教育資金贈与を使い切れないとどうなる?制度のメリットとデメリット

教育資金贈与信託を利用して、もしも贈与全額を使い切れない場合はどうなるのか。使い残した余りの資金を受け取る流れを知り、課税されてしまう対象項目とその資金をお得に受け取る方法を知った上で、贈与信託制度のメリットとデメリットについて改めて考えてみる。

教育資金贈与信託を使い切れない時はどうなるの?


子供や孫に向けて、教育資金贈与信託で一括贈与を行おうと思っている方も多いと思います。


ただ贈与した金額を使い切れない場合、余った分はどうなるのか気になる方もいるのではないでしょうか。


結論から言うと、余った分は受け取ることが可能です。


ただ、贈与者と受贈者の状況によっては贈与税がかかってしまう時もあります。


また、贈与をする際には注意してほしい点もいくつかあるのです。


この記事では、国税庁を参考に教育贈与信託を使い切れない時について、

  • 課税されるケースと課税されないケース
  • 教育資金贈与信託のメリット
  • 教育資金贈与信託のデメリット
上記を分かりやすく解説していきます。

この記事を読んでいただけたら、教育贈与信託を使い切れない時について理解することができるため、今後教育贈与信託を利用しようと思っている方、教育資金贈与信託を使い切れないと悩んでいる方の参考になるかと思います。

ぜひ最後までご覧ください。

贈与者と受贈者の状況によって変わる!徹底解剖!

教育資金贈与信託は子供や孫に教育資金の名目で、資金を一括贈与することができる制度です。


通常の贈与であれば、110万円以上で贈与税が発生してしまいますが、教育贈与信託であれば、1500万円まで贈与税はかかりません。


ただ、贈与者と受贈者の状況によっては、贈与税の申告が必要なケースがあります。


ここからは、教育資金贈与信託で贈与税の申告が必要な場合について、ケース別に詳しく解説していきます。

贈与者・受贈者共に生存している場合

教育資金贈与信託は、一度贈与されたら一生教育資金として使用できるわけではありません。教育資金贈与信託には満期があります。


贈与者・受贈者共に生存している場合、教育資金贈与信託は受贈者の年齢が30歳になった時点で満期となります。


満期になった場合、その時点で契約は終了となり、余りの贈与金は自由に使用することが可能です。


ただ、契約終了時の残額が基礎控除分の110万円を超えている場合は、金額に応じた贈与税の申告が必要となってきます。


例えば、祖父母に1500万円の贈与を受けたが、そこまで使い道がなく800万円残ってしまったとします。


この場合、基礎控除分の110万円を差し引いた額690万円に贈与税が発生します。


690万円には40%の税率がかかるため、贈与税は276万円もかかることになります。


「使い切れない分は事前に返金すればよいのでは?」と思った方がいるかもしれませんが、教育資金贈与信託の場合、使い切れない分を返金することはできません。


そのため、使い切れずに余った金額は、受贈者にそのまま受け取ってもらうことになります。


ただ、契約満了後に受け取った金額は、贈与税を申告し支払ってしまえば残りは自由に使用することが可能です。

贈与者が亡くなった場合

一般的な贈与では、亡くなった方から3年以内に受けた贈与は相続とみなされます。そのため、相続税がかかることになります。


ただ、教育贈与信託であれば、贈与者が亡くなった場合にも相続とはみなされないため、相続税を支払う必要はありません。


更に契約の満期も変わらないため、受贈者は贈与金を30歳まで使用することが可能です。


ただ、30歳までに使い切れない場合、残額によっては贈与税が発生することになりますので、注意してください。


契約終了後の残額は、自由に使用可能です。

受贈者が亡くなった場合

贈与者が亡くなった場合は契約の満期日に変更はありませんでしたが、受贈者が30歳になる前に亡くなってしまった場合には、その時点で契約が終了となります。


受贈者が贈与金を使い切れないまま亡くなってしまった場合、残金は相続財産の対象となります。


そのため、残金を贈与者が受け取る場合にも当然相続税が掛かってくるということです。

使い残した分は場合によっては課税対象!非課税で受け取るためには!?


ここまで、教育贈与信託で受けた贈与金に税金の申告が必要な場合について、ケース別解説してきました。


贈与者が亡くなっても特に契約の変更は起こりませんが、受贈者が亡くなると契約が終了となり余りの金額は相続する形になることが分かりましたね。


ここからは、教育贈与信託を使い切れない場合に課税対象となるケース、また使い切れない場合でも非課税で受け取る方法について説明していきます。

課税対象となる場合

教育資金贈与信託で贈与してもらった金額は、受贈者が30歳までに全て教育資金として使ってしまえば、税金は一切かかりません。


教育資金贈与信託での贈与金に課税されるのは、受贈者が30歳までに贈与金を使い切れない場合です。


使い切れなかったといっても残金が110万円以下であれば良いのですが、110万円以上である場合には、残額に応じた贈与税を支払う必要があります。

非課税となる場合

教育資金贈与信託での贈与金を使い切れない場合でも、残金が110万円以下であれば非課税となります。


ただし、残金を110万円以下にするために、教育資金以外の目的に使用してしまうのは良くありません。


教育資金贈与信託は、あくまでも教育資金として使用されることが前提です。


そのため、教育資金として使用されなかった分には当然、贈与税が課せられてしまいます。


贈与税を支払いたくないからといって、教育資金目的以外に使用してしまうと、残金以上の税金を支払わなければいけない状況になりかねないので、注意してください。

教育贈与信託のメリットは?1500万円までは非課税!?


教育贈与信託を使い切れない場合、残額が110万円以上で贈与税がかかってしまうことはお分かりいただけたと思います。


贈与金を110万円以上余らせてしまうと税金がかかってしまうとはいえ、教育贈与信託を利用すれば1500万円まで非課税で一括贈与できるのは非常に大きいメリットです


ここからは、教育贈与信託のメリットや、一括贈与する際に注意するべきポイントについて解説していきます。

1500万円までは非課税で一括贈与可能

教育贈与信託の最大のメリットは、何と言っても1500万円まで非課税で一括贈与できるという点です。


通常の贈与では、110万円以上で税金がかかってしまいます。


仮に通常の贈与で1500万円を一括で渡した場合、控除額を差し引いても1325万円に税金がかかることになります。


1325万円には45%の税率がかかるため贈与税は約600万円となり、1500万円を贈与しても、受け取れる額は900万円となってしまうことが分かると思います。


この贈与税を全てカットできるのは、教育資金贈与信託の大きなメリットだといえます。

教育資金を一括贈与する際に注意するポイントとは

1500万円まで非課税で一括贈与できるという教育資金贈与信託は魅力的ですよね。ただ、一括贈与する際には注意すべきポイントが3つあります。


ここからは、一括贈与する際に注意するポイントについて説明していきます。

  • 信託銀行から引き出す際には、領収書の提示が必要
  • 受贈者には30歳までに使い切れないと贈与税がかかる
  • 祖父母が4人など複数いる場合は話し合いが必要

教育資金贈与信託では、信託銀行に現金が預けてある状態になっています。そのため、教育資金として利用する際は銀行から引き出す必要があります。


ただ、普通に引き出せるわけではありません。信託銀行から引き出す際には、教育資金に使用したという領収書の提示が必要になります。


この引き出す際の手続きは結構面倒だと言われています。


また、贈与する側にはデメリットは特にありませんが、受贈者側は30歳までに使い切れないと、残額に贈与税がかかってしまうというデメリットがあります。


そのため、贈与する側は受贈者のためとはいえ多すぎる贈与をして、受贈者があとで使い切れないと困らないように、きちんと計算をして贈与するようにしましょう。


受贈者が教育資金贈与信託で、教育資金として受け取れる金額は最大1500万円までです。


そのため祖父母4人に対し、孫が一人の場合などは1人が教育資金贈与信託で1500万円贈与してしまうと、他の3人は教育資金贈与信託で贈与できなくなってしまいます。


一般的な贈与だと税金がかかってしまうため、一括での贈与ではやはり教育資金贈与信託を利用したいと思う方が多いと思います。


そのため、教育資金贈与信託の制度を利用して贈与を行う場合は、他親族の方とも話し合って金額を決めていくことが大切です。


その際にも、合計額は受贈者が使い切れそうな金額に抑えるように注意しましょう。

教育資金贈与のデメリットは?受贈者側の手続きが面倒!?


さて、教育資金贈与信託は1500万円まで非課税で一括贈与できるという大きなメリットがありますが、一方で受贈者側の手続きが面倒というデメリットもあるようです。


ここからは教育資金贈与信託のデメリットについて、わかりやすく解説していきます。

お金の引き出しが面倒

お金を引き出す際には、領収書が必ず必要になってきます。


なぜなら、教育資金贈与信託は教育資金として使用することが前提となるため、領収書がないと教育資金としての使用なのか確認ができないからです。


ただ、この領収書も記載されていなければならない項目が漏れていたりすると、領収書として認めてもらえず、お金を引き出すことができない場合があります。


領収書に記載されていなければならない項目は以下の通りです。

  • 支払いの日付
  • 支払った金額
  • 支払い内容
  • 支払者
  • 支払先の氏名・名称・住所
  • 支払い先の押印
  • 内訳
上記の内容に漏れがある際は、自身での補記や署名・押印、時には領収書の発行元に補記を依頼する必要があります。

判定が難しい

提示する領収書にも、記載されていなければならない項目があったりと少し面倒であることがお分かりいただけたかと思いますが、領収書を提示しても教育資金として認められない場合があります。


教育資金贈与信託では、教育資金と認められる内容について細かいルールが定められています。


そのため自身では教育資金と思っていても銀行側が認めてくれないと、お金を引き出すことができず、大きな出費が発生してしまうことがあります。


教育資金の判定は難しいため、教育資金贈与信託にある細かいルールをその都度確認し、教育資金に当たるのかどうか確認してみる必要があります。


教育資金贈与制度を理解して効率的に利用しよう!

ここまで教育資金贈与信託が使い切れない場合について詳しく解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。


今回の記事のポイントは、

  • 受贈者が30歳になった時点で満期となり契約は終了
  • 贈与金を使い切れない場合でも、残額が110万円以下であれば非課税
  • 贈与金を使い切れないと、残額に応じた贈与税がかかる
  • お金を引き出す際には領収書が必要となる
  • 教育資金贈与信託には細かいルールがあるため、良く確認する必要がある
以上のことでした。

教育資金贈与信託には、子供や孫に一括で1500万円まで非課税で資金を贈与できるという大きなメリットあります。

ただ、教育資金贈与信託にはメリットだけでなく、引き出す際の手続きが大変であったり、教育資金の判定が難しかったりなどのデメリットもあるため、利用する際はこの記事を参考によく検討してみてくださいね。

ほけんROOMでは他にも保険に関する記事を多数掲載しておりますので、よろしければご覧ください。

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