夫婦が離婚する場合、保険の受取人、保険料、保険金をどうすべきか

夫婦が離婚する場合、今まで加入していた保険をどうするのかが悩みの種です。なぜなら、保障の対象が家族の生活費から子どもの養育費に変わったり、元配偶者が受取人のままでは保険金の非課税枠が適用されなかったり、養育費の残額は年々減っていくのに保険料が据え置きでは損をしたりするからです。受取人を妻から子どもに変更したり、保険金で養育費が足りるよう過不足なく設定したり、逓減型の商品を選んだりするような工夫が必要になります。

この記事の執筆者
露木 幸彦
行政書士、AFP。開業から10年間で有料相談件数は1万件超。 フジテレビ「ノンストップ」「とくダネ」「ほんまでっかTV」などテレビ出演多数。 著書に「男のための最強離婚術」「男の離婚」(いずれもメタモル出版)「婚活貧乏」(中央公論新社)など。 朝日新聞、日本経済新聞、プレジデントで連載を担当。

家族構成の変化に応じて保険を見直そう

何の保障か

保険は大事なのに意外と忘れがちな存在です。特に男性が保険について思い出すのは就職、結婚、そして離婚のタイミングでしょうか。


例えば、新卒で就職する社会人1年目は「待ってました!」とばかりに保険勧誘の雨嵐にさらされるし、結婚して所帯を持つと一家の大黒柱として十分な保障内容かどうか。契約内容を確認し、妻と相談し、場合によっては保障を増やしたりするのですが、最も億劫なのは「離婚」するとき。せっかく築いた家族を失い、憔悴し切っているなか、ふと思い出すのは保険の存在。


法律上、結婚期間中に築いた財産は夫名義でも妻名義でも夫婦の共有として扱います。そして離婚時には共有財産を夫5割、妻5割で按分するのが原則するのですが、財産が現預金だけなら特に難しくありません。


しかし、保険の場合、中途解約すると既払保険料を下回る場合がある、万が一の場合の保障がなくなる、受取人を配偶者から変更するなどの特殊な事情があり、決して単純ではありません。


離婚に伴って家族構成が変化したら、保険をどのように見直せば良いのでしょうか?

離婚後の受取人

「どうせ嫁と離婚するんだし、保険は解約してもいいですよね?入ったままじゃ、なんだか怖くて・・・」


そんなふうに恐る恐る話すのは坂本翔太さん(31歳。仮名)翔太さんは3ヵ月にわたって離婚の話し合いを続けた結果、ようやく妻と離婚すること、そして3歳の息子さんを翔太さんが引き取ることに決まったのですが、翔太さんが今、心配しているのは独身時代から加入している生命保険のこと。妻との結婚をきっかけに死亡保障の受取人を実家の父から妻へ変更したそう。


しかし今回、妻の反対を押し切って離婚に踏み切ったので今後、受取人をどうすべきかを悩んでいました。

離婚後は誰のために保険を継続するか〜妻のための保険は不要

結婚期間中、保険を掛け続けたのは、翔太さんが一家の大黒柱なので万が一のときに家族が路頭に迷わないようにするためです。一方、夫婦が離婚すれば、もはや妻は他人なので、これからどうなっても知ったことではない。少なくとも「妻のため」に保険に入り続ける必要はなさそうですが、本当にそうなのでしょうか?


私は翔太さんに実家の家族構成を尋ねたのですが、父と母はすでに70歳目前。そして姉は結婚しており、夫との間に2人の子どもを授かり、子育てに奮闘中とのこと。

養育費の合計が遺産を上回る場合は保険が必要

遺産で養育費は足りるか

ところで息子さんが成人する前に、翔太さんが亡くなったら、どなたが引き取るのでしょうか?翔太さん亡き後、息子さんを監護養育する人のことを法律上、後見人といいますが、裁判所が決定します。実家の両親は高齢なので体力的に難しく、また姉は自分の家庭で精一杯で、経済的に難しそうです。妻は息子さんにとって実の母なので、後見人に指定される可能性が高いでしょう。


翔太さんが他の財産・・・例えば、死亡退職金や遺族年金、そして預金等を残せば息子さんが相続するので、これらの遺産を息子さんの生活費、養育費、そして学費等に充てることができるかもしれません。しかし、31歳の翔太さんの遺産はたかが知れています。もちろん、故人が養育費を払うことは不可能。妻は女手一つで息子さんを育てていくのが金銭的に難しいと例えば、習い事や塾を辞めさせられる、合格した志望校に進学できない、など金銭的な理由で息子さんに不憫な思いを強いることになりかねません。

受取人を妻から子どもへ変更

しかし、息子さんにかかる費用と同じくらいの保険金があれば、このような事態は避けられるでしょう。これらのことを踏まえた上で、私は翔太さんにこのようなアドバイスをしたのです。


「もしもの場合に備え、受取人を息子さんへ変更し、そのまま継続するという手もあるのではないでしょうか?もちろん、妻のためではなく、息子さんのためにです」

非課税枠が適用されるのは受取人が子どもの場合のみ

元妻は非課税枠の対象外

一方、途中で(子どもが独立する前)亡くなる可能性があるのは夫だけでなく妻も同じです。夫が妻から子どもの養育費を受け取っている場合、妻の死亡リスク(養育費の停止)を未然に回避するために、生命保険を活用しましょう。いくら離婚時に養育費の約束をしても妻が亡くなると、以後、養育費はゼロとなり、困ります。すでに生命保険に加入している場合は、非課税枠を適用するため、離婚する際に受取人を夫から子どもに変更しましょう。


「契約者→夫、被保険者→妻、受取人→夫」というのが一般的な保険内容です。離婚しなければ、受取人が夫でも非課税枠が適用されますが、離婚後は対象外に。

500万円×法定相続人が非課税枠

具体的にいうと生命保険の非課税枠は「500万円×法定相続人」です。


非課税枠なしの場合、相続財産に保険金が組み込まれますが、「基礎控除3000万円+法定相続人×600万円」を超えると相続税が発生します。


しかし、受取人を夫から子どもに変更すれば、非課税枠が復活するのです。


なお、「契約者→非親権者の妻、被保険者→非親権者の妻、受取人→別居している子ども」でも大丈夫です。

逓減型を選択して保険料を節約しよう

養育費の残額は年々、減少していく

次に死亡保障額と養育費の合計を同額にするために、保険内容を見直し、保険料を軽減しましょう。


具体的には死亡保障額を「養育費の合計-死亡退職金+遺族年金+相続財産」に設定します。「養育費の合計」とはまだ受け取っていない将来、発生する養育費のことです。


しかし、離婚から期間が経過すればするほど、「これから発生する養育費の合計」は減っていきます。


例えば、「毎月5万円×18年=1,080万」という約束を交わした場合、離婚時、養育費の合計は1,080万円ですが、離婚から5年後は780万円、10年後は480万円と減っていき、養育費残額の減少に伴って必要な死亡保障額も減っていきます。

年々、保険料が減る逓減型

年々、死亡保障が減っていく保険を「逓減型」といい、どこの保険会社でも取り扱っています。


逓減型は保険料も年々減っていくので「全期間、同額」の場合に比べ、費用面でも安く済みます。

無断解約を禁止する約束を

なお、名義変更しておらず契約者が夫ではなく妻になっている場合、妻に無断で解約される、保険料を滞納される、保険料を担保に借金をされるというリスクに加え「受取人を変更される」というリスクも内在するので、これらのことを禁止する約束を交わした方が良いでしょう。

まとめ

ここまでは離婚時に行う生命保険の見直しについて解説してきましたが、いかがでしたでしょうか?


もし「もしかして!」と心当たりがあったり、「あれ?」と引っかかったり、「どういうこと?!」と気になるフレーズが1つでもあれば幸いです。

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