生活保護と医療保険は併用できる?生活保護受給者が医療保険に加入可能かも解説

生活保護を受給すると医療保険や生命保険に加入し続けることは難しいのでしょうか。今回、生活保護受給者が医療保険と生活保護を併用できるのか、生活保護を受給している人が新たに医療保険や生命保険に加入可能なのかも解説します。また、生活保護を受給中の医療費も解説します。

監修者
株式会社Wizleap 代表取締役。東京大学経済学部で金融を学び、金融分野における情報の非対称性を解消すべく、マネーキャリアの編集活動を行う。ファイナンシャルプランナー証券外務員を取得。

生活保護受給者は医療保険や生命保険に加入できる?




生活保護は、経済的に貧しく生活に苦しんでいる人が、その困窮の程度に応じて必要な保護が受けられる制度です。


生活保護には、医療扶助、生活扶助、住宅扶助、生業扶助、介護扶助、教育扶助、出産扶助、葬祭扶助の8種類があり、国や自治体が、生活保護受給者の健康で文化的な最低限度の生活を保障するとともに、自立を助長を行います。


様々な事情により生活保護を受給することになった方にとっては、有難い制度ですが、医療保険や生命保険に加入したり継続したりすることはできるのかなど、医療についての心配事もあるかと思います。


そこで今回は「生活保護と医療保険や生命保険」について、

  • 生活保護受給者の実態
  • 生活保護受給者の医療保険や生命保険加入の可否
  • 生活保護受給者の加入できる保険
  • 生活保護受給者の医療費

以上のことを中心に解説していきます。


この記事を読んでいただければ、生活保護受給者の保険加入や医療費について知ることができ、生活保護を受けることになった場合でも、医療についての心配事が減り安心して生活が送れるようになるはずです。


ぜひ、最後までご覧ください。

生活保護受給者でも加入できる保険もある

医療保険の加入と生活保護の関係が経済的困難性にある一方で、最低限の生活に関する問題があること分かりました。
 


そこで生活保護受給者でも加入できる医療保険は無いのかといわれれば、「ある」と答えられます。
 


そもそも、生活保護受給者が禁じられている医療保険の条件は、過度な資産と認められているものです。
 


過度な資産として認められている保険は返戻金や満期金を有するものですので、それらを有しない保険であれば問題なく生活保護受給者の方でも加入することが可能です。 


 過度な資産として認められる恐れがあるのは医療保険、終身保険、養老保険、学資保険、個人年金保険です。



これらの中でもいくらかの緩和条件があります。


よって資産として認識されにくいコツを知って保険に加入することも可能です。

月々の保険料が低額のもの

第一に過度な資産として認められないためには報酬を得るための対価を支払ってはいないということが重要です
 


当たり前ですが高級車を購入するためには軽自動車を購入するよりも高い費用が掛かります。それはただの自動車に付加価値が含まれているからです。 


保険では付加価値=特約および返戻金としてみなすことができます。

すなわち過度な資産を所持しており、そのための対価を支払うだけの経済的余裕があるということになり生活保護を行使するための道理には合わないことになります。 


月々の保険料というのは、必要な保険によっても異なってくるため、どのくらいの保険料が適正かという問題は完全に解決することができません。


ただし、一般的には月々の所得の内10%~15%程度が望ましいと言われています。

解約返戻金の金額が30万円以下のもの

第二に対価を支払ったことに対する過度な報酬は得ていないかというのが問題点となります。 


仕事にはどんなに忙しくても平均以下の報酬しか得られなかったり、一日数時間パソコンに向かうだけで莫大な富を得たりすることもあります。 


仕事量は同じでも報酬は異なるため、実際に受け取る金額が過度になることも控えなけばなりません。 


生活保護を受けることを考えるのであれば、医療保険などの解約返戻金および満期金の金額は30万円以下に抑えておくべきでしょう。 


返戻金および満期金は支払った保険料をもとに運用利率などを掛け合わせて算出しますが、実際には支払った保険料と実際にもらう保険金との差額が実利益となります。 


例えば、保険料を100万円支払って150万円の保険金を手にすることができれば実利益は50万円ということになります。
 


この実利益を30万円以下にすることで生活保護受給者の方でも保険に加入することは十分可能であると考えられます。


とはいえ、「どんな保険が自分に合うのか」、「保険料の支払いは大丈夫なのか」など、心配なことは多いでしょう。


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生活保護受給者は年々増加している

厚生労働省の資料「生活保護制度の現状について」によると、生活保護受給者数は平成29年時点で約214万人で、2008年の世界金融危機の時期以降、年々増加しており、現在も過去最高水準となっています。


生活保護受給者数の増加には、近年の非正規雇用者の増加に伴う低所得者増、高齢社会による高齢者の増加や家族の介護による離職増が理由として挙げられています。


また、今後は新型コロナウイルスによる失業なども影響し、更に生活保護受給者は増えていくことも予想されます。

生活保護受給者は基本的に医療保険や生命保険に加入できない

生活保護を受けるに先立ち課せられる条件というものがあります。誰でも生活保護を受けることができる一方で財政上の限界というものがあるからです。

一般的には条件はさほど難しいものではなく国や地方自治体から援助を受けるのにふさわしいかをチェックするにすぎません。

日本国憲法にも最低限の生活を全うする権利が国民にはあると明記されています。第25条には「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。


国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」とありますので「健康で文化的な」最低限の生活に満たない方を救済しなければなりません


しかし、日本国憲法にありがちなのが解釈の自由性でありどこまでを最低限として認めるかはあいまいなところがあります。特に医療保険に関しては微妙なところであり頭を抱える問題でもあります。

特に、貯蓄性の高い保険は加入できない

生活保護を受けるための要件の一つに、「資産を保有していない」という条件があります。


資産には貯金はもちろんのこと、土地(持ち家)や保険も該当し、以下のような貯蓄性の高い保険が資産にあたります。


  • 医療保険
  • 終身保険
  • 養老保険
  • 学資保険
  • 個人年金保険
以上のように、一般的に貯蓄性の高い保険は、契約満期や解約時に満期保険金や解約返戻金が戻ってくる保険のことを指します。


また、生活保護は世帯単位で行われるため、家族全員が貯蓄性の高い保険に加入できないことを覚えておきましょう。

医療保険に加入できない生活保護受給者の医療費

また、生活保護に認定された瞬間から医療保険に加入できるわけではありません。

すなわち生活保護を受けている間の医療費についてはどのような措置が取られるのかという疑問が浮上します。

国民健康保険や後期高齢者医療制度は適用されない

国民健康保険・後期高齢者医療の保険料支払いが、生活保護受給者は免除される代わりに、これらの保険から脱退することになっています。


そのため生活保護受給者は、国民健康保険・後期高齢者医療保険制度の適用がされません


国民健康保険や後期高齢者医療保険が適応されない代わりに、生活保護受給者には医療扶助としての医療費が支給されます。


基本的に、医療費は全て支給されることとなっています。


ただし、障害者総合支援法などで公費負担医療が適応されたり、被保険者や非扶養者として被用者保険が適応されたりする場合には、それらの制度で保障されない分を医療扶助で支給してもらうことができます。

医療扶助や医療検討の申請方法

生活保護受給者の方は、原則として医療費の自己負担がありません。

生活保護受給者は、医療費を支払う代わりとして、福祉事務所から発行される医療券を使用して医療を受けることができます。

医療券の発行は、以下の流れに沿って行われます。
  1. 生活保護受給者(申請者)が、福祉事務所に医療を受けたい旨を申請
  2. 福祉事務所が、申請者に「医療要否意見書」を発行
  3. 申請者は、指定医療機関で意見書を記入してもらう
  4. 意見書を福祉事務所に提出
  5. 福祉事務所が医療券を発行

つまり、福祉事務所に提出した意見書が認められると、医療費の代わりとなる医療券が発行される仕組みとなっています。


医療券などの医療費扶助は指定医療機関に限られるため、それ以外の医療機関で受診すると生活保護受給者の全額負担になります。

また、医療扶助の範囲は国民健康保険と同等のため、入院時に本人の希望で個室に移る場合、ベッド代などの差額は自己負担となります。

医療保険の資格を失った場合

生活保護を受給する場合、後期高齢者医療制度の対象から外れてしまいます。


ですから、後期高齢者医療制度から脱退する手続きを取る必要があります


また、逆に生活保護の受給をやめる場合、後期高齢者医療制度へ加入する手続きが必要になります。


後期高齢者医療制度加入(脱退)手続きは、


  • 印かん 
  • 生活保護受給決定(廃止)通知書
  • 保険証
を持参すれば、市区町村の窓口でできます。

参考|生活保護受給者は介護保険に加入するのか

年齢と医療保険への加入状況によって異なる

生活保護を受給している方が介護保険に加入するかどうかは、年齢と医療保険への加入状況で変わってきます。


年齢と保険加入の状況は、

  • 65歳以上
  • 40歳以上65歳未満で保険に加入している
  • 40歳以上65歳未満で保険に加入していない
の3つに分けられます。一つ一つ解説していきます。


65歳以上

介護保険の対象になります。

また、介護保険料は生活保護によってまかなわれます。

40歳以上65歳未満で保険に加入している

健康保険等の医療保険に加入している場合は、医療保険と並行して加入します。

介護保険料と医療保険料と一緒に徴収されます。

40歳以上65歳未満で保険に加入していない

健康保険等の医療保険に加入している場合は、介護保険に加入することができません。

しかし、特定の疾病を発症し介護が必要になった場合は、介護保険と同等のサービスを利用できます。

また、その介護サービスの費用は生活保護が負担します。

要介護と認定される一覧

上記で説明した通り、40歳以上65歳未満で保険に加入していない場合は、特定の疾病になった場合にのみ介護サービスを利用できます

その特定の疾病とは、
  1. がん(がん末期) 
  2. 関節リウマチ 
  3. 筋萎縮性側索硬化症(ALS) 
  4. 後縦靱帯骨化症 
  5. 骨折を伴う骨粗鬆症 
  6. 初老期における認知症(アルツハイマー型認知症、脳血管性認知症など) 
  7. 進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症およびパーキンソン病(パーキンソン病関連疾患) 
  8. 脊髄小脳変性症
  9. 脊柱管狭窄症 
  10. 早老症(ウェルナー症候群など) 
  11. 多系統萎縮症 
  12. 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症および糖尿病性網膜症 
  13. 脳血管疾患(脳出血、脳梗塞など)
  14. 閉塞性動脈硬化症 
  15. 慢性閉塞性肺疾患(肺気腫、慢性気管支炎など)
  16. 両側の膝関節または股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
の16種類です。

この16種類のどれかに該当すれば、40歳以上65歳未満で保険に加入していない場合でも介護サービスを利用することができます。

まとめ:生活保護受給者と医療保険、生命保険


生活保護受給者の「医療保険や生命保険加入」と「医療費」について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。


今回の記事のポイントは、

  • 生活保護受給者数は年々増加し、現在も最高水準である
  • 生活保護受給者は、受給要件の観点から貯蓄性の高い医療保険や生命保険には加入できない
  • 生活保護受給者でも、保険料や返戻金が低い保険に加入できる場合がある
  • 生活保護受給者には、医療費の代わりに医療券が発行される
でした。

予期せぬ病気や失業により、今後ご自身や家族が経済的に困ることがあるかもしれません。

万が一、そのようなことになってしまった場合でも、生活保護により健康で文化的な最低限度の生活を送ることは、国や自治体によって保障されています。
また、生活保護を受けていても加入できる保険があれば、より安心して生活が送れるはずです。これを機会に、医療保険や生命保険を見直してみてはいかがでしょうか。

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