iDeCo(個人型確定拠出年金)と住宅ローン控除での節税シミュレーション!併用時も解説

所得控除のあるiDeCo(個人型確定拠出年金)は、住宅ローン控除と併用することで節税効果があります。今回はiDeCoと住宅ローン控除(住宅ローン減税)での節税額を計算、なシミュレーションをします。また、併用時のシミュレーション、メリットデメリットも解説します。

監修者
株式会社Wizleap 代表取締役。東京大学経済学部で金融を学び、金融分野における情報の非対称性を解消すべく、マネーキャリアの編集活動を行う。ファイナンシャルプランナー証券外務員を取得。

住宅ローン控除とiDeCo(個人型確定拠出年金)の控除額をシミュレーション


この記事をご覧のあなたは、住宅ローン控除や個人型確定拠出年金(iDeCo)について知りたい、と思っておられることでしょう。 


将来への投資が見直されている現代において、どのような手段で将来に備えるかは切実な問題です。


特に、これから住宅ローンの利用を考えておられる方、またすでに現在支払っておられる方が、老後のことを考えて個人型確定拠出年金(iDeCo)への加入を考えるかもしれません。


しかし、その2つを両立するメリット・デメリットについて理解しておられる方は少ないでしょう。


そこで今回は、 

  • 個人型確定拠出年金(iDeCo)における税制面でのメリットとは?
  • 住宅ローン控除とは何か? 
  • 個人型確定拠出年金(iDeCo)によって住宅ローン控除額が減ってしまうことがある?  
  • 節税額をシミュレーションしておくのが大切なのはなぜ?

主にこれらの点について取り上げていきます。 


この記事を読んでいただければ、個人型確定拠出年金(iDeCo)に加入するにあたって、住宅ローンを支払っている方が事前にシミュレーションした方が良い、と言える理由を理解していただけるでしょう。 


ぜひ、最後までご覧ください。

住宅ローン控除とiDeCoの節税額をシミュレーション

ここまで、節税ができるしくみ個人型確定拠出年金(iDeCo)と住宅ローン控除について取り上げました。 


この2つの仕組みはそれぞれ、『所得控除』と『税額控除』に当てはまります。
 


しかし、

  • 「どちらかの控除額が減らされるのでは?」
  • 「住宅ローン控除で十分なのでは?」

このように思われる方もおられるでしょう。 


では、住宅ローン控除を受けながら、個人型確定拠出年金(iDeCo)へ加入するメリットはあるのでしょうか。

2つの控除をシミュレーション:例①住宅ローン控除のみの場合

まず、個人型確定拠出年金(iDeCo)に未加入で、住宅ローン控除のみを利用する例で節税額を試算してみましょう。 


住宅ローン控除は税額控除なので、課税対象の年収に係る税金から直接控除金額が差し引かれます。


例えば、

  • 職業:会社員(企業年金なし) 
  • 課税所得:125万円
  • 配偶者:なし
  • 建物取得金額:4,000万円
  • 住宅ローンの残高:2,000万円

上記の場合において、住宅ローン控除額を計算してみます。

形態税率控除率控除期間(所得税控除の上限)
新築8%・10%1%10年400万円
中古なし1%10年200万円
住宅ローン残高の1%が控除額となるので、2,000万円のローン残高とすると、20万円分を所得税、および住民税から減算することが可能です。

上記のケースでは、
  • 所得税額:62,500円
  • 住民税額:132,500円
2つを合計しても控除額の範囲内です。つまり、住宅ローン控除が受けられる13年間は所得税・住民税額が全くかからないため、強力な節税メリットを受けられるといえます。

では、他の事例についても考えてみましょう。 

2つの控除をシミュレーション:例②住宅ローン控除とiDeCoとの併用

では今度は、さきほどの条件の一部を変えてシミュレーションしてみましょう。 

  • 職業:会社員(企業年金なし) 
  • 課税所得:350万円 
  • 配偶者:なし 
  • 子ども:なし 
  • 年齢:20歳 
  • iDeCo掛金:毎月2万5千円 
  • 住宅ローン残高:20,000,000円 

この場合、まず税額はシミュレーションによって以下のようになります。 

  • 所得税額(年間):227,100円▶51,100円の節税 
  • 住民税額(年間):325,000円▶30,000円の節税 
  • 税額合計(年間):552,100円▶81,100円の節税  

住宅ローン残高が同じだとすると、控除できる金額はさきほどと同じ20万円となり、その分を所得税から引くことができます。

   

  • 住宅ローン控除 - 所得税(年間) = 税金の残額 
  • 200,000 - 227,100 = 27,100円 
  • 内訳:所得税▶27,100円 住民税▶325,000円  

このシミュレーションの場合、ローンが多すぎたため、どちらも所得税も控除しきれず、住民税もそのまま残っています。 


ここから課税所得額の7%を控除することができますが、結果的にどちらの税金も控除しきれませんでした。 


では、逆に課税所得が250万円よりも少ない場合はどうでしょうか。 


その場合は、逆に住宅ローン控除分(20万円)が余ってしまうことになります。 


また、課税所得額が住民税控除額上限の13万5千円を下回り、住宅ローン控除における控除額そのものが減る可能性もあります。 


ここから分かるのは、以下の点です。 

  • 課税所得額に対して住宅ローン残高が少ないと、その分住宅ローン控除額が少なくなる場合がある
  • 個人型確定拠出年金(iDeCo)に加入し、課税所得額が下がることにより、住宅ローン控除の恩恵を受けきれない場合がある 

シミュレートしてみると、家計のバランスが非常に大切であることが分かります。

iDeCoや住宅ローン控除のシミュレーションはプロと一緒に

シミュレーションは自分ですることも出来ますが、iDeCoや住宅ローン減税の知識だけでなく、日本の税制度や資産運用に関する周辺知識も必要なので、やはりプロと一緒に実施するのがおすすめです。


お金のプロであるファイナンシャルプランナー(FP)なら、精度の高いシミュレーション結果を確認できるでしょう。


また、家計のバランスを見ながら、最適な方法をアドバイスしてもらえるのも、プロに相談するメリットです。


ほけんROOMでは、数多くの家計状況を分析・改善してきたベテランFPに何度でも無料で相談ができます。オンラインでの相談も可能なので、気軽に利用してみましょう。

iDeCoと住宅ローン控除で節税効果がないことも?2つを併用するデメリット

iDeCoと住宅ローン控除を併用することで得られる節税効果をお伝えしましたが、ケースによっては節税効果が出ない場合もあります。


次項以降では、2つを併用した場合のデメリットを紹介します。


メリットと比較すると大きなデメリットではないですし、該当する方も少ないのですが、iDeCoと住宅ローン控除を併用する際は、良い面と悪い面の両面を正しく把握しておくことが大切です。


ぜひ最後までチェックしてみましょう。

デメリット①iDeCoと住宅ローン控除でも節税効果がないことも

iDeCoも住宅ローン控除も、どちらも優れた節税効果を持つ制度ですが、併用する場合は注意が必要です。具体的には、住宅ローン控除で所得税・住民税額を全て控除できてしまうケースです。


このケースの場合、iDeCoをスタートしたとしても、iDeCoの掛け金に対する所得控除メリットは発揮できません。控除可能額が余ってしまうことになるので、少しもったいないと思われる方もいらっしゃるでしょう。


もちろんiDeCoの節税効果は所得控除以外にも、

  • 運用益が非課税である
  • 受取時に税金がかからない

というメリットはあるので、併用しているからといって不利益になることはありませんが、注意が必要です。

デメリット②iDeCoでの出費分は住宅ローンの繰り上げ返済に回せない

iDeCoは、老後の資産形成を目的とした制度なので、原則として60歳までは受け取ることができません。


そのため、iDeCoの掛け金を多く設定しすぎると、長い目で見ると家計負担が大きくなってしまう可能性があります。


住宅ローン控除期間を超えた14年目以降は、住宅ローンを早く返済し、ローン残高を減らしていく方が、利息分を節約することができてお得です。


しかし、iDeCoに掛け金を入れすぎていたために、自由に動かせるお金が少ない状態では、住宅ローンの繰り上げ返済に回せません。


iDeCoは途中で引き出しは出来ませんが、掛け金の出資を中止したり、減額することは可能です。


家計状況やライフプランを踏まえて、iDeCo出資と住宅ローン返済のバランスは、定期的に見直すようにしましょう。

個人型確定拠出年金(iDeCo)の税制メリットをおさらい!

今、働き盛りでまだ老後を迎えておられない方であっても、果たして将来、本当に「年金だけで生活が可能なのか?」と感じておられる方は多いでしょう。 


ただ単に生活するだけであれば年金だけでも可能、と考える方もおられます。 


しかし、老後には病気や怪我などの出費リスクが高くなりますので、年金だけでは『快適な生活』を送るには足りないかもしれません。


そこで、私達が今からできる備えとして、老後資金を事前に蓄えておく『個人型確定拠出年金(iDeCo)』に加入するという方法があります。
 


では、その個人型確定拠出年金(iDeCo)に加入することには、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。

個人型確定拠出年金(iDeCo)の2つの税制メリット

まず、個人型確定拠出年金(iDeCo)とは、保険や投資信託などの金融商品に対して投資を行い、その運用益を投資分にプラスして分配金として受け取れるしくみです。 


老後資金を蓄えておくために個人型確定拠出年金(iDeCo)に加入することには、主に2つの税制面における、以下のようなメリットがあります。 

  1. 運用益が非課税である
  2. 所得控除の対象である 

本来であれば、投資信託等への加入者が分配金を受ける場合、その分配金は課税対象となりますが、iDeCoの場合はすぐ運用に回されるために、非課税となります。 


投資における私達の受け分を、そのままプラスして老後に受け取ることができるのです。

個人型確定拠出年金(iDeCo)の控除:”最初”に引かれる

さらに個人型確定拠出年金は、所得控除の対象となる、というメリットもあります。 


私達は、それぞれ企業等から給与を受け取る際には、すでに所得税住民税などの課税が行われ、給与から差し引かれています。 


しかし給料のうち個人型確定拠出年金(iDeCo)分にはこれが適用されません。


たとえば毎月3万円をiDeCoで積み立てている方は、その3万円分が所得税が請求される前に所得控除で非課税となるので、年間で考えればかなりの金額が節税されることになるのです。

住宅ローン控除の概要についておさらい

iDeCoにおける税金の控除額を考えてみると、私達は長期間にわたってかなりの多額な税金を納めていることが分かります。 


そしてこれは、これからマイホームを購入される方が組むであろう『住宅ローン』についても同様です。 


ちなみに、私達は家をローンで購入するとき、『住宅ローン控除』を受けることが可能です。 


では、住宅ローン控除はどのくらいの控除が受けられ、適用されるにはどのような条件があるのでしょうか。

住宅ローン控除が適用される主な要件と概要

住宅ローン控除が適用されるには、以下のような条件があります。 

  • 年収:3,000万円以下 
  • ローン返済年数:10年以上 
  • 床面積:50平方メートル以上 
  • 築年数:中古一戸住宅は20年以下・マンションなら25年以下 

主にこれらの条件にかなった時、10年間にわたって1%の控除を受けることが可能です。

住宅ローンの税額控除:”直接”引かれる

この住宅ローン控除も、iDeCo加入時における所得控除と同様に収める税額が少なくなります。
 


ただ、この住宅ローン控除は、給与(所得)から非課税枠が発生するのではなく、納める住民税そのものが少なくなります。 


これは、『税額控除』という仕組みです。 

  • 所得控除:個人型確定拠出年金(iDeCo)がこれに当たる。所得額から、一定の非課税枠が発生する。 
  • 税額控除:住宅ローン控除がこれに当たる。 

この仕組みを活用すれば、長期間で大きな節税を行うことができるのです。

住宅ローン減税額が減る場合の対策

すでに住宅ローン控除されている方が、個人型確定拠出年金(iDeCo)への加入を考える際には、今回のようなシミュレーションを事前に行うことが非常に重要です。 


個人型確定拠出年金(iDeCo)に加入することへの具体的なメリットやデメリットを知ることができるからです。 


住民税の住宅ローン控除額が課税所得額の7%ですから、シミュレーションしてみた結果、もしかすると課税所得額が減ることにより控除額が減少してしまうかもしれません。 


ただし、これから住宅ローンを組むという方には、所得額を増やすという方法があります。 


夫婦ならば、両方の名義だけで住宅ローンを組むことを考えていたのであれば収入額を夫婦で合算して考えることができます。

参考:iDeCoや住宅ローン控除以外にも使える控除

参考までに、iDeCoや住宅ローン控除以外にも使える代表的な所得控除制度を紹介します。


適用条件や、所得控除額はそれぞれ細かく決まっており、年末調整や確定申告での手続きが必要となります。


気になる所得控除があれば、調べてみましょう。

所得控除制度概要
医療費控除1年間に支払った医療費が10万円を超える場合に、超過分を所得控除する
生命保険料
・地震保険料控除
生命保険や地震保険に加入している場合に、
保険料分を所得控除する。
扶養控除納税者と生計を共にする扶養家族がいる場合、
年齢や同居有無に応じて38~63万円の所得控除を受けられる。
配偶者控除納税者の配偶者が一定の所得条件を満たす場合に、
年齢や所得金額に応じて所得控除が受けられる
寄付金控除ふるさと納税や国・地方自治体・公益法人などに対する
寄付金額を所得控除する。

各種税制優遇制度を最大限に利用することで、税額負担を軽くすることができます。


ぜひ活用してみてください。

マッチング拠出が可能ならフル活用しよう

マッチング拠出とは、企業が出資する企業型確定拠出に掛け金を、従業員個人が掛け金を上乗せできる制度です。


マッチング拠出は、iDeCoと同じように

  • 掛け金の所得控除
  • 運用益が非課税
  • 受取時に税金がかからない

の税制優遇があるので、利用しない手はありません。


ただし、会社によってマッチング拠出を許可しているかどうかや、出資できる掛け金の上限額は異なります。まずは、勤務先に確認し、マッチング拠出可能であれば最大限に活用しましょう。


なお、マッチング拠出も原則として60歳にならないと引き出すことは出来ません。当面のお金のやりくりに困ることのないよう、事前にシミュレーションを行うことも大切です。

まとめ:減税効果はひとそれぞれ!シミュレーションをしてみよう

ここまで、個人型確定拠出年金(iDeCo)と、住宅ローン控除における節税について、シミュレーションを行いながら扱ってきましたが、いかがでしたでしょうか。 


今回の記事でポイントとなるのは、

  • 個人型確定拠出年金(iDeCo)に加入することにより、受け取り分や運用分を節税しながら老後に備えることができる
  • 住宅ローン控除とは、ローンの金額によって一定の割合分を所得税から控除することができる制度
  • 個人型確定拠出年金に加入することによって、住宅ローン控除額が減ることはあり得るが、多くの場合は加入によりさらなる節税が可能
  • 減税効果は収入やローン金額など、家計によって異なるので、あらかじめシミュレーションをしておくことは非常に大切

以上の4点です。


今回シミュレーションしたように、節税効果は状況によって大きく変わります。


今現在、住宅ローン控除が適用となっている方でも、個人型確定拠出年金(iDeCo)への加入によってさらに節税を行うことが可能ですから、老後の生活に備えるための個人型確定拠出年金(iDeCo)と、住宅ローン控除制度は十分両立することが可能ということが分かります。


すでに住宅ローン控除を受けておられる方が個人型確定拠出年金(iDeCo)に加入する際は、あらかじめシミュレーションして、どのくらい節税効果が得られるのかを把握しましょう。


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