【獣医師監修】犬のクッシング症候群とは?症状や治療費・治療法、検査法を解説!のサムネイル画像

内容をまとめると

  1. 犬のクッシング症候群は5歳を過ぎると発症しやすい
  2. 長期の投薬治療や放射線治療、手術が必要になる病気
  3. 放射線治療では60万円近くの治療費用がかかることがある
  4. 万が一に備えてペット保険への加入がおすすめ!

クッシング症候群は犬に多く見られるホルモン異常の疾患です。そのため治療法や治療費を知りたい飼い主の方が多いです。下痢や食事を摂らないなどの症状がある場合や疾患と付き合っていく場合には、血液検査を含む定期的な検査を受けることで寿命を全うできる可能性が高まります。

記事監修者「森下 浩志」

この記事の監修者森下 浩志
フィナンシャルプランナー

早稲田大学基幹理工部出身。すべてのペットのお金と健康にまつわる問題を解決したい、という強い思いからMOFFMEを立ち上げ。ファイナンシャルプランナー、損害保険(ペット保険を含む)の公的資格取得。獣医師団体などと連携をして、ペットのWEB健康診断ツールの開発も行う。

この記事の目次

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犬のクッシング症候群とは?

犬のクッシング症候群とは、日本語で副腎皮質機能亢進症と言い、5歳を過ぎる頃から発症するパターンが多く、メスのほうが罹患率は高まります


そこで今回「MOFFME」では、犬のクッシング症候群について、

  • 犬のクッシング症候群の症状や原因、治療法
  • どの犬種がクッシング症候群に罹りやすいか?
  • 犬がクッシング症候群に罹った時の日常のケア
  • 犬のクッシング症候群はペット保険で補償されるか?

以上のことを中心に説明します。


この記事を読んでいただけたら、犬のクッシング症候群が良く分かりますのでぜひ最後までご覧ください。


またMOFFMEでは、ペット保険のランキングについても詳しく解説しておりますので、ぜひそちらもご覧ください。

クッシング症候群について


犬のクッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)は脳の下垂体や副腎の腫瘍などによって、ホルモンが過剰に出ることで様々な身体症状が出る病気です。


犬がクッシング症候群にかかり病状が進行すると、糖尿病、種々の感染症、高血圧など、命にかかわる合併症を併発することがあります。


長期の投薬治療や放射線治療、場合によっては手術が必要になる病気ですので、治療費や精神的負担の面でも覚悟が必要になるでしょう。

犬のクッシング症候群に見られる症状

犬がクッシング症候群を発症すると、初期にはこのような症状が出ます。

  • 多飲多尿
  • 食欲が増す
  • 毛が左右対称に抜ける
  • 呼吸が荒い
  • 腹部がぽっこりしてくる
  • あまり動かない

よく食べるわりに動かず、やたら水を飲んでおしっこをしたがるので、毎日よく観察していれば気付きやすい症状です


また治療には副腎皮質機能を抑制する薬剤を用いることがありますが、その効果が過剰に表れてしまい、活力や食欲が低下して嘔吐や下痢を起こすことがあります。


自己判断で投薬を中止せず、まずはすぐに獣医師に相談してください


クッシング症候群の症状について、埼玉動物医療センターの公式サイトに記載されておりますので、一度チェックしてみてください。

犬のクッシング症候群の原因

犬のクッシング症候群の原因は以下の3つです。

副腎腫瘍

副腎はコルチゾールを産生・分泌する器官ですので、副腎に腫瘍ができるとコルチゾールが過剰に分泌されるようになります。


クッシング症候群の10%がこの副腎腫瘍によるものです。

下垂体腫瘍

脳の下垂体はコルチゾールの増減を司っている器官で、ここに腫瘍ができると常にコルチゾールを分泌するよう、副腎に司令が飛びます。


犬のクッシング症候群の約90%がこの下垂体腫瘍が原因です。

薬剤の影響

ノミやアトピーなどのアレルギー性皮膚炎や、薬剤のステロイドの影響で稀にクッシング症候群を発症することがあります。


ステロイドは副腎から出るホルモンを科学的に作り出した薬で、高用量長期間の投与によって副腎の働きを狂わせてしまい副作用が出ることがあります。

犬のクッシング症候群の治療・治療費

次に、犬のクッシング症候群の治療法と治療費を見ていきましょう。


犬のクッシング症候群の診断や経過観察には主に血液検査が用いられます。その結果によって超音波検査CT・MRI検査を併用する場合もあります。


治療は長期に渡り、治療費はかなりの負担となることがほとんどです。

副腎腫瘍の治療・治療費

副腎にある腫瘍を手術で摘出することが第一選択になり、きれいに摘出できれば予後も良好です。しかし副腎腫瘍は血管をもろくしてしまう性質があり、また、腫瘍細胞が血行性に転移しやすいため、術中や術後のリスクが高い手術となります。


犬の年齢などにより手術は回避されることも多く、手術をしなければ内服でコツコツ腫瘍を小さくしていくことになります。しかし、下垂体腫瘍よりも内服での治療は難しく、大変根気のいる治療となります。


治療費は以下のとおりです。

副腎腫瘍の治療費の一例
手術をした場合15~25万円
投薬治療1回分300~600円×1日2回の服用=1ヶ月合計18,000〜36,000円

一部でも腫瘍を残すとクッシング症候群は治りませんので、副腎腫瘍の場合は副腎の全摘出が一般的です。


合併症を併発した場合にはその疾患に対する治療も同時に行うため、さらに治療費は増すと覚悟を決めておいたほうがいいでしょう。


下垂体腫瘍の治療・治療費

下垂体は脳の下側に位置するため開頭手術は行えない場所です。開頭手術ではなく、鼻の奥あるいは喉からのアプローチが必要で、かなりの高度な技術を要します。この手術に対応できる獣医師や動物病院がそもそも少ないので、手術を選択することは稀になるでしょう。


仮に手術で下垂体を切除できたとしても、術後は下垂体がなくなりホルモンの調整ができなくなりますので、生涯に渡りホルモン投与を行う必要があります。


下垂体腫瘍が原因のクッシング症候群の治療は、以上の理由から放射線治療で行うパターンが多くなります。


放射線治療とは、腫瘍をそのまま残していますので放射線を当てて小さくすることを目指す治療法です。


放射線を当てるたびに全身麻酔が必要になる施術で、4回ほどに渡って放射線を腫瘍に当てて経過を見ます。

放射線治療費
放射線治療1セット
(4回の場合)
40〜60万円

大学病院への紹介も一般的に行われていますので放射線治療を選択するのも良いでしょう。ワンセットの照射を行い経過が良ければ、数カ月は治療無しで過ごせるところがメリットとなります。


医原性(薬の影響)の治療・治療費

ステロイドを使用していてクッシング症候群が発生した場合は、まずそのステロイドを中止することを目指します


しかしこれは飼い主さんの勝手な判断で行わないように注意して下さい。ステロイドは急に停止すると副腎不全を起こす場合がありますので、必ず獣医師の指示に従って下さい。


投薬を中止した上で、そのステロイドを必要としていた既往症とクッシング症候群の兼ね合いを見て治療方針を決めていきます。


治療方針や薬用量が定まるまでは頻繁な通院を余儀なくされますし、治療費はかさむことになるでしょう。

犬のクッシング症候群の場合は定期的な血液検査が必要

犬のクッシング症候群の原因である過剰なコルチゾールは、血液を調べるとその量が判明するため、クッシング症候群の診断と経過観察は主に血液検査を用います。ホルモン量を計測するので単純な血液検査よりは費用が高くなります。


病院によって変わりますが、おおよそ5,000円~10,000円くらいは病院に行くたびに必要になります。


獣医療法によって診療報酬は、各々の動物物病院で設定が可能です。動物病院によって治療費に幅がありますので注意が必要です。


その血液・ホルモン検査の結果、必要があれば全身麻酔をかけてCTやMRIの検査を行う場合もあります。


大型犬になるほど投薬量や検査の際の麻酔薬の量も多くなるため費用は変動しますが、おおよそ平均的な治療費を以下に記しておきます。(トータルの額ではありません。1回の診療でかかる費用です。)

クッシング症候群の平均的な治療費
診察1,500円
血液・ホルモン検査10,000円
CT・MRI100,000円
投薬(1ヶ月分)30,000円
合計141,500円
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クッシング症候群の予防方法はない!?

クッシング症候群を予防することはできるのでしょうか。


残念ながら、クッシング症候群の決定的な予防方法はありません。

あらゆる疾患について言えることですが、クッシング症候群への最善の対応としては早期発見・早期治療が重要になります。


愛犬の様子を日々観察し、何か異常に気付いたら、すぐに病院に連れていくことをおすすめします。

初期の段階で治療を行うことができれば、あまりお金をかけずに治せる可能性が高くなります。


飼い主もペットもつらい思いをしなくて済むように、愛犬の健康を常に気にかけてあげましょう。

クッシング症候群にかかりやすい犬種や年齢は?


犬のクッシング症候群の原因や症状、治療法や治療費を見てきましたが、かかりやすい犬種や年齢などはあるのでしょうか?


そして、もしクッシング症候群に罹患してしまった場合、寿命を全うできるのでしょうか?


犬のクッシング症候群にまつわる気になる疑問を解説します。

クッシング症候群にかかりやすい犬種

クッシング症候群の罹患率は、以下の犬種で比較的高いとされています。

  • トイプードル
  • ダックスフンド
  • シーズー
  • ミニチュア・シュナウザー

日本で人気の高い、小型の犬種が並んでいることが分かります。


ただし、この結果には、これらの犬種の飼育頭数が多いことが影響しているという見解もあります。したがって、一概に言い切ることはできないということも頭に留めておきましょう。


かかりやすさに多少の違いがあったとしても、全ての犬種がクッシング症候群にかかる可能性があります

犬種に関わらず、愛犬を注意深く観察することが重要であることに変わりはありません。

クッシング症候群にかかりやすい年齢

犬がクッシング症候群にかかりやすい年齢は5~7歳以上と言われています。


腫瘍形成が発症に関与するため、予防することは困難です。また比較的認知度が低い病気ですので、今回初めて犬のクッシング症候群を知った飼い主さんもいることでしょう。


一刻も早く特効薬や予防法が確立されることを祈ります。

クッシング症候群にかかっても長生きできる?

クッシング症候群に罹ってしまったとき、「もしかしてうちの子は長生きできないのでは」という思いが脳裏をよぎることもあるでしょう。


一般に腫瘍は良性と悪性に分類され、良性腫瘍であれば、予後が良好であることが多いです。

治療の過程での出費は覚悟する必要がありますが、最期まで愛犬と一緒に過ごせる可能性が高いです。


それでは、良性と悪性のどちらの腫瘍が多く発生するのでしょうか。


クッシング症候群の原因の1割を占める副腎腫瘍の場合は、良性と悪性がほぼ同じ割合で発生しています。

一方下垂体腫瘍の場合は、ほとんどが良性の腫瘍です。


したがって、クッシング症候群の原因となる腫瘍の多くは良性腫瘍であると言えます。

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愛犬がクッシング症候群にかかってしまったときには


犬のクッシング症候群は、早めに発見して腫瘍がそれほど腫大していない段階から治療を開始すると、予後が良好になりやすいと言われています。


このことから、出来るだけ早期発見することが大切ですが、そのために飼い主さんが日頃気を付けることは、愛犬の様子をいつもよく見ておくということです。


そして、もし仮に愛犬がクッシング症候群にかかり、治療が開始された時は、いつも以上に愛犬の様子を監視するようにして下さい。


愛犬の様子をしっかり確認することと同時に、クッシング症候群は飲水量に特徴が出る病気ですので、飲水量や尿量を常に測っておく、ペットシーツを変える頻度や尿の色に着目することが状態把握に役立ちます。

獣医師に指定された量と回数の食事を守る

クッシング症候群の原因であるコルチゾールを抑える薬は、食事と共に与える薬ですので、獣医師に指定された食事量と回数を必ず守るようにして下さい。


そして飼い主さんは、その薬の取り扱いに注意しましょう。人間にも適用する薬です。ホルモンの量を操作する薬ですので、薬の粉を吸い込まないようにしましょう。特に妊娠中の方が家にいる場合は薬の取り扱いには十分に注意して下さい。

ブログで実際の犬のクッシング症候群を知ることができる

ネットを探すと、ペットがクッシング症候群になってしまった飼い主さんの生の声をブログで知ることができます。


飼い主さんが振り返るクッシング症候群の最初の兆候は「突然のおもらし」だったそうです。粗相を1回もしなかった子がトイレの前でもらしたり、カーペットの上でしてしまったりしたそうです。


それもずっとではなく、しばらくすると治まったので安堵していたそうです。しかし1年ほど経った頃、突然のけいれんを起こして倒れて血液検査を受けたそうです。その結果は異常なし。尿検査も異常なしで、またそのまま1年放置したそうです。


そうこうしているうちに、多飲多尿がひどくなり、けいれんの回数も増え、その上ゴミまで漁るような暴食になったため、この頃から飼い主さんはクッシング症候群を疑っていたそうです。


クッシング症候群を診断する「ACTH刺激試験」という検査は高額で、しばらく二の足を踏んでいたところ意を決してACTH刺激試験を受けると、案の定「クッシング症候群」の診断が下ったという飼い主さんのお話が印象的でした。


クッシング症候群の諸症状を病院で訴えても、一般的な血液検査や尿検査しかしてもらえないようです。そのようなものではコルチゾールの数値は出ないので病気は発見されません。


ACTH刺激試験は病院によって費用はまちまちですが、おおよそ8,500円ほどです。多飲多尿、食欲増進、元気な割に動かない、けいれんを起こすなど、クッシング特有の症状が出たら、飼い主さんから獣医に「ACTH刺激試験を受けます」とハッキリ伝えて下さい。


早期発見が功を奏しやすい病気ですので数年も放置していてはいけません。ペット保険に加入していれば検査費用も補償されますので、費用に躊躇せず早め早めに検査を受けられるように万全の準備を整えておきましょう。

犬のクッシング症候群はペット保険で補償される?

犬のクッシング症候群はペット保険で補償されるのでしょうか。


犬のクッシング症候群の治療は生涯に渡り、その治療費も手軽な金額ではないということが分かりました。金額を示した表をもう一度記します。

クッシング症候群の平均的な治療費
診察1,500円
血液・ホルモン検査10,000円(ACTH刺激試験込み)
CT・MRI100,000円
投薬(1ヶ月分)30,000円
合計141,500円

これはCTやMRI検査を行った例ですが、行わない場合でも4万円を超えてきます。


もう一度言いますが、これは1回の受診の金額です。投薬が1ヶ月ごとなら毎月最低4万円はかかると言うことです。ここに治療方針によって手術や放射線治療の費用が上乗せされます。


そして、これが生涯に渡るかも知れないということも忘れてはいけません。


もし今、クッシング症候群の疑いがあるなら今からでもペット保険に加入しておくことをおすすめします。既往症がある場合、本来なら加入できないのが一般的ですが、特定傷病補償対象外特約を付帯すれば加入できます。


ペット保険はたくさんあるのですべてを紹介することはできませんが、ほとんどのペット保険で補償されますので、加入を検討されてみてはいかがでしょうか。

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まとめ:犬のクッシング症候群について

犬のクッシング症候群について、お分かりいただけたでしょうか。


ポイントをまとめます。

  • 犬のクッシング症候群は脳の下垂体や副腎に腫瘍ができ、様々な身体症状が出る病気であり、命に関わるケースもある
  • 予防方法はなく、予後を良くするには早期発見が重要なので、初期症状が見られたら速やかに病院に連れていくことがおすすめ
  • 治療方法には投薬・手術・放射線治療があるが、いずれにしても高額な経済的負担は覚悟しなければならないので、ペット保険への加入がおすすめ
  • 悪性腫瘍であることは稀であり、良性腫瘍であれば寿命を全うできる可能性は十分にある
  • 投薬を開始してからは、副腎皮質機能の低下による症状に気づけるよう、より注意深く愛犬の様子を観察することが重要である

MOFFMEでは、他にも読んでおきたい保険に関する記事が多数掲載されていますので、ぜひご覧ください。