学資保険の返戻率が下がる?原因と、これから加入したい人の対策とは

子どもの将来のため教育資金の貯蓄方法として学資保険を利用される方は多いでしょう。しかし、マイナス金利政策のあおりを受け、学資保険の返戻率は下がる一方です。学資保険の返戻率が下がる原因と、学資保険の返戻率が下がる時の対策について解説します。

監修者
株式会社Wizleap 代表取締役。東京大学経済学部で金融を学び、金融分野における情報の非対称性を解消すべく、マネーキャリアの編集活動を行う。ファイナンシャルプランナー証券外務員を取得。

学資保険の返戻率が低下し続けているその理由と対策とは


子どもが生まれたら子どもの将来のため、教育資金を頑張って貯めていこうと、学資保険(こども保険)を準備することを考えるでしょう。

しかし、妊娠中に調べておいた学資保険の返戻率が、出生後に保険会社のHPで確認したら変わっていたり、資料請求した内容と比較して返戻率が下がっていたりしたことはないでしょうか。


高い戻り率であれば学資保険はおトクですが、学資保険の返戻率が低くなれば魅力も薄れてしてしまいます。


では、この学資保険の返戻率が低下した背景には、どのような原因があるのでしょうか。


そこで、この記事では「学資保険の返戻率が低下した背景」の観点で 

  • 学資保険の返戻率が下がることになった原因
  • マイナス金利政策が学資保険に与える影響
  • 学資保険の返戻率が低いときの対策

を解説していきます。


この記事を読めば、「返戻率の低下の原因」「返戻率が低いときの対策」が分かります。


ぜひ、最後までご覧ください。

学資保険の返戻率が下がる原因であるマイナス金利とは


学資保険に加入する理由として、「金利(利率)が高いこと」「強制的に教育資金が準備できること」などが大きな利点だと言えるでしょう。

学資保険の金利(利率)である返戻率は、2010年頃は110%を上回っており、当時の学資保険に加入していれば、満期時に10%以上の利息を受け取ることができました。

しかし、この金利は2016年2月に、日本銀行がマイナス金利政策を導入したことで一転します。

その影響により、各保険会社は保険料の改定をせざるを得なくなるのです。


その翌年2017年4月に、各保険会社が保険料の改定を行い、貯蓄率の高い保険商品の返戻率はがくんと下がることとなり、学資保険も今までのような返戻率の高い商品は見られなくなったのです。


では、そもそもマイナス金利政策とは一体どのような政策なのでしょうか。


マイナス金利政策が行われたその目的と影響についてみていきましょう。

マイナス金利政策を進める目的

そもそも、この返戻率が下がる原因の「マイナス金利」という言葉はよく聞きますが、改めていったいどういうことか疑問に思われる方もいらっしゃるでしょう。

「マイナス金利」だからと言って、私たちが銀行に預けているお金の金利がマイナスになるわけではありません。


各金融機関も、私たちと同じように、日本銀行に資金を預けています。


その預けたお金にも、同じように日本銀行が金利を付け、銀行へ利息を払う、という仕組みになっています。


マイナス金利政策とは、日本銀行が各金融機関に向けての金利をマイナスにするという政策なのです。


各金融機関は日本銀行にお金を預けていても、利息の金額が下がるどころかマイナス金利分支払わなければならないので損になります。


なので、日本銀行にお金を預けるのをやめ、一般企業などにお金を貸すことで運用するようになります。


一般企業に資金が回ると、新たな機械の導入や工場の新設など、市場にお金が出回るので、景気がよくなります。


マイナス金利政策は、このように景気の回復を目的としているのです。

保険会社の標準利率を引き下げるマイナス金利政策

景気がよくなるならよい政策だ、と思うところですが、貯蓄率の高い金融商品を扱う機関である保険会社や金融機関には、大きなダメージとなる政策です。


マイナス金利政策の影響により、銀行は日本銀行にお金を預けなくなりました。


資金運用に困った銀行は、国債を買って利息を得る方法を取りましたが、色々な銀行が集中したため、国債の金利が下がることとなりました。


金融庁が打ち出した標準利率改定で、標準利率が引き下げられることになりました。

標準利率ひょうじゅんりりつ 保険会社が将来の保険金支払いのために積み立てる「責任準備金」の運用利回りのこと。毎年10月1日を基準日として、10年もの国債の過去3年間と10年間の平均利回りをそれぞれ計算し、低いほうを元に算出し、金融庁が決定する。

出典: https://kotobank.jp/word/%E6%A8%99%E6%BA%96%E5%88%A9%E7%8E%87-1612937

標準利率が下がるということは、保険会社で言えば保険を支払う時のために準備しているお金の利回りが下がるということです。


保険会社は、利回りが下がる分のお金を準備しなければなりませんが、運用しても利益が上がりません


結果的に予定利率を下げる、もしくは保険料を上げることで、下がる分の利回りをカバーし、保険を維持せざるを得なくなりました。

マイナス金利が学資保険に与える影響とは


このようにマイナス金利政策の影響で標準利率が下がり、利回りを維持しようとした保険会社は、2017年4月の一斉改定により保険料の値上げに踏み切りました。


既に契約している保険の保険料は上がることはありませんが、更新時や新規で加入する際は改定前とはかなり変わっています。


掛け金が高いからと解約したものの、再度保険に加入し直すと、以前と比較して戻り率が安くなっていて驚かれる方も多いでしょう。


医療保険や死亡保険も同様ですが、貯蓄性保険である学資保険は、大きく影響を受けどこの保険会社も返戻率は下がる一方となりました。


では、マイナス金利政策が学資保険にどのような影響をもたらしたのでしょうか。


マイナス金利政策が与えた学資保険への影響について、下記のように見ていきましょう。

  • 学資保険は保険料が値上げされて返戻率が下がる
  • 中には元本割れした学資保険も
  • 販売停止になった学資保険もある

学資保険は保険料が値上げされて返戻率が下がる

2017年4月の保険料の一斉改定により、各保険会社は保険料の値上げに踏み切りました。

その結果、高い戻り率で人気のあった学資保険も、保険料が値上がりし返戻率が下がることになったのです。

学資保険の返戻率は、以前と比較すると2017年4月以降は下がるように推移しています。

以前と同じ内容に加入しようと思っていても、保険料が値上げされているのと同時に予定利率が下がるので、返戻率はかなり低くなっています。

返戻率が高い学資保険ランキングでは、条件のよい時に契約できても返戻率は107%程度です。

一見返戻率は高く見えますが、年利で換算すると以前のように魅力のある保険とは言い難い状況です。


保険会社が資金を運用しても、マイナス金利の影響で利益が大きく上がらない今、高い返戻率を確保することは難しくなってしまいました

中には元本割れした学資保険も

学資保険の中には、保険を維持するために、保険料を値上げし返戻率を下げた結果、元本割れとなる保険も出てきました。

元本割れとは、支払った保険料の総額より受け取った満期金、お祝い金の総額が下回ることを言います。


学資保険の返戻率が100%を下回っている場合、元本割れするリスクがあると言えるでしょう。


元本割れする学資保険には特徴があり、貯蓄部分とは別に子どもの入院時の保障などの医療保障が付いています。


子どもが病気がちだったり、持病を抱えている場合には、かんぽ生命アフラックの学資保険のような子どもの医療保障の充実している保険がおすすめですが、一般的な子どもに必要かどうかは疑問です。


子どもの医療保障を、特約として契約に追加できる学資保険もありますが、特約部分の保険料は、予定利率が低く設定されています。


もともとの予定利率が低くなっている今、特約を付けると学資保険自体も元本割れしてしまうこともあるので注意が必要です。

販売停止になった学資保険もある

一部保険会社では、学資保険の販売停止(売り止め)したところもあります。

予定利率を下げたことにより返戻率を維持できなくなり、保険会社が学資保険を販売するのをやめたのです。

かんぽ生命やアフラックは、過去に保険を維持できなくなり販売停止した保険もあります。

アメリカンファミリー生命保険(アフラック)は保険ショップでの取り扱いをやめ、かんぽ生命保険は払い込んだ保険料より多くの学資金を受け取れるタイプの募集をやめた。

出典: https://www.nikkei.com/article/DGXLASGC28H0H_Y6A620C1MM8000/

一方で、比較的返戻率(貯蓄率)も高く、ランキングでも支持されている保険会社もありました。

しかし、マイナス金利政策が長期化すると、今後現在の返戻率を維持できるかどうかは、誰にもわかりません。

マイナス金利政策の影響により、現在販売されている学資保険が、販売停止することも起こりうるのです。

すでに加入している学資保険の返戻率は下がらない


中には現在既に加入している学資保険が、保険料が上がったらどうしよう、元本割れしたらどうしよう、と不安になる方もいるでしょう。

しかし、現在加入している保険については、保険料が上がることはありませんし、途中で解約しない限り元本割れになることもありません

保険を契約するということは、決められた期間契約者が保険料を毎月支払うことで、保険会社が確定された満期金を支払うという二者間の取り決めです。


保険契約時の契約は満期時まで継続されますから、決められた満期金がきちんと受け取れるので安心しましょう。

低解約返戻金型終身保険で教育資金を準備するという選択肢


学資保険の返戻率は下がる一方ですから、学資保険の加入率も2017年を境に下がる傾向にあります。


学資保険の代替商品として注目されているのが終身保険です。


一般の終身保険は一定の死亡保障を備えつつ、支払った保険料が保険の中で積み立てられ、それに利息が少しずつ上乗せになる商品です。


中でも、低解約返戻金型終身保険は、保険料を支払っている期間は、解約しても返戻金が通常の終身保険の約7割程度(解約返戻率約70%)しか受け取れませんが、その分普通の終身保険の保険より、保険料が1~1.5割程度安い設定になっています。

そして支払い期間が満了になると、一般の終身保険と同程度の解約返戻金が受け取れるようになるので、掛け金よりも解約返戻金が増える(返戻率が高い)商品です。


終身保険の保険料は、一時払い終身保険として一括で保険料を収めることもでき、さらに安い保険料に抑えることも可能です。


学資保険は子どもが2歳頃までに加入しておかなければ、ある程度の利回りを期待できませんが、終身保険なら契約者が80歳くらいまで契約できるので、年齢の制限が少ない保険です。


将来は年金の給付率も下がる可能性がありますから、子どもの教育資金のためだけではなく、老後の蓄えも兼ねて終身保険を選択することも考えられます。


その他にも、養老保険は契約者の死亡保険金と満期保険金が同額の設定になっている保険で、学資保険の変わりに利用することもできるでしょう。


選択肢は一つではありませんから、複数の保険を比較してライフプランに適した保険を選択できるとよいですね。

まとめ:教育資金は終身保険や養老保険でも準備できる


この記事では、「学資保険の返戻率が低下した背景」についてみてきましたが、いかがでしたか。 

学資保険(こども保険)の返戻率が低下した背景には、日本銀行のマイナス金利政策という景気対策が、影響していることが分かったかと思います。
  
「学資保険の返戻率が低下した背景」について、以下のようにまとめてみましょう。
  • 2016年2月、日本銀行のマイナス金利政策という景気対策により、金融機関は日本銀行から利息を受け取れなくなった。
  • 日本銀行から利息を受け取れなくなった金融機関は国債を購入したが、金融庁が標準利率改定したことにより、国債でも利回りを確保することが難しくなった。
  • 2017年4月、保険会社は保険料の一斉改定し、保険の予定利率が下がることになり、結果的に保険料も値上げされることになった。
  • 保険会社の予定利率が下がったことで、学資保険の返戻率も下がり、元本割れする保険、販売停止になる保険も現れた。
マイナス金利の影響は未だ続いており、今後学資保険の返戻率も加入率も下がるように推移してくことが予想されます。

いつまで続くか未定なため、今後販売停止になる学資保険が増えること、学資保険の返戻率が下がり続けることも予想されます。

しかし、以前の学資保険の利率と比較すると、年利(利率)は高いとは言い切れません。

子どもの教育資金の準備は、学資保険だけに頼るのではなく、終身保険などの複数の選択肢から保険を選ぶことがおすすめです。

特に低解約返戻金型終身保険は、掛け金よりも解約返戻金が多く増える(解約返戻率が高い)ため、教育資金の貯蓄方法として考えることもできます。

一時払い終身保険として一括払いを選択できたり、2歳までなどの年齢制限が少ない点も利点です。

養老保険も契約者の死亡保険金と満期保険金が同額の設定になっている保険で、学資保険の変わりに利用できるでしょう。

年金の給付率も将来は下がる可能性がありますから、高い戻り率を期待するなら、安い掛け金につられて保険を選ぶのではなく、複数の金融商品をリスクを考えながら比較検討して、家庭に適したライフプランを選択できることが望まれます。

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