Section1 若者が投資を始めるメリット
今の若者たちが年金をもらえる年齢になったとき、受け取れる年金は今よりも少なくなるだろう。老後に備えるためには投資や資産形成が不可欠であるーー。そんな言葉を見聞きすることは多いですし、不安になりますよね。
しかしその一方で「自分はまだ若いし、年金とか老後なんて言葉を出されてもピンと来ない。投資とか資産形成なんて、まだまだ先の話なんじゃないのかな」と思っている人も多いのではないでしょうか。
これについて、株式会社ウェルスリード代表の濱島さんは「老後だけの問題ではない」といいます。「自分の望む人生を送るためには経済的な自立が必要であり、そのために投資が大切」なのだと力説してくれました。
「例えば、現在ブラック企業に勤めており、残業代も出ないような環境でパワハラにガマンしながら働いている人もいることでしょう。しかし、今の会社を辞めても次の仕事が見つかるかどうかがわからないので、しがみついて働くしかない。そんなケースは世の中にけっこうあるのではないでしょうか。
夫婦間でも似たようなケースがあります。例えば、夫が浮気していて離婚したいけれど、自分には生活力がない。現状では夫に食べさせてもらっている状態なので、別れたいのに別れられない。世の中にはそういった人もいることでしょう。
そういうとき、もしも経済的な自立を果たせていれば、嫌なものから逃れて次へ向かえるんですよね。
『日々の生活をするだけでカツカツ』だとか、『夫の給料だけで何とかやっている』といった状態だと、やはりリスクを取って次の世界を目指すのは難しい。しかしある程度の資産があれば、多少のリスクは取ることができるんです。
そういう意味でも、投資によってある程度の経済的な余力を持つことは非常に意義のあることだと思います」
お金は、欲しいものを買うとか、趣味を充実させるといった使い道だけではなく、人生を変える力のあるもの。そう考えると、決して「老後の備え」という話だけではないというのがわかります。
では、給料を銀行に預けているだけではほとんど増やすことができない世の中で、どうやって資産を増やすのか。その選択肢の一つが「投資」というわけです。
しかも、若いうちから投資を始めることには大きなメリットもあるのだとか。
「若い人の最大のメリットは、『時間』です。投資にはリスクもありますが、正しい投資を長期的にやっていれば、きちんとリターンを得ることができます。そして長期投資に加えて『複利』の効果も得られます。若ければ若いほど人生の先が長いので、この効果を最大限享受することができるんです」
複利というのは、長期投資のパフォーマンスを向上させる効果のこと。投資で利益が出たら、「利益を上乗せした資金で再投資する」という方法です。
「例えば、手元に100万円があって金利1%で運用したとします。すると、1年で100万円が101万円になりますよね。この1万円を使ってしまい、次の年もまた100万円で運用するのがいわゆる『単利』です。次の年も1万円しか利益は出ません。
一方『複利』は、得た利益を使ってしまうのではなく、101万円で運用する方法です。すると、次の年には101万円に対する1%なので、1万100円が利益になります。最初は大きな違いに見えないかもしれませんが、これを繰り返していくと、後の方になればなるほど増え幅が大きくなっていきます。複利で長期的に投資することは大きな違いを生み出すので、できるだけ早く始めた方が、複利の恩恵を得られることになります」
こういったお話をうかがっていると、「投資なんてまだ先の話」と何も行動しないのは、実は大きな損をしているのでは…?と思ってくるのではないでしょうか。
「投資をやらない理由の一つに『元手がないから』というのがあるのですが、これはまったくナンセンスだと思います。今は積立投資も非常にやりやすい環境にありますし、毎月1万円でも5,000円でも、とにかく始めることが将来の資産につながります。
人生のなかで絶対に取り戻せないのは時間です。『いつか、そのうち』ではなくて、可能な状況にあるならすぐにでも始めることが大切だと思います」
Section2 リスクをどう考えるか
ただし、投資は「必ず利益が出るもの」と保証されたものではありません。濱島さんが言うように長期的な投資であれば高い確率でリターンを得ることができますが、それでも元本割れの可能性が0%というわけではありません。
誰だって元本割れをするのは嫌ですし、「少しでもそんな可能性があるなら投資なんてやらない」と考える人もいるのではないでしょうか。
しかし実は、そういう選択も潜在的なリスクを抱えているのだと濱島さんは言います。
「元本割れの可能性がある商品にはいっさい投資しません、という場合、現金で持っておくか銀行預金しか方法がありませんよね。
でも実は、現金の保有や銀行預金もリスクを抱えているのです。いわゆるインフレリスクで、物価が上がると銀行預金や現金の価値は下がってしまうんですよ。さらに、為替が円安になると円の価値が下がるわけですから、輸入物価が上がってしまう。このときに預金や現金しか持っていなかったら、価値が下がってしまうのだという認識をする必要があります」
また現金での保有には、物理的なリスクもあります。過去の大きな災害では金庫ごと失われるような悲劇も多々起きていたことを考えると、「投資を極端に嫌う」のにもリスクがあることがわかります。
もちろん「リスクに対してどの程度許容できるか」には個人差があるため、すべての人が同じ投資をするのが正解というわけでもありません。身の丈に合った投資を考えてみることが大切と言えるでしょう。
「まずは、自分がハラハラドキドキしない金額でやってみる、慣れていく、経験を積むというのが大切だと思います。絶対に投資に使ってはいけないお金というのもありますしね。
私がよくお話しているのは、最低限の生活費の半年分~1年分は投資に使わずに置いておきましょうということ。そして近い将来に使う予定のあるお金は、投資に使ってはいけません。例えば結婚資金だとか、マンションを買うための頭金とかですね。
そういった、『必要なお金』に含まれない余剰資金が、投資に使えるお金です。
若い人だと『そんな資金はないよ』という人もいるかもしれませんが、給与天引きで1万円を積立投資するという話であれば可能だと思うんです。余った分を投資に回そうとしてもうまくいかないので、先に引いて投資してしまえば確実に積立ができます」
Section3 おすすめは投資信託
「初めての投資」として、濱島さんは投資信託をおすすめしています。
「よく、個別の株式とどちらがいいんでしょうかと聞かれるのですが、将来に向けて資産形成を始めるならば、投資信託が一番いいと思っています。その理由は、まず小口でできることですね。ネット証券の一番安いところでは100円からできますし、中にはポイント投資という、ほとんど元手のかからない投資もあります。
また、コストがほとんどかからないのもメリットです。投資信託をネット証券でやれば、買うときの手数料がゼロです。投資信託を持っている間だけかかる信託報酬という費用も、昔に比べると各段に少ない商品がいっぱい出てきているんですね。5年10年前とは雲泥の差と言っていいほどです」
投資信託の中で具体的にどんなものに投資するかについては、「株式もしくは不動産」だそうです。
「ピケティの著書『21世紀の資本』にも出てくるのですが、『資本から得られるリターンは、働いて得られる労働対価よりも多い』という事実があります。つまり資本家の方がリターンが大きいんですよね。
では代表的な資産・資本は何かというと、株式か不動産です。この2つが代表的な投資すべき資産だと思っています。
今、世界の人口は78億人ですが、長期的に見てこれが90億人、あるいは100億人へと増えていくのは間違いないといえるでしょう。確実に世界の人口は増えていきます。世界の人口が増えるということは、世界のGDPも比例して増えていくということ。もちろん、資本主義が転覆した世界になったりすれば話は別かもしれませんが、それが今後何十年かであるとは考えづらい。
世界の人口は必ず増えていき、世界のGDPも増えていくと、世界の株式会社の総和も確実に伸びていくというわけです。
もちろん株式が短期的に上がったり下がったりがあるのは当然ですが、長期的に見た場合には世界経済は今後間違いなく伸びていくのだから、世界経済の成長にベットしましょうというのが一番基本かなと思いますね」
一口に株式に投資する投資信託といっても、日本の株に投資するもの、アメリカの株に投資するもの、あるいは世界のいろんな国に投資するものなど、いろいろなものがあります。しかしいずれにせよ「株式もしくは不動産に投資する投資信託」がおすすめだそうです。
Section4 株式投資の本質とは
この記事を読んでいる人の中には「個別株をやってみたい」という人もいることでしょう。そういった興味に対してご意見をうかがってみると「もちろん、それもありです」と教えてくれました。
「勉強は必要ですが、個別の株式にも興味を持って投資するというのはすごくいいことだと思いますよ。ただそのときにぜひ頭に入れておいてほしいのは『株価の売買』に終始しないでほしいなということです。
株価は毎日上がったり下がったりしているので、安く買って高く売り、利益を出してなんぼの世界も確かにあります。しかし株価とはそもそも、『企業の価値』についている値段ですよね。企業の価値が上がれば株価も上がるのは当然ですが、毎日のように変動するはずがありません。本来の価値とは別に、株価は毎日動いているわけです。そこに惑わされてほしくないですね。
短期トレードで儲けることも株式投資の一つですが、それが『株式投資の本質』だと誤解しないでほしいのです」
濱島さんは「投資には社会貢献の意味もある」と言います。例えばコロナ禍によって世界中で利用されるようになったzoom。zoomというツールのおかげで、コロナ禍でもビジネスができている企業は膨大にあることでしょう。こういった、社会に役立つ価値を提供するのが株式会社であり、企業を成長させる力を持っているのが投資家なのです。
「株式投資は社会貢献だと、私は本気で思っています。
なぜなら、現代社会にあるほとんどのものは株式会社が生み出した商品やサービスですから。株式会社に資本を提供する人がいなければ、世の中には何も生まれません。
そして、良い商品やサービスを提供する会社は世の中に評価され大きくなっていきますから、株主にもリターンが生まれます。つまり、世のため人のためになる会社に投資をすることが、自分も儲かり、世の中を豊かにしていくわけです。
例えば今は、CO2を膨大に排出している企業にはお金が行きづらくなっており、クリーンエネルギーを開発したり、環境保全に努める企業が評価される流れになっていますよね。世の中の問題を解決していく会社に投資することが、世の中を良くしていくことにつながるんです」
そういった意味でも、個別株に興味のある人は「世の中に求められているサービスなのか・評価されている商品なのか・今後もっと社会から必要とされるものを作っていけるのか」を考え、投資することが大切といえるでしょう。
Section5 まとめ
「年金とか老後なんて言葉を出されてもピンと来ない。投資とか資産形成なんて、まだまだ先の話なんじゃないのかな」
若いうちは、そういった感覚を持ってしまうのは無理もないかもしれません。しかし濱島さんのお話をうかがっていると、投資をやらないのはいろいろな意味で「もったいないこと」だというのがわかります。
もちろん投資はリスクのあることなので、リスクを理解し余剰資金でやることが大切ですが、若者には「時間」という大きな有利性があるのも事実。なんとなく迷っているという人は、この機会に一歩踏み出してみてはいかがでしょうか。