
Section1 スタッフ含め、みんな投資家
「お店をオープンした理由はとてもシンプルで、『投資家同士がリアルでつながる場ってあんまりないな。そういう場所があったら楽しいだろうな』というのが動機です。
投資家って、Twitterとかネットの世界だと知り合いや気軽に話せる人もたくさんいると思うんですが、リアルで株式投資やその他の投資について話せる知り合いってあんまりいないと思うんです。そこで、リアルなつながりができたらいいなと思ったのが最初のきっかけですね。
そんな思いをTwitterでつぶやいたら、ちょうど『私もそんなことをやりたいと思っていたんです』と飲食店を経営していた方からお声がけいただいて、じゃあ一緒にやりましょうかと」
オーナーの上原さんは、業界では有名な投資家の一人。Twitterは5万人近いフォロワーがおり、そこでつながった人脈にも大いに助けられたとか。お店の店長やバーテンダー、アルバイト、お店のロゴを作ってくれた人までTwitter経由で集まったそうです。

そしてここに、重要な要素が含まれていることに気付いたでしょうか。Twitter経由でスタッフが集まったということは、つまりこのバーの運営に関わっている人たちは全員「投資経験者」というわけ。「投資家が集まるバー」というコンセプトは形だけのものではなく、スタッフも含めて実現されているのです。
「お客様も運営も、みんな投資家というのを意識して店舗運営はしています。そのため人の採用には苦労しましたね。『株式投資ができる』というのを条件にしていたので…。
飲食店経験者やバーテンダー経験者ということであればたくさんいると思うんですが、『株式投資もやっている人』というとかなり数が限られてしまって。
しかもコロナ禍で情勢が不安定ななか、これからオープンするというお店に正社員としてフルコミットしてくれる人を探すのは苦労しましたね」
しかしこのコンセプトのおかげで、STOCK PICKERSはオープン以来、投資家の間で大いに話題になっています。
話題性の一つとしてぜひ紹介したいのが、インテリアのこだわり。もっとも目立つのは大型モニターに表示されているチャートですが、それ以外にも、そこかしこに「投資家ならわかる」ネタがちりばめられています。
例えば、暖炉の上に豚の人形が置かれているインテリアがあるのですが、それに付けられたタイトルは「URIBUTA(売り豚)」。相場が下がると見て売りポジションを持つ人のことを俗に「売り豚」と言いますが、そんな売り豚が上昇相場によって「焼かれている」状態を揶揄した、投資家ならばクスッと笑えるインテリアです。

メニューを開いても、そんなネタが目白押し。「青天井」「下ひげ陽線・陰線」「追証」「リーマンショック」…といった、投資家であれば誰もがクスッと笑ってしまうネーミングのオリジナルカクテルが並びます。

↑オリジナルカクテルのひとつ「下ひげ陽線/陰線」
「何かしら投資家が楽しめるコンテンツは用意しなくてはいけないなと思っていて、そのために考えたのがオリジナルメニューです。
これはオープン前にTwitterで『メニューを考えてくれる方を募集します』と案内を出して、40~50人の方に集まっていただいたんですね。そういった方々のアイデアを吸い上げてメニューは作っています」
Section2 さまざまな投資家がつながる場
コンセプトやメニューなどの話を聞いて「おもしろそう、行ってみたい」と思った人も多いことでしょう。しかし一方で「1人で行ったら浮いてしまいそう」「初心者が行ったら浮いてしまいそう」などと不安を感じてしまう人もいるのではないでしょうか。
結論から言うと、そんな心配はまったく無用。1人客や初心者も非常に多いそうです。
「他の投資家とつながりたいという目的で、1人で来られるお客様も多いですね。ですので、スタッフがそういう人たちをつなげることを意識しています。例えばカウンターに座っているお客様同士だったらテーブルに座っていただいて、『みなさんでお話しませんか』とか。間にスタッフが入って『私はこんな投資をしてるんですが、どういうものをやってますか』と会話に混じらせてもらったりもします。
基本的には株をやっているお客様が多いのですが、FXや暗号資産(仮想通貨)の方もいますし、不動産投資をやっている方もいらっしゃいます。
証券口座を作ったばかりといった初心者の方もいらっしゃいますよ。基本的にはスタッフが、コミュニケーションの潤滑油のような役割をさせていただいています」
初心者の中には「何か怪しい投資に勧誘されたりしないだろうか」という不安を持つ人もいると思いますが、これに対しても厳重な対策が取られています。
「営業や勧誘はかなり厳しく取り締まっています。私たち自身も何かを売るということはないですし、お客様にも営業・勧誘行為はいっさい禁止しています。もしもそういう行為が確認されたら出入り禁止にしますと明言しています。
お店をオープンするときにも『詐欺に遭うんじゃないか』『何かに勧誘されるんじゃないか』という不安の声は多かったので、その不安を解消できるように、投資家の皆さんが安心して楽しめる場にしようというのが最優先でした。今のところ被害報告などは出ていませんし、今後も厳しく取り締まりを続けていきたいと思います」
そもそもお店のスタッフたちは全員投資家であり、集まるお客さんも投資家ばかりという環境です。お客の中には初心者もいますが、同時にプロの投資家もいることを忘れてはいけません。投資詐欺を持ちかける側にとってみれば、こんなにもウソがバレやすい場所はないとも言えるでしょう。
実際、STOCK PICKERSが現在の場所(東京・銀座)に店舗を構えたのは「機関投資家も集まりやすいように」という意図によるものだったとか。
「基本的には個人投資家さんが集まるお店なんですけど、できれば個人投資家さんだけじゃなくて機関投資家も混ざれるようにしたい。機関投資家同士のネットワークができたり、『機関投資家と個人投資家がつながる場所』になれたらいいなと思っていて。
そういう意味で、機関投資家が集まりやすい場所はどこかなと考え、新橋・銀座・有楽町エリアを選びました。というのも、金融機関が集まっているのって六本木と東京駅周辺なんですよね。最近では虎ノ門に集まってくる金融機関もあるということで、六本木・東京駅・虎ノ門に一番アクセスしやすい中間的な場所はどこかなと思い、現在の場所を選びました」

Section3 日本に投資を普及させるために
お話をうかがっていく中で、実は上原さんは「過去に投資詐欺に遭ったことがある」ということを教えてくれました。そして、それを防ぐためには「リアルなコミュニケーション」が大切だと強調します。
「投資詐欺に遭うっていうのは、相談する人がいないっていうことも大きいと思うんですよね。詳しい人に相談すれば防げた詐欺ってたくさんあると思うんです。そういう意味で、このお店によって投資家同士のネットワークがつながり、相談できる環境になればいいなと思います」
STOCK PICKERSは、スタッフとお客、そしてお客同士がコミュニケーションを取れる環境になっています。投資に関する情報交換はもちろん、「不安や悩みがあったときに相談できる」という意味においても、大きな意義があるのではないでしょうか。
最後に、上原さんがこのお店によって「目指しているもの」をうかがってみました。
「株式投資には怪しい情報も多いし、何を信じていいのかわからない。ネットの情報だけだと誰を信じていいのかわからないという人も多いと思います。そんなときに、リアルに相談できる人がいれば始めやすいと思うんですよ。Twitterで見ず知らずの人に教えてもらうよりもリアルで教えてもらうことの方が信頼できるし、行動にも移しやすいと思うので。
最近は個人投資家が増えてきたと一般メディアにも取り上げられるようになってきてはいますが、なんだかんだ言っても実際に株式投資をやっている人はまだ少ないのが現状だと思います。ですから、株式投資を普及させることに少しでも貢献できたとしたらとても嬉しいですね」
「周囲に誰も相談できる人がいない」という、日本の投資家たちの悩みを解決する一助になる投資家バー『STOCK PICKERS』。日本に投資文化を根付かせるためにも、ぜひ応援したいお店です。気になる人は、そのドアを開けてみてはいかがでしょうか。
・店舗情報
投資家バー STOCK PICKERS
https://stockpickers-bar.com/
住所:東京都中央区銀座8-2-14 竜王ビルV 4階
(新橋駅の銀座口から徒歩5分)