投資初心者が知りたいETFのメリットとは?関連する「金融緩和政策」も解説

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お話をうかがった人

監修者

中京大学 教授

小林 毅

1969年生まれ。名古屋大学大学院修了、博士(経済学)。専門分野は金融論、保険論。著書に「金融機関の経営と株式市場」(勁草書房)、「はじめて学ぶ保険の仕組み」(共著、中央経済社)等。近年は日銀のETFやJ-REIT買い入れが資産価格に与えた影響や、金融機関の合併・統合の効果について研究中。

投資信託といえば証券会社や銀行の窓口やネットで購入するイメージがありますが、実は株式と同じように市場で取引できる種類もあります。それがETF(上場投資信託)です。このETFには、どのような特徴があるのでしょうか?

またETFは、日本銀行がたびたび購入して話題にも上っています。なぜ日本銀行はETFを購入していて、それは市場に対してどのような影響があるのか?ファイナンスの専門家である、中京大学の小林毅教授に話うかがいました。

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Section1 投資信託よりも比較的新しい「ETF」

ETFは「Exchange Traded Funds」の略で、「上場投資信託」とも呼ばれています。日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)など、特定の指数に沿って値動きする「インデックス運用」をされているものが一般的です。

このETFと投資信託の違いは何でしょうか?小林先生にうかがいました。

「まずETFは、企業の個別株と同じように株式市場で売買できます。売値や買値を自分で決めることももちろん可能です。これに対して投資信託は1日1回までの取引しかできず、約定する価格もリアルタイムでは分からないという制約があります。

次に手数料面も異なります。投資信託では販売手数料や信託報酬などの手数料が設定でき、比較的コストがかかりやすいのですが、ETFでは運用中の信託報酬しかかかりません。ただ取引する証券会社の取引手数料がかかる可能性があります。

同じ指数に連動する投資信託とETFのどちらを購入するかは、この取引方法と手数料面から比較、検討するといいでしょう」

ETFになじみがない方も多いかもしれませんが、それもそのはず。ETFが日本に普及したのは2007年12月に金融庁が「金融・資本市場競争力強化プラン」を発表し、さまざまなETFが発行できるようになってからだそうです。現在も投資信託の方が知名度は高いそうですね。

Section2 日本銀行がETFを購入する影響とは

そんなETFは近年、日本銀行によって実に約35兆円も購入され、現在もその残高が増加しています。この買い入れはなぜ行われているのでしょうか?

「目的はシンプルで、日本の株価を安定させるためですね。これまで日本銀行が行う施策は、伝統的な金融緩和政策である「金利引き下げ」でした。金利を引き下げ、債券の魅力を下げることによって、相対的に株の価値を引き上げる内容です。

しかし2010年、当時日本銀行の総裁だった白川方明氏が初めてETFの買い入れを行って以降、現在まで断続的に続いています」

この株式相場への介入は非常に珍しく、「中央銀行が株式市場に介入する根拠は何か」「市場に対してどのような影響があるのか」などの議論を呼びました。この議論は現在も行われていて、論文もいくつか発表されているそうです。

この日本銀行の株式相場介入は、本当に良いことなのでしょうか。たしかに株価が高く維持されていれば、企業業績にはプラスに働く可能性があります。しかし小林先生のような研究者の観点からは、株価は企業の価値を正しく反映した数値であってほしいそう。

不景気によって業績が悪化し、株価が下がるのは自然の流れでもあります。よってETFを買って株価を意図的に維持させるのは、経済全体から見てプラスなのか、たしかに議論が必要だと感じます。

現状行われている金融緩和施策の概要についても、簡単に教えていただきました。

小林先生「バブル以降の金融緩和政策は金利引き下げが中心でしたが、現在はゼロ金利に近い超低金利状態のため、この施策は効果が薄くなっています。

そこで1999年の「ゼロ金利政策」以降、インフレ率の上昇を意識した施策が取り入れられました。インフレ率が上昇すると実質的な金利が下がり、景気を刺激すると考えられています」

これ以上下がらない名目金利ではなく、インフレ率を加味した実質金利にアプローチしているのが、このインフレ率の上昇政策です。目標のインフレ率は2%ですが、現状は1%を下回っている状態。コロナ禍の影響もあり、この目標達成はまだ先になりそうですね。

ちなみにインフレ率が上がった場合、食料品や日用品といった物の値段だけでなく、私たち労働者の賃金も同じようなカーブで上がっていくことが想定されています。よって物の値段だけ急激に上がるというのは、好ましくない現象です。

不況によって物の値段が下がると、相対的にお金の価値が上がり、物を持っていることが損になってしまいます。そして人々は物を買わずに現金を貯め込むように。こうなると経済にとっては悪影響があるので、インフレ率はある程度の水準でキープされた方がいいのだそうです。

Section3 金融引き締め政策はいつやってくる?

このコロナ禍で、日本銀行が多くのETFを買い入れた結果、「日本銀行はETFをいつ売却するのか」という出口戦略が取り沙汰されるようになりました。この出口戦略が始まると、ついに金融緩和政策から「金融引き締め政策」に転換することを意味します。この転換期はいつ訪れるのでしょうか?

小林先生「ETFを売却して金融引き締め政策に転換するのは、まだかなり先だと考えています。日本銀行がETFを売却するまでには、それなりの議論が為される必要がありますが、まだ何も始まっていないからです。

また現状では目標インフレ率2%も達成できていないですし、コロナ禍で大きな打撃を受けている業種もあります。この状態で引き締めるのは難しいでしょうね」

ETFの買い入れ頻度が減少したり、借入の上限額が下がったりすることは考えられます。しかしそれが金融引き締めを意味するわけではないそうです。

また2021年3月23日には、日本銀行はETFの買い入れ銘柄を変更し、TOPIX連動型ETFに一本化する方針を発表。こちらも大きな反響がありました。

※出典:日本銀行「ETFの買入れの運営について」

この変更については、日経225銘柄に対する日本銀行の影響力が大きくなりすぎることを危惧したものではないか、という意見が多いそうです。

小林先生「現状、日経225銘柄に関しては日本銀行の指示を受けた運用会社が、一定の株式を保有しています。運用会社は基本的に株主総会に積極関与はしません。その結果、企業のガバナンスに悪影響を与えているのではないか、という指摘もあります。

現在のETF買い入れはある意味、業績の悪い企業を救済しているとも言えるのです。これが本当に企業の経済活動や市場全体にとって良いことなのでしょうか?ここには議論の余地がかなりあると考えています」

Section4 地方銀行の減少は、利用者にとって悪影響

小林先生は、政府の金融政策が地方銀行などの金融機関に与える影響に関しても、研究されています。現在のような低金利状態が続いた場合、地方銀行や信用金庫など、体力の少ない金融機関にとってはつらい局面になります。そしてその影響は、ユーザーである地域住民にも及んでしまうと危惧されていました。

小林先生「金融機関は現在のような金融緩和政策が続いた場合、金利による収入が期待できないため、地方銀行同士の合併や経営統合によって基盤を維持しようとしています。

同じ地域の金融機関が合併して、徹底的な店舗削減や人員削減を行うなら効果が高いと思います。しかし近年散見されるのは、そこまでコスト削減を行わない合併や、エリアの重ならない地方銀行との経営統合です。

こうなると経営体質の改善はかなり難しく、結果的に金融機関が潰れ、その地域に金融機関がなくなってしまう可能性はあるでしょう」

しかし地域住民としては、地域の銀行は残っていてほしい。となると起こり得るのが、利用者へのサービス悪化です。実際に長崎エリアでは、有力な地方銀行が合併した結果、巨大シェアの銀行が誕生し、融資金利の上昇などの懸念があります。

金融機関が多すぎることには実は意味があり、金融機関が少なくなればその悪影響をこうむるのは地域の利用者だということ。そんな未来を考えると、早々に景気が良くなってほしいと祈らずにはいられません。

最後に、現在の市場環境における資産運用のポイントを伺いました。

小林先生「この金利状態では、預貯金による資産形成はかなり難しいです。さらに日本は今後、人口減少により大きな発展も見込みにくいでしょう。

もし資産運用を行うなら、投資信託やETFで海外株や海外指数にインデックスする商品を購入し、長期運用するのが無難だと考えています。余裕資金で長期的に投資してみてはいかがでしょうか」

ETFや投資信託を上手に活用し、市場環境をよく観察しながら長期的な投資を進めていこうと感じました。

執筆:金指 歩

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