別居でも条件を満たせばOK!別居の親を扶養控除に入れる方法を解説

何かあると困るから、年をとった両親を扶養に入れておきたい……。そうしたいのは山々でも、実際に同居できるとは限りません。しかし条件さえ満たせば、別居していても親を扶養に入れ、控除を受けることができます。この記事では、別居の親を扶養に入れ、控除を受ける方法などを解説します。

監修者
株式会社Wizleap 代表取締役。東京大学経済学部で金融を学び、金融分野における情報の非対称性を解消すべく、マネーキャリアの編集活動を行う。ファイナンシャルプランナー証券外務員を取得。

別居の親と扶養控除について解説

扶養控除とは各世帯の収入を担っている世帯主が、その収入によって生活を支えている家族を「扶養」関係とすることにより、節税することができる制度です。


しかし、扶養関係にあるのが必ずしも同居関係にある家族とは限らないので、別居していても子供が高齢の親を扶養家族にする場合は適用されないのか?と思われる方も多いでしょう。


そこで今回は、

  • 別居している親を扶養に入れることは可能か?
  • 別居している親を扶養に入れるための条件とは?
  • 別居している親を扶養に入れるメリットとデメリットは?
  • 実際に別居している親を扶養に入れる方法とは?
主にこれらの点を取り上げます。

この記事をご覧いただければ、「扶養」という法的な制度において同居しているかそうでないかがどのように影響するかという点を理解していただけるでしょう。

ぜひ最後までご覧ください。

別居していても両親を扶養に入れることは可能


誰かを養う人がいれば、必ず養われる側の人もいます。


養っている側は養われる側を法的に「扶養に入れる」ことにより、どちらも様々なメリットを受けられます。  


誰もがイメージしやすいのは、同じ家に住んでおり、収入源となっている夫が妻や子供を養って(扶養して)いるという関係性でしょう。


現代では様々な働き方が可能となったため、夫だけでなく妻や子供の収入が主な収入源となっている場合もあります。


では、扶養したい親が同居しておらず別居している場合は、どうなるのでしょうか。結論から言えば、たとえ別居していても子供が両親を扶養に入れることは可能です。


それが可能な根拠と理由を、次から取り上げていきます。

税制上の扶養と健康保険上の扶養の違いを理解しよう

まず扶養には、2種類あるということを覚えておきましょう。


いわゆる法律上の「扶養」には、

  1. 税制上の扶養
  2. 社会保険(健康保険)上の扶養
この2種類があります。

どのように違うのかというと、1の「税制上の扶養」は主に扶養する側が所得税・住民税等の税金に関する優遇を受けられるものです。

それに対して2の「社会保険上の扶養」は、主に健康保険や厚生年金に関して扶養される側が優遇を受けられるものです。

もちろんこれら2つの扶養に関する優遇を同時に受けるためには、両方の手続きが必要となります。

健康保険上の扶養の方が条件が若干厳しい

税制上の扶養および社会保険上の扶養それぞれは、手続きをすれば誰もが入れるわけではなく、実際にはいくつかの条件があります。


この条件に関しては後ほど詳しく説明しますが、端的に言えば税制上の扶養および社会保険上の扶養、どちらであっても別居の親を扶養に入れることは可能です。


ただし、納税者か配偶者か、扶養状態にあるのが「どちらの親なのか?」という基準で見た場合、健康保険上の扶養のほうが若干条件が厳しくなっています。

また大切な点として、扶養されている側がすでに国民健康保険に加入している場合、社会保険上の扶養に加入させることはできません

注意:扶養控除の控除額は同居の方が多い

基本的に扶養控除の対象となる親族がいる場合、扶養における控除額は38万円となります。


税金を計算するための年収額から、満額で38万円を差し引くことができるのです。


たとえ扶養している親が別居していても同じ金額が控除されますが、実は同居しているかしないかで、控除額が変わります。


どのように変わるかというと、

  • 親の年齢が70歳以上であり、同居している:控除額は58万円
  • 親の年齢が70差以上であり、同居していない:控除額は48万円

このように扶養対象であり70歳以上の親族が同居していると、控除額が通常より20万円もアップします。


70歳以上の「老人扶養親族」と分類される親族がいる方は、この点をよく覚えておきましょう。

別居の親を扶養に入れることができる条件

扶養関係とは、必ずしも同居している必要はなく、定義上の「扶養」でも良いという点を取り上げてきました。


ここで根本に立ち返ってみると、そもそも扶養に入る側は「扶養されるそれなりの理由」がなければならず、その主な基準が所得(年収)額です。


この所得額によって扶養に入れるか入れないかが決まるのですが、実際に別居している親を扶養に入れる場合、扶養される側の親にはどのような条件が求められているのでしょうか。


その条件について取り上げていきます。

扶養控除の条件(税制上の扶養)

まずは「税制上の扶養」における条件について考えてみましょう。


この場合は扶養する相手が、
 

  • 1年間の所得額が38万円(給与のみで103万円)以下であること 
  • 納税者(収入源)と生計を一にしていること
  • 親が納税者の専業従事者ではないこと
これらの条件を満たしている必要があります。それぞれの条件に関して詳しく見ていきましょう。

1年間の所得額が38万円(給与のみで103万円)以下であること 

これはそのまま、扶養に入れる所得額の基準が38万円であることを表しています。

これがいわゆる「103万円の壁」と言われるのは、給与による収入がある場合は給与所得文は控除が受けられるからです。

また、すでに年金を受給している65歳以上の方の場合は、年間の所得額が158万円を超えなければ扶養に入れます。

納税者(収入源)と生計を一にしていること

ここで言う「生計を一にする」というのは、必ずしも同居状態である必要はありません。

たとえば子供側が定期的に仕送りを送ることにより、親の生活を根本的に支えている状態であれば、「生計を一にしている」と認められます。

逆に言えば、たとえ同居していても「生計を一にする」点で基準に満たない場合は扶養に入れることはできません。

親が納税者の専業従事者ではないこと

何らかの事業において、事業主が6カ月以上事業を共に行った(手伝った)人のことを「専業従事者」といいます。

もし、子供が行っている事業において、親が専業従事者となっている場合には、親が扶養に入ることはできません。その場合扶養には入れない代わりに、「専業従事者控除」の対象となります。

被扶養者の条件(健康保険上の扶養)

では、社会保険(健康保険)上の扶養はどうなのでしょうか。 

「社会保険上の扶養」における条件は扶養する相手が、
 
  • 1年間の所得が130万円以下であること 
  • 親の収入が扶養者からの仕送り額未満であること
基本的にこれらの条件を満たしている必要があります。次はそれぞれの条件について見ていきましょう。

1年間の所得が130万円以下であること 

納税者の健康保険に加入するには、一定の収入額を下回っている必要があります。これも「130万円の壁」と言われることが多い扶養における条件です。

要は扶養先である親の所得が130万円を超えなければ、健康保険上の扶養に入ることができる、ということです。

親の収入が扶養者からの仕送り額未満であること

所得が130万円であることの他にも金額的な条件があり、それが「仕送り額」に関する条件です。

扶養に入るためには子供が親の生計を支えていることを証明する必要がありますが、その基準の一つが、子供が毎月親に贈っている仕送りの金額が、親の収入(月収)よりも多くなければならない、という点です。

この仕送りに関する条件と、所得額に関する条件を同時に満たしていれば扶養に入ることができます。

別居の親を扶養に入れるメリットとデメリット

ここまでは、別居している親でも扶養に入れることは可能であるという点を取り上げてきました。


では、すでに親に対して仕送りをしている方が、なぜわざわざ「扶養」であることを税制上の手続きによって証明する必要があるのでしょうか。


次から、別居の親を扶養に入れるメリットについて取り上げていきます。

メリット:税金や保険料を節約できる

別居している親を扶養に入れる1つ目のメリットは、節税になるという点です。


親族の生計を支えており「扶養」している場合、その扶養している親族の人数に応じて、自分の収入額から控除ができます。


その控除額は以下の通りです。

区分控除額
扶養親族(16歳~)38万円
特定扶養親族(19~23歳未満)63万円
老人扶養親族(70歳以上・同居)58万円
老人扶養親族(70歳以上・非同居)48万円

参考:扶養控除額の金額(国税庁)


これは一人あたりの控除額ですから、親2人に仕送りを贈っている場合、人数分の控除を受けることができます。結果的に、扶養をしている側は所得税や住民税において大幅な節税が可能なのです。


また、この「税制上の扶養」に関しては親が75歳以上という高齢であっても、節税のメリットを受け続けることができます。

デメリット:75歳以上(後期高齢者)は負担が増える可能性がある

親が別居していても48万円の所得控除を受けられる扶養制度ですが、実は注意点もあります。


それは、親の年齢が75歳以上になると、社会保険上の扶養からは抜けて「後期高齢者医療制度」への加入が必要となるからです。


親が扶養から抜けるとなると、今まで納税者が支払っていた保険料を、親が自分自身で支払わなければならなくなります。


また、健康保険から抜けるので医療費控除(家族の医療費を合算して控除対象にできる)の対象外にもなります。

参考:扶養に入れるなら12月中がベスト

年末にはどの会社も年末調整を行いますが、その時期と扶養へ加入する時期が被った場合、どうなるのでしょうか。


扶養に関しては、たとえ12月に加入したとしても1カ月分の負担で次期1年分の控除を受けることができますので、税制上はデメリットはありません。


ただし、扶養人数が増えたのが年末調整後である場合は、増えた扶養分が含まれていないため、年末調整をやり直す必要があるかもしれません。


年末調整のやり直しを行えなかった場合は、還付を受けるために納税者本人が2〜3月に確定申告を行う必要があります。

別居の親を扶養に入れる方法

税制上のメリットが大きい「親を扶養に入れる」という方法ですが、ただ仕送りをしているという事実だけでは扶養には入っていません。


きちんと所定の手続きを行うことで、税制上も親が扶養に入っていることになります。では、その手続きはどのように行うのでしょうか。


税制上の扶養および社会保険上の扶養、それぞれの手続き方法について最後に紹介していきます。

親を扶養控除に入れる方法(税制上の扶養)

まず、所得税や住民税でメリットがある「税制上の扶養」に関しては、どのような手続きが必要なのでしょうか。


まず必要な書類として挙げられるのが、

  • 扶養控除等申告書
  • 扶養事情理由書
  • 所得証明書
  • 振り込み通知書や現金書留等、仕送り額が証明できる書類
  • (年金受給者であれば)受給額が分かる書類
これらの書類です。

場合によってはさらに通帳のコピーや課税証明書等が必要にになる場合もあります。

また、仕送りの証明は「直接〇〇円を手渡した」という口頭では全く証明できず、必ず上記に挙げた「証明できる書類(またはデータ)」が必要となる、という点も覚えておきましょう。

会社に勤めている方は、年末調整前に書類を会社に提出して手続きを行ってもらうことによって親を扶養に入れることができます。

年末調整に間に合わなかった場合は、自分で確定申告を行う際に同時に扶養控除の申告も行います。

親を被扶養者にする方法(健康保険上の扶養)

次は、「社会保険(健康保険)上の扶養」に関する手続き方法です。


このとき必要になる書類は、

  • 被扶養者(異動)届
  • 被扶養者の住民票
  • 被扶養者の戸籍謄本
  • 振り込み通知書や現金書留等、仕送り額が証明できる書類
主にこれらの書類を会社に提出する必要があります。

親を実際に扶養していることを証明するための書類が必要なのは、「健康保険上の扶養」手続きをする際と同様です。

年金を受給している親が扶養に入る場合は、さらに年金の受給額が分かる年金振込通知書等の書類が必要となります。

これは協会けんぽにおける健康保険の扶養手続きに必要な書類の一例ですが、書類の様式は加入している健康保険組合のルールに則る必要がありますので、各々が必ず確認しておきましょう。

別居の親と扶養控除についてのまとめ

今回は「別居している親を扶養に入れる」をテーマとして様々な点を取り上げてきましたが、いかがでしたでしょうか。


この記事のポイントは、

  • 別居している親でも扶養に入れることは可能である
  • 親が扶養に入るためには定期的な送金や所得が一定額を下回っていることが必要
  • 親を扶養に入れると節税になるが、75歳以上になると親側の負担が増える
  • 税制上の扶養・社会保険上の扶養どちらも必要書類を会社に提出する必要がある
以上の点です。

法律上の「扶養」に関しては親子が同居しているかどうかよりも、実際に家計を支えているという事実の方が重要です。

特に収入が多い方にとっては高齢の親が扶養に入るメリットが大きくなるため、別居でありながらも仕送りをしている方は手続きを行いましょう。

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