津波の被害は火災保険で補償される?地震保険についても解説
更新日:2019/02/02
掲載日:2019/02/02
南海トラフ巨大地震が今後30年のうちに約70%の確率で発生すると言われている今、地震で起こる津波の対策を入念に考える必要があります。もし津波で家に甚大な被害が出たとき、火災保険では補償されず、火災保険に付帯する地震保険から補償されます。
津波は火災保険で補償される?
津波の被害補償は地震保険の加入が必要
津波被害は一度発生すれば、広範囲の地域の建物そして人命に重大な事態を及ぼす大災害となります。
これは、東日本大震災に関するインターネットやTVの報道でもご存知の通りでしょう。
しかし、津波の被害補償は火災保険では対応できず、「地震保険」に加入してその被害へ備える必要があります。
こちらでは、地震・噴火・津波による損害を補償する地震保険の特徴等について解説します。
地震・噴火・津波による損害を補償する地震保険の特徴
地震保険は、地震・噴火が原因となる建物または家財への損害を補償対象とする商品です。
地震保険の補償対象
- 地震による建物の火災による焼失
- 地震による建物の損壊や倒壊
- 地震による津波で建物の流出
- 地震による家財の損壊
ご自分が地震・噴火・津波だけに備えたくても、必ず火災保険には加入しなければなりません。
地震保険の保険金額
地震保険の保険金額は、実のところ火災保険と全く同一ではありません。
地震保険の保険金額は、火災保険金額の30%~50%で設定され、更に建物ならば5,000万円、家財は1,000万円の上限が設定されています。
地震の損害認定の違いで、受け取れる保険金額が次のように異なります。
(例)火災保険金支払限度額1,200万円、2017年1月1日以降始期契約の場合
- 全損認定:保険金額600万円(時価限度)
- 大半損認定:保険金額360万円(時価の60%限度)
- 小半損認定:保険金額180万円(時価の30%限度)
- 一部損認定:保険金額30万円(時価の5%限度)
保険料と割引制度
地震や津波は一度発生すると広範囲の地域と人に甚大な被害を与えます。
そのため、より的確なサポートの必要性から、地震保険は国・保険会社が共同で運営している仕組みとなっています。
保険料は均一?
どの保険会社の地震保険へ加入しても、最終的には「政府+損害保険会社」が共同で補償する形となります。
つまり、地震保険の補償内容や保険料は均一となってしまいます。
しかし、保険料に関しては、震災リスクの高まりに合わせ各地域の保険料改定が行われ、各都道府県により保険料の違いが出ます。
地震保険には割引制度がある
地震保険は建物の免震・耐震性能や建築年月に応じた保険料の割引制度が設けられています。
割引内容は次の通りです(保険始期が2017年1月1日以降の地震保険契約の場合)。
- 免震建築物割引:建物が、住宅の品質確保の促進等に関する法律に基づいた免震建築物である場合は、保険料の50%が割引となります。
- 耐震等級割引:耐震等級が高いほど割引率がUPします。耐震等級3→50%、耐震等級2→30%、耐震等級1→10%となります。
- 耐震診断割引:地方自治体等による耐震診断または耐震改修の結果、耐震基準を満たすと判断された場合、保険料の10%が割引となります。
- 建築年割引:昭和56年6月1日以降に新築された建物である場合は、保険料の10%が割引となります。
津波での被害で保険金がおりた例
こちらでは津波の被害で保険金が下りた例を取り上げます。
ケース1
火災保険の「費用保険金」は津波被害で使用できる?
いざ損害が発生すると、火災保険で損害を補償することの他に、損害額以外にもいろいろな費用がかかることもあります。
燃えた建物や家財の撤去費用が代表例といえます。
その損害時の様々な費用を、保険金額の枠外で受け取れるのが、火災保険の「費用保険金」と呼ばれる補償サービスです。
火災保険の中には「地震火災費用保険金」という補償があます。
こちらは、地震・噴火またはこれらによる津波が原因で火災が起きた場合に、いわば見舞金という形で受け取ることが可能です。
ただし、地震火災費用保険金を設定しているほとんどの火災保険では、「契約保険金額の5%」を上限としている場合が多いです。
そのため、受け取ることができても生活を再建できるだけの金額とはいえません。
地震・噴火や津波による被害の補償は、あくまで地震保険に加入して備えることが必要です。
補足:高潮などの水災は火災保険でカバーできる
津波と似たような被害が生じるおそれのあるものに「高潮」があります。
こちらも地震保険で補償されるのでしょうか?
実は高潮の場合、火災保険の補償範囲の一つである「水災」に該当します。
どの火災保険でも「水災:台風・豪雨等による洪水、高潮、土砂崩れによる被害」として、明記されています。
地震保険に関するよくある疑問を2つ解説
地震保険へ加入しても気になるのは損害が発生した場合、保険金が下りないケースはあるのかということでしょう。
こちらでは、
- 地震保険において補償金がおりないケースとは?
- 地震保険の補償金請求方法とは?
を取り上げ解説します。
1:地震保険において補償金がおりないケースとは?
地震保険というからには地震と全く関係のない損害の場合には、補償対象外となります。
地震保険金が下りないケースは次の通りです。
- 保険契約者や被保険者が、故意もしくは重大な過失または法令違反で発生した損害
- 保険の対象が紛失または盗難された場合
- 戦争、外国の武力行使、革命、政権奪取、内乱、武装反乱その他これらに類似の事変または暴動
- 核燃料物質もしくは核燃料物質によって汚染された物の放射性、爆発性その他の有害な特性またはこれらの特性による事故
- 地震が発生した日の翌日から起算して10日を経過した後に生じた損害
2:地震保険の補償金請求方法とは?
地震・津波等による損害が発生した場合は、加入している保険会社のサポートセンターへ連絡し指示に従います。
その後、保険会社の被害状況の確認や、ご自身が必要書類を提出するなどして保険金請求手続きが進められます。
保険会社に提出する必要書類は次の通りです。
- 保険金請求書:保険会社等から送付されてきます。必要事項を保険加入者が記載します。
- 事故状況説明書:保険会社等から送付されてきます。損害の発生した旨をなるべく正確に記載します。
- 修理見積もり書:修理業者に作成してもらいます。
- 被害状態の写真:修理業者に作成してもらいます。
被災者生活再建支援制度と地震保険の兼ね合いにも注目
被災者生活再建支援制度とは、自然災害により、生活基盤に著しい被害を受けた世帯に対し、支援金を支給し、生活の再建を支援する制度です。
被災者生活再建支援制度の支給額は、基礎支援金と加算支援金、2つの合計額になります。
被災者生活再建支援制度の支給額
①基礎支援金
住宅の「被害程度」に応じて支給する支援金となります。
支援金額は次の通りです。
被害程度 | 複数世帯 | 複数世帯 |
---|---|---|
全壊 | 100万円 | 75万円 |
大規模半壊 | 50万円 | 37.5万円 |
解体 | 100万円 | 75万円 |
長期避難 | 100万円 | 75万円 |
②加算支援金
住宅の「再建方法」に応じて支給する支援金となります。
支援金額は次の通りです。
再建方法 | 複数世帯 | 複数世帯 |
---|---|---|
建設・購入 | 200万円 | 150万円 |
補修 | 100万円 | 75万円 |
賃貸(公営住宅を除) | 50万円 | 37.5万円 |
地震保険を補完
地震保険金額は、火災保険金額の30%~50%までに制限されてしまうため、必ず保険金額だけで生活再建できるとは限りません。
そのため、ご自分の建物等が津波等で被災した場合、被災者生活再建支援制度の存在を知っていることが大切です。
地震保険の他、こちらの制度と併用して金銭的なサポートが受けられます。
まとめ:火災保険の地震保険付帯で津波対策をしましょう
津波の被害補償のために加入する地震保険の必要性について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。
今回の記事のポイントは
- 地震保険は地震・噴火・津波による損害を補償するが、火災保険金額と同額が保障されるわけではない
- 地震保険は建物の免震・耐震性能や建築年月に応じた保険料の割引制度が設けられている
- 地震・津波等の自然災害で被害を受けた場合は、被災者生活再建支援制度も活用する
ご自宅を持つ皆さんにとって、火災のみならず落雷や風災、雪災、水災のような自然災害も、無視できない心配の種と言えます。
一度発生すれば地域に甚大な被害を及ぼす津波も、火災保険で補償されるのならば、ご自分・家族は非常に安心できますよね。
しかし、津波は火災保険だけでは補償対象外となってしまうことをご存知でしょうか。
津波被害からご自分の建物や家財が補償されるためには、「地震保険」への加入が必要不可欠です。
そこで今回は「津波の被害補償のために加入する地震保険の必要性」について