販売停止の節税保険は遡及解約される?法人税節税のその他の方法は?

先日、国税庁の通達により日本生命をはじめ生命保険各社が法人向けに販売されていた生命保険(通称節税保険)の販売停止を発表しました。本記事では、節税保険の販売停止の経緯や節税保険以外の法人税の節税方法に加え、知っておくべき退職金の準備方法について解説します。

法人向け全額損金節税保険が販売停止に!今後の節税はどうなる?

節税保険を検討されているかたにとって寝耳に水ですが、2019年2月13日ついに国税庁が節税保険へ「待った」をかけました。


2017年始めころから続いていた節税保険ブームは過熱の一途をたどっており、いつ国税庁から是正の通達が来るのか各保険会社はある意味楽観視しながら待っていたのですが、いざフタを開けてみると各生保が青ざめるような内容になったかたちです。


ここ数年、各生保の主力となる商品は「節税保険」であり、いかに節税効果がある商品として販売するかが鉄板の営業トークであり、保障が二の次であった感は否めません。


そこで今回は、全額損金節税保険の販売停止を踏まえ

  • 法人向け節税保険の遡及解約の可能性
  • 全額損金節税保険以外の問題視される法人保険
  • 全額損金節税保険が販売停止になった経緯
  • 全額損金節税保険以外の節税や退職金準備の仕方

について解説していきます。


今回の記事を読めば、全額損金タイプの節税保険の問題点から今後の節税対策や退職金をどのように準備していけばいいか理解することができます。


ぜひ最後までご覧ください。


法人向け節税保険が遡及解約される?いままでの契約も危ない?

販売停止された法人向けの全額損金節税保険ですが、実は遡及解約にまで発展する可能性があります。


というのも今回の法人向け節税保険では国税庁から「いたちごっこを解消したい」旨を示唆されたこともあり既契約遡及される可能性が強まったからです。


既契約遡及とは簡単に説明しますと過去の契約にも新しいルールを適用することをさし、今回各保険会社が青ざめた原因の一つになります。


過去には2012年にがん保険が、2008年には逓増定期保険が全額損金から半額損金に変更となりましたが既契約遡及には至らなかった経緯があり、今回も通達以後の適用だと思われていました。


しかし「いたちごっこを解消したい」という言葉からも読み取れるように今回のルール変更によりルールの目をかいくぐった節税目的の法人保険を無くしたいことから既契約遡及に踏み切る可能性が出てきのです。


もし既契約遡及となった場合元々全額損金として契約した保険が半額損金となり、販売停止となった保険商品ということも相まり遡及解約となる可能性が高いといえます。

全額損金の節税保険以外で問題視されている法人保険

今回全額損金の節税保険が一斉に販売停止になりましたが、実は問題視されているのは節税保険だけはありません


保険というのはそもそも保障があってこその保険ですので逆ハーフタックスプラン低解約返戻金型の名義変更プランといった過度な節税を目的とした法人保険も今回の節税保険同様販売停止におちいる可能性があります。


過度な節税を安易に期待して年度末に駆け込み契約するのは危険ですので、もしこれらの法人保険を検討しているのならば注意が必要です。

養老保険逆ハーフタックスプラン

法人向け養老保険逆ハーフタックスプランとは税法上、全額損金算入できるタイプの養老保険を利用した節税対策のことをさします。


これは法人向けの養老保険が死亡保険金満期保険金の受取人によって保険料の扱いが変わるのを利用し、死亡保険金の受取人を法人(1/2を事業保障)、満期保険金の受取人(1/2を福利厚生)を被保険者にして全額損金算入させる方法のことをいいます。


一見合法と思われる節税対策ですが、実は税法上の根拠が全くありません


というのも本来死亡保険金の受取人を法人にした場合、保険積立金と解釈され1/2を資産として計上されるべきだからです。


今のところ明確な否認はありませんが今回の節税保険の販売停止の流れで国税庁から否認する通達が出る可能性があるといえるでしょう。

低解約返戻金型逓増定期保険

低解約返戻金型逓増定期保険とは長期平準定期保険に似た法人保険で、変則的な解約返戻金の変移から退職金を効率的に準備できると人気だった保険です。


一般的な定期保険とは、数十年単位の長期的な契約となる定期保険で、死亡保険金がずっと同額、解約返戻金のピークが長い、1/2損金算入などの特徴があります。


これに対し低解約返戻金型逓増定期保険は、長期的な定期保険には変わりありませんが、保険料が低く設定されており、またピークに向かうまでの解約返戻金が極端に低く抑えられている定期保険で、ピークで100%以上へ急激に跳ね上がりそこから満期まで急激に下がっていくことが特徴といえます。


これを利用した節税対策が低解約返戻金型の名義変更プランでピークになる直前で名義を法人から個人へ変更することにより税負担を少なくする方法です。


この方法は札幌高裁が2017年に否認する判決を出したことからも脱税と見なされる可能性もあり、危険な方法といえます。

法人保険が自社にあったものか見直しを行う必要がある!

法人保険に入る目的は本来では保障福利厚生資金積立などであり、節税が全面に出てくることは保険の正しいかたちではありません。

さまざまな方法で節税対策を取り入れた保険が出ていましたが、納税の繰り延べであるだけの商品がほとんどを占めています。

会社のキャッシュフローなども検討材料として取り入れ自社にあった法人保険に見直しをしていく必要があるといえるでしょう。

全額損金の節税保険が販売停止になった経緯

今回の法人向け全額損金節税保険が販売停止におちいった経緯は次のようになっています。

もともと法人向け節税対策の保険は何度か流行るたびに国税庁からの通達で収束することを繰り返していたのですが、2017年に日本生命が販売した全額損金節税保険プラチナフェニックスが大ヒットしたことが今回の起点となります。

長期定期保険の1つであるプラチナフェニックスは全損高返戻率ということで注目され、各保険会社もこぞって節税保険商品の販売に乗り出し市場が爆発的に拡大したのです。

しかし2018年11月、節税効果を強調した販売法の横行や付加保険料の扱いを金融庁が問題視しはじめ、節税保険市場に若干の陰りが見えはじめます。

ただし、あくまで販売法や金融庁の認可がいらない付加保険料についてなので保険自体は問題ないと業界はたかをくくっていましたが、2019年2月13日に国税庁が各保険会社の担当者を集めた会議で節税保険の課税方法の見直す考えを伝えたのです。

ただ過去にも何度か課税方法の見直しがあり、そのたびに各保険会社は隙間を縫うような商品を開発してきましたが、今回発したいたちごっこを解消するという強い言葉から既契約遡及に踏み切る可能性も示唆され各保険会社が節税保険の販売停止に踏み切ったのです。

国税庁が全額損金の節税保険を販売する保険会社に通達した内容

国税庁が各生命保険会社の担当者に通達した内容は

  • 個別の損金算入割合の通達廃止
  • 新たな算入ルールは返戻率50%を超える商品が対象
  • 返戻率のピークに合わせて損金算入率を区分け

になります。


簡単に要約すると、今まで個別にあった通達を廃止して返戻率の高い商品に対して新たなルールを設けるということになります。


個別の通達を廃止するということなので国税庁が抜本的に節税力のある法人向け保険にたいしメスを入れたといえるでしょう。

自身で認可したにも関わらず金融庁が全額損金の節税保険を問題視

法人保険の設計には金融庁の認可が必要なので各生命保険会社が販売していた全額損金の節税保険はお墨付きの商品だったはずです。


ですが今回金融庁が問題視したのは付加保険料という認可を必要としない部分についてだったのです。


保険料は保険金や返戻金の支払いからなる純保険料と保険事業を営む上で必要な経費に使われる付加保険料からなりたっています。


商品設計は金融庁の認可がいると前述しましたが、それにあわせ保険料や返戻金を極端に高く設定することはできないはずですが、各生命保険会社は認可のいらない付加保険料を契約後期に多く割り振ることで保険料と返戻金の水準を引き上げていました。


保険料は平準化されていますので結果として前期は狭い保障に対し割高な保険料となりるわけですが、その分節税効果は大きく、また返戻率のピーク時に解約すれば高水準の解約返戻金を受け取ることが出来るため退職金や設備投資の準備に回すことにより課税を防ぐことができます。


ただ、節税対策でのメリットが全面に押し出された節税保険は「合理性を欠く」として金融庁から問題視されたわけです。

生命保険会社と国税庁の間で続けられたいたちごっこ

生命保険会社と国税庁との損金算入の割合における攻防は2006年までさかのぼることができます。


当時、ケガの入院や通院費用などを保障する法人向けの長期障害保険は全額損金算入できるうえ返戻率のピークに解約すれば100%以上の返戻金を受け取ることができたのですが国税庁より「保険料の前払い性が強い」と判断され全額損金から1/4損金へ変更との通達があったのです。


同じように2008年には法人向けがん保険、2012年には逓増定期保険が全額損金処理から半額損金処理に変更する通達があった保険で、どの保険も今回の節税保険同様、全額損金算入のうえピーク時に高い解約返戻金を受け取れるのが特徴でした。


国税庁から是正ともとれる通達がでるたびに別の保険で新たに損金算入を利用した商品を開発し、まさに言葉通りいたちごっこの状態だったわけです。


今回2017年に登場したプラチナフェニックスを発端とした節税保険の騒動は結果として全額損金の法人保険のあり方について国税庁がメスを入れる結果となったのです。

全額損金の節税保険以外の節税方法、退職金準備方法とは?

今回の国税庁からの通達により全額損金の節税保険には抜本的な改革がおこなわれることとなりましたが、今後の節税方法はどうなるのでしょうか?


全額損金の節税保険は節税対策以外にもピーク時の高い返戻金を利用した退職金の準備にもなったわけですので、こちらの法人向け保険がなくなるというと節税対策や退職金準備に不安を感じる経営者のかたも多いと思います。


実際節税保険がこれほどまでにもてはやされたのは他に同様レベルの節税対策や退職金準備がとれる保険がなかったからであり、節税保険一択で商品の検討をされていた経営者のかたも多かったのです。


ですが実際は退職金準備や節税にかんして全額損金の節税保険以外にも検討の余地がある節税方法はさまざまありますのでここでは代表的なものを何点か解説していきます。

全額損金の節税保険以外の節税方法について

全額損金の節税保険以外にも有効な節税方法はいろいろとありますが、節税保険があまりにも有名になりすぎて他の節税方法を検討したことがない経営者のかたもいらっしゃると思います。


他の法人保険を検討するのも手ですが法人保険以外でも、共済の加入や別会社設立などさまざまな手法がありますので解説します。


中小機構の共済に加入する

中小機構には代表的な共済として小規模企業共済中小企業倒産防止共済があり、小規模企業共済の掛け金は全額所得控除、中小企業倒産防止共済の掛け金は経費として処理することができます。

受け取った解約金はどちらも収益扱いとなるため受け取るタイミングが重要といえます。


設備や人材へ投資する

設備投資や人材への投資は税額控除の期待できる節税方法といえます。


設備投資に関しては中小企業経営強化税制が、人材への投資は所得拡大促進税制雇用促進税制という制度が対象となります。


別会社を設立する

別会社を設立すると軽減税率が適用されるため節税には効果的です。


また会社設立から2年までは消費税が免除されますし別会社を利用すれば交通費や接待費の枠も広がるといった部分でも節税が期待できます。


オペレーティングリースを利用する

オペレーティングリースとは匿名組合が出資をつのり旅客機や船舶などを購入し航空会社や船舶関係の会社にリースし、その支払いに応じた金額を2年程で全額損金算入させつつリース満了時には100%以上の益金を得られる方法です。


節税対策として効果が高いので検討の余地は十分にあるといえるでしょう。


飲食代、交通費、旅費などを経費で落とす

飲食代や交通費は中小企業なら年間800万円まで損金算入することができます。


また出張費用などの旅費は社内規定さえ作成すればこれも経費で落とすことが可能です。


出張や会社に関わる飲食が多い会社ではぜひ検討したい方法といえます。


福利厚生を充実させる

社員旅行や健康診断などは福利厚生費として損益に参入可能です。


4泊5日旅費10万以内や全員平等に参加名などそれぞれ細かい規定はあるものの、福利厚生は社員の信頼が増しますのでモチベーションアップにもつながります。

全額損金の節税保険以外の退職金準備方法について

退職金の準備に関しても全額損金の節税保険以外にも対応する方法があります。


代表的な方法をいくつか解説しますので是非ご覧ください


経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)

全額損金算入できるとして節税対策としても紹介しましたが40ヶ月以上の契約であれば解約手当金は100%となりますので退職金の準備方法としても利用価値の高い共済になります。


他にも連鎖倒産を防ぐために取引先の倒産時に借り入れが出来たり、無担保で借り入れができたりとメリットの多い共済といえるでしょう。


小規模企業共済

小規模企業共済とは個人事業主や会社の役員が事業を退職したさい、それまでに積み立てていた解約手当金を退職金として受け取る共済の制度となります。


保障が薄く、解約手当金の返還率が100%を超えるまで20年以上かかるのですが返還率は最大120%(60年)と高く、所得控除による節税効果も期待できる共済といえます。


中小企業退職金共済

中小企業退職金共済は全額損金算入できるうえ、最初の9ヶ月間は国が掛け金の半分を援助しれくれる共済になります。

また退職金を法人が受け取ることは出来ず、あくまで個人に支払われますのでまさに退職金のための共済だといえます。

法人保険のニュースに生命保険会社や代理店は大打撃

今回の法人向け全額損金節税保険の販売停止により生命保険会社や代理店は存続が危ぶまれるほどの大打撃を受ける可能性があります。


そもそも今回の販売停止は一時的なものだという観測もあり一見すると一時的な我慢で乗り切れるようにも思えますが一部の生命保険会社にとってはまさに死活問題です。


というのも契約の大部分が今回規制対象となる返戻率50%の節税保険で占めている生命保険会社も一定数存在し、今のまま販売停止の状態が続くと売る商品がほとんどなくなってしまいます


そういった生命保険会社の多くは国税庁との会合後も商品を販売していましたが既契約遡及を示唆された途端渋々と販売をやめていったのです。


また今後通達により本格的な販売停止に陥った場合契約の早期解約も考えられ、そうなると代理店も含めいよいよ本格的に行き詰まり感が業界に広がると考えられます。


これは生命保険会社の多くが手数料を代理店に支払って販売してもらっているため、もし早期契約ともなると代理店は高額な手数料を生命保険会社に返さなければならず、生命保険会社も費差益がマイナスとなってしまうからです。


それどころかもし既契約遡及となった場合、遡及解約も一定数出てくると考えられますのでダメージは計り知れません。

まとめ:法人向けの全額損金節税保険の販売停止

法人向け全額損金節税保険の販売停止に関する詳しい解説をしましたがいかがでしたでしょうか?


今回の記事のポイントは

  • 法人向け節税保険は遡及解約となる可能性がある
  • 逆ハーフタックスプランや低解約返戻金型名義変更プランも問題視
  • 発売停止となった節税保険はプラチナフェニックスが発端
  • 返戻率50%を超える保険の商品は今後全額損金できない可能性あり
  • 節税保険以外に節税対策や退職金準備が必要

になります。


今回の節税保険の販売停止により、改めて節税や退職金準備の方法を考え直さなければならなくなりました。


むしろ抜本的に全額損金の法人保険が見直されることによって、本来の保険の姿である保障や福利厚生に重きにおいた商品展開に流れが戻る可能性もあります。


節税一辺倒の法人保険は淘汰されていくとも考えられますので法人保険と節税対策、退職金準備を改めて検討していきましょう


ほけんROOMでは、他にも読んでおきたい保険に関する記事が多数掲載されていますので、ぜひご覧ください。

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