無職期間は年金支払いが免除?失業中や退職後の厚生・国民年金を解説

現在無職の方や、失業や退職によって無職になった方の年金支払いはどうなるのでしょうか?今回、無職の場合の国民年金や厚生年金保険料の支払いは減免されるのかや、失業特例免除や退職特例免除の手続き方法・期間、無収入のため年金が払えない場合の対処法を解説します。

監修者
株式会社Wizleap 代表取締役。東京大学経済学部で金融を学び、金融分野における情報の非対称性を解消すべく、マネーキャリアの編集活動を行う。ファイナンシャルプランナー証券外務員を取得。

無職だと、年金支払いが免除される?申請方法や免除の期間も解説



普段の生活で、国民年金の手続きをする機会はめったにありませんよね。


退職後や失業中で無職という状況だと、次の仕事探しが優先で、年金のことまではなかなか気が回らないのではないでしょうか。
 


しかし、無職になったときこそ、年金の手続きをしっかりしておくことが重要です。 


そのため本記事では 

  • 無職になったときに必要な、年金の手続きと方法
  • 失業中に使える、保険料の軽減措置

をご紹介しています。


先が見えない状況で、「年金払えないかもしれない」「どうして無職なのに、払わないといけないのか」と感じるかもしれません。


本記事では、免除を受けた場合の保険料は具体的にいくらで、将来の年金にどのように影響するかについても解説しています。 


年金について、しっかり理解しているという方は少ないものです。本記事を、みなさまの疑問や不安の解決にお役立てください。

失業や退職で無職になったら、国民年金に自分で加入する必要あり

退職後から、次の仕事が見つかるまでの無職期間には、自身での国民年金の加入手続きが必要です。では、具体的に何をすればいいのでしょうか。
 


まずは、自分が今入っている年金制度と、被保険者区分について確認しましょう。その上で、国民年金に加入する場合、どこへ行って、どのような手続きをすればよいかを説明いたします。

日本の年金制度は「国民年金」と「厚生年金」の2種類

日本に住む20歳以上の方なら、必ず加入しなければならない公的年金制度。みなさんは、「国民年金」「厚生年金」の2種類の制度のうち、どちらかに加入することになります。 


国民年金は、「基礎年金」とも呼ばれます。20歳以上60歳未満のすべての人が入る、基礎の部分です。 


厚生年金は、この国民年金(基礎年金)にプラスして、さらに手厚い年金がもらえる制度です。よって、厚生年金は国民年金を含んでいます。 


厚生年金に入ることができるのは、会社にお勤めの方や公務員の方です。保険料は給与から天引きされ、勤務先が本人の代わりに納めてくれます。 


自営業や無職の方など、厚生年金に入ることができない方は、国民年金のみに加入します。厚生年金のように、会社が手続きをしてくれるわけではないので、自分で手続きをし、保険料を納める必要があります。

無職になると、年金の被保険者区分がかわる

公的年金制度に加入している人(被保険者)は、3種類の被保険者区分に分けられます。

被保険者区分特徴どんな人が入るか
1号被保険者
国民年金のみ加入自営業、学生、無職など、
2号・3号被保険者以外
2号被保険者
厚生年金に加入会社員・公務員
3号被保険者
2号被保険者に
扶養されている、
年収130万円未満の
配偶者 
会社員・公務員世帯の
主婦(主夫)

会社員の方は退職すると、「2号被保険者」の資格を失います。そのため、次の会社で厚生年金に加入できるまでの無職期間には、「1号被保険者」または「3号被保険者」への切り替えをしなければならないのです。

国民年金に加入する手続き方法・必要書類

いつまでに、どこへ 

退職後14日以内に、お住まいの市区町村の役所の窓口へ行きます。申請書類をHPからダウンロードし、郵送で手続きができる自治体もあります。 


必要書類

  • 年金手帳または基礎年金番号通知書
  • 印鑑
  • 退職日がわかるもの(雇用保険の離職票、会社から発行された退職証明書など)
  • マイナンバーカードや通知カード(年金の書類にも、マイナンバーを求められます。)
  • 本人確認書類(運転免許証やパスポートなど、公的な書類)

平成29年より、基礎年金番号とマイナンバーの紐付けが実施されています。

マイナンバーの提出が難しい場合、市区町村の役所の窓口に、事前に相談することをおすすめします。

日本年金機構:マイナンバーに関するお知らせ


前の勤務先は「退職した社員が、2号被保険者ではなくなりました」という年金事務所への届出まではしてくれます。その後の、国民年金の1号被保険者となるための手続きを、自分で行います。


なお、退職後に3号被保険者になる場合については、後半の「失業・退職以外の無職の場合、年金支払いはどうなる?」をご覧ください。

年金支払いが困難なら「国民年金保険料免除・納付猶予制度」を利用

国民年金(1号被保険者)の保険料は、16,520円/月(令和6年、日本年金機構HPより)です。


急な失業で充分な蓄えがない、仕事が決まらず無職で無収入という方には、負担に感じる金額です。


しかし、保険料の納付は、たとえ失業期間中でも、法律で定める義務。払わないままでいると、特別催告状による厳しい支払いの督促を受けるおそれもあります。


収入が一定額以下になった方は、保険料の減免や、納付猶予制度が使えます。国民年金の加入手続きとあわせて、確認しておきましょう。

保険料免除・納付猶予の対象となる年収と免除の種類

前年もしくは前々年の世帯の収入に応じて、保険料の支払いの軽減が認められます。

免除の種類前年の所得
(1月〜6月までの申請の場合、前々年所得)
全額免除(扶養親族等の数+1)×35万円
+
22万円
3/4免除78万円
+
扶養親族等控除額
+
社会保険料控除額等
半額免除118万円
+
扶養親族等控除額
+
社会保険料控除額等
1/4免除158万円
+
扶養親族等控除額
+
社会保険料控除額等
納付猶予(扶養親族等の数+1)×35万円
+
22万円

「前年の所得」とは、たとえば令和2年7月の申請なら、令和1年1月〜12月までの所得のことです。令和2年6月の申請であれば、平成30年1月〜12月までの所得で計算されます。


なお、失業や退職を理由とした申請であれば、失業による特例免除の制度(退職特例免除)が利用できます。失業による特例免除では、退職(失業)した本人の前年所得(前々年所得)はゼロで計算されます。免除期間は、退職(失業)した月の前月から、翌々年の6月までです。


ただし、免除や猶予の審査は、世帯の所得で行います。共働き世帯であれば、配偶者の3号被保険者になれないかも検討しましょう。

10年以内に追納すれば将来の年金額が減額されることはない

保険料の減免を受けた場合、65歳になってから受け取れる老齢基礎年金は、免除の種類と期間に応じて減ってしまいます。


ただし、免除されていた分の保険料を後から追加で支払えば、全額納めた時と同じ額の年金をもらうことができます。期限は、免除から10年以内です。


納付猶予の場合も同様です。納付猶予は、「支払わなければいけない保険料は0円だが、未納扱いにはしませんよ」という特例です。そのため、10年以内の保険料の追納により、将来の年金額の減少を防ぐことができます。

保険料免除・納付猶予の手続き方法と必要書類

国民年金に入るときと同様、お住まいの市区町村の窓口で手続きができます。 


失業等による特例免除の申請をする場合は、 

  • 雇用保険受給資格者証のコピー、または雇用保険の離職票等のコピー
  • 年金手帳または基礎年金番号通知書
  • 印鑑
  • マイナンバーカードや通知カード 
  • 本人確認書類(運転免許証パスポートなど、公的な書類) 

雇用保険の離職票は、失業保険の手続きにも使用します。雇用保険受給資格者証は、失業保険の受給が決まったとき、ハローワークでもらえる書類です。


自治体や状況によって、求められる書類が多少変わります。窓口に行く前に、自治体の公式HPや電話で必要な書類を確認しておくとスムーズです。


失業中以外の理由で申請をする場合は、所得を証明する書類が必要となることがあります。こちらも、お住まいの自治体に事前に問い合わせるのが、確実です。

失業・退職以外の無職の場合、年金支払いはどうなる?

ここまでは、会社などで正社員として働いていた方向けに、無職になった場合の年金の手続きについて説明してきました。


しかし、退職や失業以外の理由で、無職になったという方もいます。その場合、何らかの年金の手続きは必要なのでしょうか。


事例ごとに、解説していきます。

学生の場合は学生納付特例を利用する

20歳以上の学生の方も、国民年金の1号被保険者として、保険料を納める義務があります。健康保険は家族の扶養に入っていたとしても、年金は別です。 


学生の方は「学生納付特例」を申請しましょう。在学中は、年金の支払いが猶予される制度です。 


特例を使うことができるのは、下記の方です。

  • 学生本人の所得が、以下の額より少ない:118万円+扶養親族等の数×38万円+社会保険料控除 
  • 以下の学校に通っている:大学・大学院・短大・高校・高等専門学校・特別支援学校・専修学校および各種学校・一部の海外大学の分校(学生証や在学証明が必要です) 
  • 夜間や定時制、通信課程に通う学生でも可

学生時代に猶予してもらった保険料は、10年以内に追納することもできます。社会人になってから保険料を追納すれば、将来の年金額を増やすことができます。

主婦や扶養内で働いている人は年金を支払う必要はない

国民年金の3号被保険者は、保険料を納めなくてもよいとされています。2号被保険者(会社員・公務員)に扶養されている、年収130万円未満の配偶者のことです。


3号被保険者になる手続きは、2号被保険者である配偶者の職場で行います。結婚後に退職し主婦になった、フルタイムの仕事を辞めて扶養内のパートを始めたというときは、3号被保険者に該当することになります。配偶者を通じて、勤務先に手続き方法を問い合わせましょう。


ただし、1号被保険者の配偶者は、年収が一定以下でも、3号被保険者になることはできません。会社員だった方が退職して1号被保険者になった場合、3号被保険者であった扶養家族の妻や夫も、1号被保険者への切り替えが必要になります。


扶養家族がいる方の退職後の国民年金加入は、この点も注意してください。

障害者の場合は法定免除制度がある

障害がある方は、国民年金の保険料の支払いが免除されます。 


対象となる障害のレベルは、障害基礎年金障害年金(2級以上)を受けている方です。


こちらも、お住まいの市区町村の役所での申請が必要です。障害年金の手続きの際は、この国民年金の免除申請の漏れがないかも、チェックしましょう。 


免除のため、失業や経済的な理由での免除と同じように、将来もらえる老齢基礎年金の額は減ってしまいます。こちらも、追納により補うことができます。 

免除申請する際のデメリットとは?

失業等による保険料免除を受けると、将来受け取ることができる老齢基礎年金が減ってしまいます


20歳〜60歳の40年間、つまり12ヶ月×40年=480ヶ月分すべて年金を払った場合、65歳からもらえる老齢基礎年金は、781,700円です。(令和2年4月分より)


この40年の間に、保険料の免除を受けている期間があると、老齢基礎年金は満額781,700円よりさらに少ない額となります。

将来貰える年金額が減る。減額シミュレーション

では、実際にいくらぐらい減ってしまうのでしょうか。


たとえば失業期間中の12ヶ月間、失業特例免除を受けたとすると、下記のような結果になります。

免除の種類減額される年金の額もらえる老齢基礎年金の合計
全額免除9,771円
781,700円ー9,771円
771,929円
3/4免除7,328円
781,700円ー7,328円
774,732円
半額免除4,885円
781,700円ー4,885円
776,815円
1/4免除2,442円
781,700円ー2,442円
779,258円
(参考)

納付猶予・
未納の場合
19,542円
781,700円ー19,542円
762,158円 

ちなみに、基本の計算式は、こちらです。

  • 減額される年金の額=老齢基礎年金の満額×(免除された月数/480ヶ月)×免除期間中分の減額割合

免除期間中分の減額割合です。

免除の種類減額割合
全額免除全額納めたときの1/2
3/4免除
全額納めたときの3/8
半額免除全額納めたときの2/8
1/4免除全額納めたときの1/8
納付猶予
支給なし

日本年金機構HP:「保険料免除・納付猶予された期間の年金額」を基に算出)


全額免除の場合だと、「781,700円×(12ヶ月/480ヶ月)×1/2=9,771円」という計算になります。

障害年金がもらえなくなってしまうことも

障害年金を受けるための条件に、以下の事項があります。「初診日」とは、障害の原因になったケガや病気の初診日を指します。

  • 20歳〜初診日の前々月までの全期間の3分の2以上、保険料を納めていること
  • 初診日の前々月までの1年間に、保険料の未納がないこと

ここでの「未納」に、失業等による保険料免除を受けている期間は含まれません。


申請により全額免除が認められていた期間は、実際に払った保険料は0円でも、障害年金の受給に必要な「保険料を納めていた期間」としてカウントしてもらえます。 


減額のシミュレーション結果を見て「少々の期間なら、年金を払わなくても大丈夫だろう」という油断は禁物です。


支払いが難しいときの免除申請は、必ず行いましょう。

まとめ:無職なら国民年金への加入が必須!無収入の場合は猶予制度も

退職後に必要となる年金の手続きや制度について説明してきましたが、いかがだったでしょうか。


今回の記事のポイントは

  • 会社員から無職になったら、国民年金に入る手続きをしなければならない
  • 国民年金には、保険料の軽減制度がある 
  • 退職や失業により収入が減少した場合の特例もある
  • 保険料の免除制度は、将来受け取る年金のことを考えても、メリットが大きい 
でした。

 「年金払えないし、それどころではないから」と、支払いをしないでいるのは危険です。滞納するつもりはなくても、忙しくて手続きをしそびれた結果、忘れた頃に特別催告状が届き、びっくりするケースも珍しくありません。

国民年金の手続きは、無職になったとき、必要になったタイミングで行うのが一番です。過去の無職期間の手続き漏れが心配になった方は、早いうちに、お近くの年金事務所に相談しましょう。

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