福祉大国スウェーデンの年金制度の仕組みや特徴を日本と比較して解説

福祉大国スウェーデンの年金制度の仕組みや特徴を日本と比較して解説-サムネイル画像

世界中で年金問題が課題である今、1999年に画期的な年金改革が行われたスウェーデン。その制度は世界で絶賛、世界年金ランキングの上位にいます。今回はスウェーデンの年金制度の仕組みや特徴、過去の年金制度改革、今後の課題をわかりやすく解説します。日本とも比較します。

監修者
株式会社Wizleap 代表取締役。東京大学経済学部で金融を学び、金融分野における情報の非対称性を解消すべく、マネーキャリアの編集活動を行う。ファイナンシャルプランナー証券外務員を取得。

スウェーデンの年金制度について仕組みや特徴を解説

スウェーデンは社会保障が充実している国として頻繁に論文などにも引用されますが、年金制度の仕組みはどうなっているのでしょうか?


どこの国でも年金問題が大きな課題となっている中、1980年頃から少子高齢化を予測し公的年金制度の改革を行ったスウェーデンは、世界から絶賛される年金制度で少子高齢化だけでなく財政の安定にも成功しました。


一方で、首相が「75歳まで働いて欲しい」と発言したことで、年金制度への不安が伺えます。また、長寿命になっているため年金の支給開始年齢を引き上げるなどの課題も出てきています。


ここでは、スウェーデン年金制度の

  • 仕組みや特徴
  • 年金制度の問題点や今後の課題

について日本の年金制度と比較しながらわかりやすく解説します。


また、スウェーデンで働いていた、住んでいた方の年金問題についても説明しますので、是非最後まで読んでみてください。

スウェーデンの年金制度の仕組み・特徴と年金制度改革とは?

スウェーデンの年金制度は1999年に大きな改革が行われました。 


改革以前のスウェーデンの公的年金制度は、毎年2%以上実質経済成長を続けていれば維持できるとされていました。

しかし1980年代のバブル崩壊や1990 年代の金融機関の経営破綻などにより景気が悪化、それに連鎖した人口の高齢化や少子化の進行により、国民は年金制度の継続に危機意識を持ちました。


 そこで、与野党含めた当時の主要政党全てが参加して10年以上にわたる歳月かけて制度改革が行われました。

超党派で話し合ってできあがった公的年金制度は、政権争いの対象となることなく、世界各国から評価される公的年金制度に仕上がりました。 


その特徴をいくつか挙げてみましょう。 

  • 制度としては会社員、自営業、公務員の区別なく所得比例年金制度に一元化されました。 
  • 所得比例年金制度の勘定は賦課方式部分と、拠出建て方式2階建てになっています。
  • 所得比例年金制度は基本的に現役時の保険料拠出実績が給付にも比例して反映する制度設計になっています。 
  • 被保険者期間や所得が低かったことが原因で、年金給付額が一定の水準に達しない人や無職の者、主婦には、税を財源とした「最低保証年金」が支給されます。
 そして、制度根底に流れる大きな特徴として、どの世代の国民にも分かりやすく、より勤労意欲を高める内容となっています。

スウェーデンの年金制度改革の概要と効果

次に、1999年実施の年金制度改革具体的な施策によって、どのような効果が生まれたのかをみてみましょう。 

まず、保険料の納付は、会社員、自営業、公務員の区別なく、将来にわたり年間所得の18.5%に固定しました。(ただし自営業者は全額自己負担で、被用者は労使一定割合の負担)

このうち16%分は国の管理する年金基金で賦課方式による財源となり、残りの2.5%は政府の管理下で民間が運用するファンドなどから個人が運用先を選択することができます。


保険料を固定したことで、現役世代は未来の保険料の見通しが立つことになり、負担感や持続性への不安軽減の効果が見られました。

また拠出建てにしたことで、納めた保険料に見合った給付が受けられることになり、世代間の不公平感を和らげることにもなりました。 


また被保険者でいられる年齢の上限が無いため、収入があれば何歳でも保険料を納め続けて給付額を増やすことができ、受給年齢を遅くすることで、年金額を高くすることもできます。

長く働いて保険料を多く納めるほど年金も増えるため、公平で納得でき、働く意欲を高めることに繋がりました。

年金の受給額・年金額はいくら?いつから受給できる?

スウェーデンの公的年金の支給開始年齢は61歳以降いつでもよく(最低保証年金は65歳から)、家計に合わせて、柔軟な受給方法をとることができるようになっています。

現役の頃収入の少なかった自営業者などでも長く働き続けることで年金の受給額を増やすことも可能です。 


受給要件の最低加入期間は所得比例年金にはありません。

最低保証年金部分についてはスウェーデンに3年以上居住していることが必要で、居住年数に応じて増えていき、25歳以降に40年居住で満額になります。 


基本受給額の水準の参考として、2016年12月現在の年金受給者の最低保証年金を含む平均年金額を見てみると、男子13,400SEK(スウェーデン・クローナ)、女子10,300SEKとなっています。

これは現役世代の手取り収入額(ボーナス込み)と比較してどのくらいの割合かを示す「所得代替率」で考えると、受給開始年齢が65歳のままの場合、基本シナリオによると1951年生まれで48%、2016年生まれで38%になります。

 出所:公益財団法人年金シニアプラン総合研究機構 年金と経済 


遺族年金や障害年金については、保険料負担が給付に反映する老齢年金の方式とは性格が違うため、別制度として分離しています。 

スウェーデンの年金制度の日本への導入できる可能性は?

改革により世界に高く評価される制度に仕上がった年金制度を、日本もお手本として導入できる可能性はあるのでしょうか? 

そのためには前提条件となるスウェーデンと日本の違いを認識する必要があるでしょう。 


まず年金制度を支える側の人口構成についてみてみます。1人の女性が生涯に産む子どもの数にあたる合計特殊出生率は、2016年で比較すると、スウェーデンのは1.85人、日本は1.44人です。

参考:こども家庭庁


子育て世代への経済的支援だけでなく、保育や育児休業制度などの支援を政策で後押ししたおかげで、スウェーデンの出生率は改善傾向にあります。

また、日本の女性が結婚後主婦となり仕事から離れるのに比べ、スウェーデンの女性にはそれがほとんどなく、女性の就業率が高いのです。


少子化とあわせて語られる高齢化も、両国の将来予測には違いがみられます。

2050年で比較すると両国とも上昇はしますが、日本は38.8%、スウェーデンは24.9%とスウェーデンのほうが、緩やかな上昇になっています。


加えて財源を確保するための国民の税負担率を見てみると、日本は22.7%に対してスウェーデンは47.5%(2011年比較)で、約2倍の負担となっていて、社会保障制度を充実させるための税基盤を築くには、国民はそれなりの負担を覚悟しなければならないようです。

スウェーデンの年金制度も崩壊する?問題点や課題について

日本にスウェーデンの年金制度を導入するための前提条件は、そのままスウェーデンの年金制度を維持するための条件とも言えます。


スウェーデンでは2012年にラインフェルト首相が年金給付の増大が国家財政を圧迫していることを背景に、年金支給開始年齢を75際に引き上げることに触れ、国民の猛反発を受けけました。

1999年の改革から10年程度での行き詰まりに国民の年金制度への不信感が漂いました。 

ただ、このラインフェルト首相の発言を読み解くと、別な側面も含む内容でした。


スウェーデンでも平均寿命は今後延びていことが予測され、2人に1人は100歳まで生きるようになるとも言われています。

年金制度の前提条件を超えた長寿社会になれば、制度は成り立たなくなるでしょう。


ラインフェルト首相のメッセージには、社会福祉を維持するために元気な高齢者には働き続けてもらい、社会も多様なキャリアをもつ高齢者を受け入れる体制を整えていきたいという働き方へのメッセージも込めて年金支給開始年齢引き上げに言及したと考えられます。


また、年金制度には移民問題も関係しています。人道的立場で移民の受け入れをしてきたスウェーデンは移民も同様の社会福祉が受けられるようにしています。それが国家財政の悪化の一因ともなり、労働目的の移民によるスウェーデン国民の失業もあわせて反発の的となっています。

まとめ:スウェーデンの年金制度の仕組みと特徴


スウェーデンの年金制度は、わかりやすく世代間の公平性を保てる成功例として世界的に高い評価を受けています。ただその制度維持には、少子高齢化に対する政策の後押しや、財源確保のための国民の高い税負担が前提条件になっているということがわかりました。 


スウェーデンの年金制度に日本が学ぶ点は多くありますが、両国の前提条件の違いを考慮することや、付と給付を正しく行っていくための社会基盤の整備をすることも日本の年金制度の維持向上のためには必要になってくるでしょう。


最後にスウェーデンで働いていた日本人の年金についてですが、日本政府は海をまたいで働く人の増加から、日本と海外各国の社会保障制度の二重負担を防止するため、また両国の年金制度の受給資格と通算できるよう、社会保障協定の仕組みを設けています。


スウェーデンとは協定の署名済みですが、未発効となっています。

未発効とはいえ、前述のように外国人でも3年居住すれば受給資格を得られます。

多くの部分は協定を結ぶ各国共通ですが、協定相手国によっては特有の注意事項もありますので、海外で仕事をすることが決まったら、詳細の内容を確認するようにしましょう。

ランキング