【獣医師監修】犬の肥満細胞腫とは?症状・手術や薬、ステロイドによる治療法も解説のサムネイル画像

犬の肥満細胞腫は悪性の皮膚腫瘍です。最も効果的な治療法は手術ですが、場合によっては放射線療法や、抗がん剤やステロイドなどを使用した化学療法を行うこともあります。予防することが難しく、早期発見・早期治療が重要なので、日頃から愛犬の症状に気を使うことが大切です。

記事監修者「森下 浩志」

この記事の監修者森下 浩志
フィナンシャルプランナー

早稲田大学基幹理工部出身。すべてのペットのお金と健康にまつわる問題を解決したい、という強い思いからMOFFMEを立ち上げ。ファイナンシャルプランナー、損害保険(ペット保険を含む)の公的資格取得。獣医師団体などと連携をして、ペットのWEB健康診断ツールの開発も行う。

この記事の目次

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犬の肥満細胞腫とは?

犬の体に出来物ができても、特に犬の様子もいつも通りだし「虫刺されかな?」とつい様子を見がちですよね。


しかしその出来物は絶対に放置してはいけません。すぐに病院に連れていき検査をしてもらわないといけない出来物かもしれません。なぜならそれは悪性の腫瘍「肥満細胞腫」である可能性があるからです。


そこで今回「MOFFME」では、犬の肥満細胞腫について、

  • 犬の肥満細胞腫の症状
  • 犬の肥満細胞腫の原因
  • 犬の肥満細胞腫の治療方法
  • 犬の肥満細胞腫の予防法
  • 肥満細胞腫にかかりやすい犬種や年齢

以上のことを中心に説明します。


この記事を読んでいただけたら、犬の肥満細胞腫がよく分かりますのでぜひ最後までご覧ください。


またMOFFMEでは、ペット保険のランキングについても詳しく解説しておりますので、ぜひそちらもご覧ください。

犬の肥満細胞腫とは、皮膚にできる悪性の腫瘍です


犬の肥満細胞腫とは悪性の腫瘍、いわゆる「ガン」です。肥満細胞腫は肥満細胞が腫瘍化してしまう病気で、皮膚がんの中で最も多いといわれています。


肥満細胞がガン化して皮膚の下で無限に増殖し、皮膚上に出来物の形で出現するものです。悪性度が高い場合は、リンパ管を通して全身に転移してしまいます。


もし犬の体に出来物を見つけたら、触らずにすぐに獣医に診せることです。むやみに触るとガン細胞内の顆粒が散らばり状態を悪化させることがありますので、触らず様子を見ずにすぐに動物病院へ行きましょう。


肥満細胞腫について埼玉動物医療センターのサイトで詳しい説明が記載されているので、ぜひ一度チェックしてみてください。

犬の肥満細胞腫の症状

犬の肥満細胞腫が発症した初期は症状がないことがほとんどです。ただ皮膚上に出来物があるだけで、犬も普段と変わらない様子で元気にしています。


しかし中期、末期(悪性度や腫瘍ができる部位によって変わる)になるとこのような症状が出てきます。

  • 出来ものを触ると急に腫れ上がる
  • 出血や浮腫が見られる
  • だるそうにすることが増える
  • 嘔吐や下痢を起こす

肥満細胞は細胞内にヒスタミンという成分を含んでいて、その肥満細胞がガン化すると急にヒスタミンが大量に分泌されることがあります。


触って腫れ上がるのはヒスタミンの反応ですし、体内に多量にヒスタミンがあふれると全身に倦怠感が起こります。


また、ヒスタミンの多量分泌により胃酸過多が起こる仕組みですので嘔吐や下痢が現出します。ひどくなると胃潰瘍を併発することもあります。


肥満細胞腫はガンですので、人間で言うところのステージがあります。犬の場合はグレードと呼びますが、このグレードで大まかな予後が推測できます(ステージ分類もあります)。

グレード4年生存する確率
グレード183%
グレード244%
グレード36%

このグレードを知るには病院で病理組織検査をするしかありません。

犬の肥満細胞腫の原因

犬の肥満細胞腫の原因はまだハッキリと解明されていません


ただ高齢犬に多い病気ですので

  • 加齢

が原因の1つと考えられていますが、正確な原因は未だ不明です。


よって予防法はないに等しく、早期発見・早期治療に努めることが肝心な病気です。

治療・手術方法は?薬やステロイドによる治療方法もある

犬の肥満細胞腫にはどんな治療法があるのでしょうか?そして治療費も気になるところです。


特に手術の種類と費用、入院するにはどのくらいの費用が必要か、通院は1回にいくらかかるのかをお話します。


犬の肥満細胞腫の治療法:手術した場合

転移がなく手術をして腫瘍を完全に取り除くことができれば、予後が良好なことがほとんどです。


ただしすべての犬に手術が行われるわけではありません。治療方法はグレードによって変わってきますが、抗がん剤治療や緩和ケアが選択される場合もあります。


病院に設備がある場合は放射線治療を選択できる場合もありますが、設備が用意されている病院はまだ少ないです。ただし大学病院(紹介状が必要)をはじめ、設備がある大きな動物病院を受診することで放射線治療を受けることができます。一度かかりつけの病院に相談してみると

良いでしょう。


なお、手術や放射線治療をする場合は腫瘍の場所の特定のため、レントゲンやCT、MRI検査を行います。

費用
外科手術15~30万円
抗がん剤治療1回3万円ほど
放射線治療トータル20万円~
レントゲン、CT、MRI検査3,000円~

犬の肥満細胞腫の経過観察で通院する場合

犬が肥満細胞種になってしまい、仮に手術ですべて取り除けても、人間のガンと同じように定期的な経過観察が必要になります。


抗がん剤治療を受ける場合、点滴でも投薬でも獣医の指示通りの間隔で通院する必要があります。以下の表では通院にかかる費用をまとめています(治療を始める前の検査も含みます)。

費用
抗がん剤治療1回3万円ほど(点滴、投薬が選べます)
診察1,000円~1,500円ほど
血液検査5,000円ほど
検体の採取2,500円ほど
細胞診断5,000円ほど
合計通院1回44,000円ほど(病院が要求する検査・料金体系によって違います)

薬による犬の脂肪細胞種の治療について

犬の肥満細胞腫を薬で治療する場合は、抗がん剤・ステロイド・分子標的薬の選択になります。ただ化学療法は他の治療法を併用されることも多いです。

どうやって診断する?肥満細胞腫の検査方法とは

犬の肥満細胞腫はどの様に検査するのでしょうか?


犬の肥満細胞腫は以下のような流れで検査されます。

  • 細胞診
  • 転移チェック
  • CT検査
  • 遺伝子検査

犬の肥満細胞腫を検査するために、まずは細胞診を行います。細胞診は細胞を採取し、顕微鏡で検査する方法です。肥満細胞腫は他の普通の細胞とは見た目が違っているため、見て判別することが可能です。


細い注射器なら細胞を採取することが可能なため、麻酔などをかけずに安全に検査を行うことができます。


肥満細胞腫であることが分かった場合、他の部位に転移していないかどうかを確認する転移チェックを行います。まずはリンパ節の細胞診検査を行い、さらにその他の部位に転移が無いかX線検査超音波検査などで詳しく検査していくことになります(手術をした後は病理検査も行います)。


肥満細胞腫が手術の難しい部位に発症している場合、CT検査をして病巣がどの部位にどのような状態であるのかを詳しく検査する場合もあります。CT検査の場合、麻酔をかけて行うことになります。


病院によっては遺伝子検査を行う場合もあります。細胞診の検査と同じように、少量の細胞を採取して行うため、麻酔などをかける必要はありません。

予防法は?レントゲン検査の画像で手術後の再発の有無を確認!

犬の肥満細胞腫の予防法ですが、先にも少し触れましたが、現時点では原因がはっきりしていませんので予防法もありません


もし肥満細胞腫にかかって治療をした場合、仮に手術ですべて取り切れて一安心したとしても、再発や転移がないかを確認するために、継続的に検査を行うことになります。


レントゲンやCTで画像を確認する必要がありますので、3,000~5,000円が相場の検査費が必要になります。


ガンを患っている時のような高タンパク、低糖質、良質な脂肪分の食事を心がけるとガンに抵抗できる体を作れると言われていますので、今から食事を変えていくのも予防になる可能性は高いです。


そして早期発見のために、毎日のマッサージもおすすめです。犬が喜ぶマッサージを覚えて、ストレス解消とスキンシップを兼ねて皮膚にできものがないかを確認するために毎日行いましょう。


毎日触っていると出来物の発見も早く、早期発見で予後が明るくなります。検査が定期的に必要にはなりますが、早期治療によって病院通いもそれだけ早く落ち着きます。


繰り返しになりますが、もし出来物を発見したら、あまり触らずに様子を見ないですぐに病院に連れていきましょう。

肥満細胞腫にかかりやすい犬種や年齢は?


犬の肥満細胞腫の原因は不明で予防法も特定されていないことが分かったと思いますが、実は発症しやすい犬種や年齢の傾向が統計で明らかになっています。


どの犬種、年齢で発症しやすいのかを見てみましょう。

肥満細胞腫にかかりやすい犬種

肥満細胞腫を発症しやすいと言われている犬種は以下のとおりです。

  • フレンチ・ブルドッグ
  • ゴールデンレトリバー
  • ラブラドールレトリバー
  • ボクサー
  • ビーグル
  • シュナウザー
  • ボストンテリア
  • ポインター
  • パグ

などで、短頭種に多い傾向があるようです。


しかし、必ずしも特定されているわけではなく発症する犬種は多岐にわたっており、どの犬種にも発症する可能性はあります。


犬種が違うからと安心するのではなく、毎日のように犬の体をよくチェックしておくことが大切です。

肥満細胞腫にかかりやすい年齢

犬の肥満細胞腫が好発しやすい年齢は8~9歳頃だと言われています。ただ3週齢~19歳齢まで幅広い年齢で発症が報告されていることに注意が必要です。肥満細胞腫は皮膚と内臓に発生することがありますが、犬はほとんどが皮膚に発生します。


よく出る場所は、体幹と会陰部で割合は50%、四肢が40%で90%が体に出ます。残り10%は頭です。


ぷっくりハッキリと膨れ上がるので分かりやすい出来物です。毎日よく触ってチェックしましょう。

犬の肥満細胞腫はペット保険で補償される?

犬の肥満細胞腫はペット保険で補償されるのでしょうか。


犬の肥満細胞腫は現在まだ患っていなければ補償対象となるペット保険もあります。もし今治療中であっても「特定傷病補償対象外特約」という特約をつければ加入できます。ただし悪性腫瘍を患っている場合や過去に罹患したことがある場合は保険に加入できないことがほとんどなので注意してください。


肥満細胞腫は手術、入院、通院すべてが必要となる病気で、再発の心配も消えないことから、継続的な経過観察も必要で治療費は高額になります。


先にも治療費の話をしましたが、仮に、出来物を見つけて病院へ連れていき、検査の結果外科手術になり、3日ほど入院した場合をシミュレートしてみます。


これはあくまで一例で、病院の料金体系や犬の大きさで費用は変わりますので、費用については病院でよく確認する必要があります。

費用
診察1,500円
検査13,000円
レントゲン、CTなど50,000円~
手術平均200,000円
入院3日平均5,000円×3日=15,000円
合計279,500円

以上の金額にプラスして、通院での経過観察も必要になります。通院の際は血液検査や細胞検査などを行います。


治療通院1回分
診察1,500円
検査13,000円
合計14,500円

年齢やグレードなどによって手術が行えない場合、1回3万円~の抗がん剤治療を提案されることが多くなります。この通院費に抗がん剤の費用が加算される場合があります。


抗がん剤は15~20回は行いますので、治療費がかなり高額になってしまいます。


このように、治療費が非常に高額になる病気ですので、この金額を支払うことに不安を感じる場合は早めにペット保険に加入することをおすすめします。

まとめ:犬の肥満細胞腫について

いかがでしたか?ここでは犬の肥満細胞腫について詳しくご紹介しました。


ここでご紹介したことは、

  • 肥満細胞腫とは、皮膚にできるガンのこと
  • 初期症状は出来物ができるくらい
  • 肥満細胞腫ができる原因は不明
  • 肥満細胞腫の治療法は手術以外に放射線治療と化学療法で行う場合もある
  • 肥満細胞腫は細胞診を行って検査する
  • 肥満細胞腫の予防法はなく、早期発見・早期治療が重要
  • 肥満細胞腫は短頭種がかかりやすいと言われている
  • 肥満細胞腫にかかりやすい年齢は8~9歳
  • 肥満細胞腫の治療は高額になるため、ペット保険に加入しておくと安心

になります。


飼っている犬にイボのような出来物ができていたら、肥満細胞腫の可能性もあるため、早めに病院で検査してもらうことをおすすめします。


肥満細胞腫に関するブログなども多いため、犬には比較的よく発症する病気のようです。放置すると転移などの可能性も高くなるため、気になる出来物を発見したら、すぐに病院を受診するようにしましょう。


MOFFMEでは他にも保険に関する記事を多数掲載しています。興味のある方はぜひ参考にしてください。