとまったお金を受け取ることができます。 


そして「介護年金」を毎年受けとることができる保険もあります。 

※商品により保証内容は異なります。 


受け取ったお金は福祉用具の費用のみならず、おむつや防水シーツなどの消耗品費・介護する家族の収入源の穴埋めなど、 用途の制限なく使うことができます。 


公的介護保険は「平等であること」に重きがおかれています。 

どうしても保障内容が四角四面にならざるを得ないのです。 


より本人の状況に寄り添った介護環境を整えるためには、自己負担金や民間介護保険の利用が必須なのです。  

まとめ

介護の初期費用をまかうことができる、公的介護保険の福祉用具購入。 

しかし購入できる品目は限定されています。 


さらに購入限度額は年度当たり総額10万円。 

それを超えた分はすべて自己負担となります。 


たとえば50万円の水洗式ポータブルトイレを購入した場合は、 

500,000-(100,000×0.9)=410,000 

41万円が自己負担金となります。 


※年度内に他の物品を購入しない場合


さらに工事費は実費負担です。 

また、たとえ年度内の購入額が10万円未満であっても翌年度への繰越はありません。 


この保障を十分と見るか、足りないと見るか。 

場合によっては、民間介護保険への加入が必要といえるでしょう。 


保険全般に言えることですが、民間介護保険は「使えてラッキー、使わなくてもラッキー」 

と思えるものです。 


ご本人とご家族の穏やかな未来のために、ご加入を検討してはいかがでしょうか。 

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