痔の手術は医療保険の対象?保険が適用される手術パターンを大解説

痔は手術内容等により医療保険の対象となる場合があります。ご自身の加入している保険会社に相談し、医療保険が適用されるかどうかを確認しましょう。なお、痔が軽度の症状であるなら薬物治療による方法がとられる場合もあります。手術が心配な方は、一度、医師にご相談ください。

監修者
株式会社Wizleap 代表取締役。東京大学経済学部で金融を学び、金融分野における情報の非対称性を解消すべく、マネーキャリアの編集活動を行う。ファイナンシャルプランナー証券外務員を取得。

痔の手術に生命保険は適用されるのか

痔という病気は日本人の3人に1人が罹患していると言われています。

トイレ時などにはかなりの激痛がある場合もあり、治療せずにはいられない方も多いと思います。


また、がんに発展する痔もあり、さらに放ってはいけない病気と言えます。

一方で、放っておいても耐えられるような場合、治療費が気になってしまい、特段検診にいかないような方もおられると思います。


そのような方にとっては、痔の治療や手術は生命保険である”医療保険”が適用されるのかどうかというテーマはかなり気になるところだと思います。


そこで、この記事では「痔」と「医療保険」をテーマ

  • 痔の特徴や種類
  • 痔の手術方法
  • 痔に医療保険は適用されるのか
  • 今後、痔を再発しないためにできること

以上を中心に解説していきます。


この記事を読んでいただければ、「痔」と「医療保険」に関しての基本的知識を得ることに役立つかと思います。

そもそも痔とは?

痔とは、肛門および肛門の周辺で起きる病気のことです。痔にも種類があり、代表的な病気には、いぼ痔切れ痔痔瘻(痔ろう)があります。



まずは、おしりを理解しよう

痔はヒト固有の病気と言えます。

普段から直腸および肛門付近の血管は、頭部に血液を送り届けていますが、直立二足方向を行うヒトの場合、より重力に逆らって血液を頭部に送ることになります。


つまり、肛門付近の血管は常にに大きい圧力がかかっていると言えます。

それに加えて、長時間にわたるデスクワーク等の座り仕事による肛門の血液の鬱滞や、力仕事のように下半身に力をいれる作業で過剰な負荷がかかる場合もあります。


また、便秘や下痢の症状も肛門部分に強い力がかかってしまう要因になります。


ヒトの場合、おしりは絶えず体の内部および外部の影響を受け続けていると言えます。

痔の種類・原因とは?

痔の代表的な病気には、いぼ痔(内痔核、外痔核)切れ痔痔瘻(痔ろう)があります。以下では各種類の状態、原因、症状を説明します。


  • いぼ痔(内痔核)

肛門を閉じる役割をするクッション部分がうっ血して膨らんだ状態(痔核)が肛門の内側にできる痔です。


便秘やトイレ時間が長く排便時に力み過ぎてしまう、長時間にわたり同じ姿勢のままでいる事が原因です。なお、妊娠・出産が原因でおこりやすくなるとも言われています。


痛みはほとんどないものの、異物感があります。



  • いぼ痔(外痔核)

肛門を閉じる役割をするクッション部分がうっ血して膨らんだ状態(痔核)が肛門の外側にできる痔です。


便秘や下痢、アルコールや刺激性の強い食事、長時間の立ち仕事、座り仕事、冷え、ストレス等が原因です。


出血は少ないものの、腫れて痛みが伴うことが多いです。



  • 切れ痔

裂肛と言われる肛門の皮膚が裂けた状態です。便秘がちな女性に多く、排便時の力みが主な原因です。


排便時に痛み・出血があります。放置しておくと潰瘍やポリープができる場合があります。



  • 痔瘻(痔ろう)

あな痔とも呼ばれます。肛門内部の壁に大腸菌等が付着し感染して、化膿による膿がたまり、次第に膿が皮膚を破って流れ出る部分まで、1本のトンネルようになります。


下痢や疲れ、ストレスが原因で起こります。肛門周囲の皮膚の腫れや、出血、熱が出る場合もあります。治療には手術が必要です。

悪化させないように自分にできること

実際に医師の診察を受けてみなければわからない部分もありますが、診察前に症状の悪化は避けたいものです。

まずはベット等に横向きに寝て安静に保つことを心がけてください。


以下の症状がある場合には、ご自身で出来るケアで悪化を防ぎましょう。


  • 痛みに加え肛門に異物感がある、排便時に切れるような痛みがある

肛門に異物感がある場合はいぼ痔、排便時に切れるような痛みがある場合は切れ痔の疑いがあります。


いぼ痔・切れ痔の疑いのある症状のケアは、おしりを温めて血行を促すことが重要です。


体の負担の少ない半身浴やおしりをぬるま湯つける、お風呂に入ると激痛が伴う場合は、ぬるま湯につけたタオルやカイロを患部にあてるという方法があります。



  • 肛門の周囲が赤く腫れて、激しく痛む

痔ろうまたは、この症状の手前の肛門周囲膿瘍のおそれがあります。


実は、この症状は腫れがあっても患部を冷やしたり、逆に温めたりしても症状の悪化を招きます。


この症状場合は、出来るだけ速やかに病院で診療を受けてください。

種類別にみる手術・治療法、そして完治まで

ここまで、痔の種類とその原因、対処法をまとめましたが、ここからは手術・治療法をまとめていきます。

痔の治療方法は、多くの場合は手術するレベルではなく、塗り薬や内服薬により治療していくことが多いと思います。


この場合、通院や入院を行っているわけではないので、国民健康保険は適用されても、医療保険が適用されることは考えにくいかと思います。


ただ、手術をする場合は、どのような手術があり、医療保険が適用されるのはどのパターンなのか、詳しく見ていきましょう。

痔の手術方法

こちらでは、いぼ痔(内痔核、外痔核)、切れ痔、痔ろうの手術方法を紹介していきます。

  • いぼ痔の手術方法

内痔核・外痔核のいぼ痔に共通する手術方法に、「結さつ切除術」があります。


痔核に血液を送る血管を糸で縛って、切除すると言う方法です。


日帰りの手術で終わる場合や、症状によっては数日の入院が必要な場合があります。


一方、内痔核のいぼ痔に限定されますが、「ジオン注射療法」があります。内痔核に薬剤を直接注射し治療する方法です。


肛門を切開しないために体に負担の少ない方法と言えます。



  • 切れ痔の手術方法

主な手術方法としては「裂肛切除術」「側方内括約筋切開術」の二つが挙げられます。


裂肛切除術は、その名の通り裂肛を切除する手術です。


側方内括約筋切開術は、括約筋の一部を切開し、狭くなってしまった肛門を少し拡げる方法です。

なお、この二つの手術は同時に行われることもあります。



  • 痔瘻(痔ろう)の手術

主な手術方法としては「開放術式」「くりぬき法」「シートン法」の三つが挙げられます。


開放術式は、痔ろうのトンネルとなった部分を完全に切開する方法です。


くりぬき法は痔ろうの部分を切開すること無く、患部をくり抜いて閉じ合わせる方法です。


シートン法は膿が通るトンネルに輪ゴムを通して圧迫し、時間をかけてトンネルの一部を切開する方法です。

手術せずに薬物療法で治せる痔もある

軽度の痔であるなら薬物療法が行われます。早めに気付いて治療薬を使用すれば、ほとんどの症状が改善できると言われています。

  • 主な治療薬について

1.坐薬


主にいぼ痔(内痔核)、切れ痔の治療に用いられている薬です。直接肛門に挿入することで、肛門の皮膚や内部粘膜をカバーし、痛み・出血の症状を和らげます。効果も早くあらわれます。


2.塗り薬

軟膏、クリームが該当します。坐薬と同じ効果ですが、肛門の外側にできた痔を治療する時に用いられます。


3.内服薬

坐薬、塗り薬のように直接患部に塗る物ではありませんが、緩下剤で便を軟らかくして便秘の改善を図ったり、痔により炎症を抑えたりする物があります。



  • 治療薬を使用する前の注意点

市販薬でも、痔の症状の改善に有効な治療薬はありますが、肛門の違和感や痛み、出血の状況がある場合、ご自身でどのような症状の痔なのか判断がつかない場合が多いと思います。


そのため、ご自身で判断し市販薬を使用するよりも、まずは医療機関で診察し、症状の把握に努めることをお勧めします。


その上で、医師からどのような治療薬がご自身に合っているのかをアドバイスしてもらい、医療機関で処方される薬を使用し、改善に努めていくことが症状の悪化を防ぐ適切な方法と考えます。

痔の手術の費用・時間・痛み・傷跡について

いぼ痔(内痔核、外痔核)、切れ痔、痔ろうの手術費用や手術時間、術後の痛み、傷跡が気になりますが、手術時間はどの手術でも概ね30分程度です。痛みは症状により長引く場合がありますが痛み止めの薬を処方されます。

傷跡は肛門付近であるためどの手術もほとんど目立ちません。


  • どの手術費用も健康保険が適用される

痔の手術には基本的に健康保険が適用されるので、ご自身の負担額は3割となります。


いぼ痔の手術については前述した「結さつ切除術」、「ジオン注射療法」ともに3~4万円の手術費用となります。

切れ痔の手術については、「裂肛切除術」、「側方内括約筋切開術」ともに2~3万円の手術費用となります。

痔ろうの「開放術式」、「くりぬき法」、「シートン法」による手術は4万円程度です。



  • ただし追加の費用が必要になることもある

痔の症状によっては数日入院しなければいけない場合もあります。その分、入院費や食費等も支払わなければなりません。


また、術後の痛み止めの薬や、炎症防止の薬、感染症予防の薬も処方されるため、それなりに費用がかかります。


2〜3日ほどの入院で合計10万円強の費用が必要な試算になります。数万でも医療保険が適用されるだけで嬉しいものです。

痔に医療保険は適用されるの?

結論からすると、痔の症状、手術の有無、入院日数、加入している保険会社、医療保険の商品ごとに適用の有無は異なります。

基本的には、保険各社とも、医療特約を付けた上で痔の根治術(患部を切除して完全に治す手術)が医療保険の対象となります。


ご自身の加入している保険会社にお問い合わせして確認してみましょう。


また、加入した際の契約書がお手元にあるなら、ご自身が受けることになる手術名があるかを確認することもできます。


医療保険が適用されることを確認した上で、医療保険の責任開始日よりも前に診察や治療を受けていなければ、給付金等を受けることができます。

医療保険に加入するときの告知ってどうするの?

医療保険契約を保険会社と締結する場合には、告知書の提出が義務付けられています。

  • 告知書について

保険会社が、加入希望者と医療保険契約を結ぶか否かの判断材料として、加入希望者が記載した健康状態を確認する書類が「告知書」です。 


医療保険契約は、加入希望者と保険会社の合意により成立する契約です。


そのため、保険会社も、加入希望者の症状によっては加入を拒否する権利があります。 

告知書には、加入希望者の氏名、住所、職業、年収のほか過去の病歴や、診療歴、手術歴、既往症の有無を正確に記載します。




  • 恥ずかしいからと言って告知しないと・・・

告知書に正確に記載する義務を「告知義務」と呼びます。加入希望者が以前に痔を患っていても当然、告知書に記載しなければなりません。


恥ずかしいからと言って記載しなければ「告知義務違反」に問われるおそれがあります。

告知義務違反が発覚したときは、最悪の場合、保険会社に医療保険契約を解除され給付金が下りない事態になります。

痔でも加入できる医療保険がある

現在、痔の治療中の方が医療保険に加入したい場合には、条件付きの通常の医療保険や、審査が緩和されている医療保険に加入できる場合があります。

  • 条件付きであれば通常の医療保険に加入ができる場合も

保険各社の判断基準はそれぞれ異なるため一概には言えませんが、例えば「肛門部分を保障から外す」と言うように条件付き(部位不担保)であるなら、通常の医療保険に加入できる場合があります。


また、保険会社によっては加入希望者の支払い保険料が割高になるケースも考えられます。



  • 引受基準緩和型医療保険

通常の医療保険よりも、保険会社の引受基準や告知項目が緩和されている医療保険です。


ただし、支払う保険料は割高で保障額も低く抑えられる等のデメリットもあります。



  • 無選択型医療保険

加入希望者の健康状態にかかわらず、誰でも入れる医療保険です。 

ただし、支払う保険料は高く、受ける保障額も低く抑えられています。


今後、痔を再発しないためにできること

痔は概ね生活習慣に起因した病気と言えます。

そのため、健康的な生活習慣を送ることで、予防や治癒が可能になることでしょう。

運動不足の解消のため週に数回は運動をすることや、偏った食事を改めバランスの良い食生活に変える、しっかりと睡眠をとる等の心がけで痔のリスクは軽減されるはずです。

おしりのケアをしよう

おしりに負担をかけない以下の工夫を行う事も重要です。

  • 食物繊維の多い食事を心がけ、水分をこまめに補給し、過剰なダイエットを控え、便秘対策を行う
  • トイレでの力み過ぎに注意し、排便後は肛門を清潔に保つ
  • 腰を冷やしたり、同じ姿勢を長く続けない
  • ストレス発散に心がけ、過剰なアルコールや刺激物の摂取を控える


まとめ:「痔」でも加入できる保険はある

「痔」と「医療保険」について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。 

 今回の記事のポイントは、 

  • 痔の代表的な病気には、いぼ痔(内痔核、外痔核)、切れ痔、痔瘻(痔ろう)がある
  • 軽度の痔であるなら薬物療法で治るので、早めに気付いて病院で医師に診察してもらおう
  • 「痔」が医療保険に適用されるかどうかは、痔の症状、手術の有無、入院日数、加入している保険会社、医療保険の商品ごとに適用の有無は異なる
でした。

痔は、大抵の症状であるなら薬物治療、進行していたとしても手術で完治できる病気です。

ただし、排便中の出血を「痔であるから大丈夫。」と安心して、直腸癌のような重大な事例を放置してしまうおそれもあります。


肛門に異常を感じたら、まず医師に診察してもらい、症状の確認、適した治療法のアドバイスを受けるべきと考えます。


ほけんROOMでは、他にも読んでおきたい保険に関する記事が多数掲載されていますので、ぜひご覧ください。

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