病院の開業に必要な保険とリスク!開業医になったら入るべき保険を紹介

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病院を開業するとなった場合、自分の病院が持てるという希望と同時に、様々なリスクがありますよね。医療ミスや事故、自然災害の被害、自分が働けなくなったらなど常に不安はつきまといます。そのようなリスクに備えて賠償保険や休業補償、火災保険などを見直しませんか?






▼この記事を読んで欲しい人
  • 開業するにあたってどのようなリスクがあるか知りたい人
  • 賠償保険の加入を考えている人
  • 開業医医師として開業するに当たって加入すべき必要な保険を知りたい人

内容をまとめると

  • 開業に当たって病院賠償責任保険、休業補償保険、火災保険、店舗総合保険は加入しておくべき
  • いつ何時医療ミスや事故が起きるか、患者から訴えられる可能性もあるので賠償保険に加入し損害補償に備えておくことが大切
  • 開業するにあたって、万が一働けなくなったときのことを考えて開業にかかったお金のローンの支払や休業中の生活費のことなどを考えると休業補償保険に加入したほうがいい
  • 開業医医師として自然災害や避けようのない被害によって病院が大変な状態になったときのことも想定し、火災保険や店舗総合保険で備えておくべき
  • 医療訴訟は年間で1,000件程度。弁護士の増加や医療知識の広まりも相まって医療訴訟は他人事ではなくなってきている。万が一のときに備えて賠償保険は欠かすことができない

病院を開業するときに検討するべき主な3つの保険


医師として働きだして、自分の病院を開業することを目標としている人もいると思います。


しかし、いざ自分の城として自分の病院を開業した際、仕事中にトラブルや事故に見舞われるということも考えられます。


開業するにあたってそのような「病院で働いているときの万が一」に備えておく必要があると言えます。


自分の病院を開業する際の転ばぬ先の杖として

  • 病院賠償責任保険
  • 休業補償保険
  • 火災保険・店舗総合保険
の保険に加入しておくと安心でしょう。

以下では開業する際に加入しておくべき賠償保険や休業補償保険、火災保険・店舗総合保険について説明していきます。

①病院賠償責任保険

病院賠償責任保険とは、病院や診療所を開設した医師を対象としている賠償保険です。


医師や看護師、病院に関わる人の医療行為や病院内での行動によって患者の死亡や後遺症、身体の具合が悪くなったなどトラブルがあるとします。


その際に病院側が負担することになる損害賠償責任によって生じる病院側の損害をカバーするのがこの病院賠償責任保険なのです。


賠償保険において、保険会社に支払う保険料は病院の病床数や過去における損害発生の状況といったリスクによって上下しますので病院によって保険料は異なります。


詳しくは損害保険会社にお問い合わせください。


また、病院内で事故やトラブルを起こしてしまい病院賠償責任保険の保険金支払いを受けた場合には受け取った保険金の過多に応じて次年度の保険料が変化します。


つまり病院内でのトラブルや事故で保険金を受け取った場合、保険会社からはリスクが高い病院であるとみなされ次年度の保険会社に支払う保険料は高く設定されてしまいます。


プランや乗っている車種、年式によって基本保険料が決まり、事故歴によって次年度の等級や保険料が変化する自動車保険をイメージしていただけるとわかりやすいと思います。


患者が病院側の処置や何らかの行動によって損害賠償を請求する事態となった場合、患者は病院にその旨を訴えます。


患者からの訴えや損害賠償請求を受けた病院側は、加入している損害保険会社に連絡し、事故の報告やこれまでの診療記録、患者からの損害賠償請求書を損害保険会社へ提出します。


損害保険会社と契約している顧問医師の調査によって医学的、法的観点を考慮し、トラブルや事故の責任の所在や賠償金額を決めます。


このような病院内での事故やトラブルはないに越したことはないですが、万が一起こってしまった場合に備えておくのがよいでしょう。

②休業補償保険

元気に働いて次々と訪れる患者さんのために親身になって医療行為をしている医者も人間であることには変わりません。


人間ですから、いつ何時働くことができなくなってもおかしくありません。


医者自身の怪我や病気によって働くことが難しいとなった場合、働くことができない期間の所得を補償するのがこの休業補償保険です。


休業補償保険は自宅療養でも入院療養でも支払われる金額は変わらず、またどこで起きた事故か病気かといった発生場所や日時を問いません。


自動車保険などでよく見られる「自然災害は免責(自然災害の場合保険金の支払いなし)」という条件ですが、この休業補償保険にはありません。


つまり、自身や噴火、津波といった自分では避けようのないどうしようもない自然災害による休業の場合でも補償してくれるというのです。


生命保険などで見られるはじめの数日は保険金の支払いがなしという免責期間についてですが、休業補償保険の免責期間はたったの7日間です。


万が一怪我や病気で入院、仕事ができなくなったとしても8日目から保険金が受け取れるというのはありがたい話ですね。

③火災保険・店舗総合保険

病院も家やマンション同様、いつ何時病院自体が被害を受けることになるかわかりません。


自然災害が多い島国の日本ですから病院にも住宅と同じように火災や保険をかけておくに越したことがありません。


しかし病院の場合は医師にとって仕事場という意味でも、通常の火災や風災・雪災・落雷・破裂などを補償する火災保険に加入しただけでは不安が残ります。


職場としての病院にこそ必要な保険が店舗総合保険です。


通常の火災保険にさらに店舗総合保険に加入することで水災や建物外部からの物体の衝突などにあった場合の補償を受けることができます。


補償範囲が広がるというメリットもあるため店舗総合保険に加入するべきでしょう。


自然災害があった時に「これは補償適用外の災害だったから保険金が下りない」というのは目も当てられないですからね。


さらに覚えておいていただきたいメリットは「利益補填」です。


病院が自然災害で休まざるを得ない時に「通常通り開業していれば得られたはずの利益」を補填してくれるということです。


いつ火災や水害、外からの車の衝突などがあるかは神のみぞ知るです。


やむを得ず休業となった場合泣き寝入りしないためにも火災保険と店舗総合保険両方に加入しておくべきでしょう。

医師を対象にしたその他の賠償責任保険の種類

医師として働く上でいつ何時不慮の事態が起こるかわからないからこそ備えが大切ということが分かりました。


医療行為という人の命を預かっている行為だからこそ万が一の備えは欠かすことができません。


上記で紹介した病院や医者向けの保険の他に、医療行為を行う医師を対象にした賠償保険があります。それが

  • 勤務医師賠償責任保険
  • 日本医師会医師賠償責任保険
です。それぞれ勤務医向け開業医向けかで加入すべき賠償保険は変わってきますので以下で説明していきます。

①勤務医医師向け:勤務医師賠償責任保険

自分の病院を持たずに、サラリーマンのように病院に勤務している勤務医医師を対象とした賠償保険です。


勤務先の病院や出張先の診療所などで医療事故やトラブルを起こしてしまった時には患者に対して賠償責任が発生します。


勤務医師が法律上の賠償責任を負担することになった場合に被る損害に対して保険金が出る賠償保険です。


補償の範囲としては、医療行為によって患者に障害が残った場合、患者が死亡した場合、勤務先病院以外の医療行為による事故等が挙げられます。


その他、自らの医療事故やミスではない場合、つまり直接の指揮監督下にあった看護師による事故において、指揮・監督としての責任があるケースも対象となります。


つまり、この賠償保険は勤務医医師にとって医師として勤務する上でのお守りのような保険と言えます。

②開業医師向け:日本医師会医師賠償責任保険

こちらは上記には当てはまらない、自ら病院を持ち開業医として働いている医師向けの賠償保険です。


日本医師会に所属している医師の中でも自分の病院を持ち、そこで医療行為をしている医師がターゲットです。


医療行為によって患者に障害などが残り、損害賠償を請求された場合、そこの病院の責任者として賠償責任という責任を果たさなければなりませんよね。


その際に被ることとなる開業医師の損害に対して賠償額が100万円を超える場合、その超えた分を補填するという賠償保険です。


年間での支払限度額は1事故につき1億円、1年間としては3億円までです。


しかし、1事故の損害賠償額が100万円に満たない少額の事故やトラブルであるとされた場合は免責といわれ、賠償保険対象外、保険金は支払われないのでご注意ください。

開業医の賠償責任保険の必要性

開業医も人の子です。人間ですから絶対にミスや事故を起こさないとは言い切れません。


その上、開業医として自分が病院の責任者という立場からもし何らかの問題が発生した場合全て自分で解決していかなければなりません。


そのような中、頼れる存在といえばいざというときの保険です。開業医として損害賠償保険の必要性を感じるシチュエーションや心配の種である

  • 患者から賠償金を請求された場合
  • 実際に発生している医療訴訟の件数
  • 就業障害になった場合の開業資金の返済
について見ていきましょう。

①患者から賠償金を請求された場合の金額

患者から医療事故によって後遺症が残ってしまったと賠償金を請求されたとしましょう。


医療事故による後遺症によって今後の生活に不便を強いられることになってしまうということで、その賠償をどのように金銭に換算するかというところがポイントです。


患者の苦しみや辛さ、生活の不便を金銭に換算することや、金銭によって患者の受ける損害が全くなくなるということはありませんが、受けた損害をルールに則って金銭として表し、それでもって償うという方法しかないのです。


損害の評価方法については年齢、職業、収入等を考慮します。


そのうえで、医療事故が発生したがために本来得られるはずだったが失うことになってしまった利益を、いくらか換算して賠償額を決定するのが一般的な考え方です。


しかし、患者が医師の指示に従わなかった、本来もっと早く受診すべきところを受診せずに治癒を遅らせたなど患者側に何らかの過失や問題点がある場合、公平の立場から賠償金が減額されて支給されるというケースもありえます。


また、医療事故やミスそのものの損害賠償の金額に加えて、以下にかかった費用や損害が認められます。

  1. 治療費:
    症状が固定し、これ以上良くはならないと判断された時点で確定される費用
  2. 入院雑費:
    1日1,500円の定額
  3. 付き添い介護費:
    症状が重く、介助がないといけないと客観的に判断された時に認められる費用
  4. 休業損害:
    医療ミスや事故によって患者が仕事を休まなければならなくなった場合、仕事を休むことによって生じる収入の減少分を損害として認める
  5. 逸失利益:
    医療ミスや事故が原因で、患者が働くための力の一部を失うことになった場合、そのことによって減少してしまった収入を損害として認め、賠償請求ができる。これを遺失利益という。
    逸失利益=基礎収入×労働能力喪失率×ライプニッツ係数
    死亡時の逸失利益=基礎収入×(1-生活費控除率)×ライプニッツ係数
    ※ライプニッツ係数…将来の利息分を差し引くために掛け合わせる数値
  6. 慰謝料:
    精神的損害を前例に基づいて金銭にしたもの。
    入院の場合1ヶ月50万円、後遺症については等級が基準、死亡の場合は家族内の立ち位置によって決まる
  7. 葬儀費:
    一律150万円

②実際に発生している医療訴訟の件数

それでは医療訴訟は年間何件くらいあるのでしょうか。


 医療訴訟は年間で1,000件程度で、ここ10年は提起件数がほぼ横ばい状態となっています。


つまり月に80-90件ほどの医療訴訟が起きている計算となります。 


 平成15年には新件で年間 1,000 件ほどになり、平成16年には件数はピークになりましたが、そこから先は減少傾向、横ばいのままとなっております。 


 この訴訟の件数の多さには弁護士人口の増加や弁護士の医療訴訟への考え方などが関係しています。


 ロースクールの誕生で毎年数多くの弁護士が生まれてきていることから裁判や法律相談をする窓口が増え医療知識も広がってきたため泣き寝入りする患者が減少したことも理由として挙げられるでしょう。 


 そして弁護士にとって医療訴訟は楽をして勝てる裁判のパターンであると信じられるようになったということが考えられます。


 実際のところ、ミスや医療トラブルを起こす医者がここ数年で急増したというのではなく、医療問題について訴える人、訴える窓口となる人が増加したといったほうが正しいでしょう。

③就業障害になった場合の開業資金の返済

自分の城である自分のクリニックを開業するにあたっては多大な金銭が必要となりますよね。


働きながら返していくことが一般的だと思いますが、もしも主である医師が働けなくなった場合や死亡してしまうということも無きにしもあらずです。


そうなってしまった場合、病院開業にかかったお金はどのように返済していけばいいでしょうか。


  1. 団体信用生命保険へ加入
  2. 休業補償保険への加入

団体信用生命保険への加入については、ローンの契約者である医師が死亡した場合、団体信用生命保険の保険金で開業にあたるローンを全額返済してくれます。


しかし、団体信用生命保険のデメリットは「死亡時に限る」という点です。


幸いにも長期の治療は必要だが死亡ではないとしてもこの場合は補償の対象外ですので、開業にかかったお金は自腹で無収入という状態で返済しなければなりません。


そこで休業中の収入の補償という点では休業補償保険への加入をおすすめします。


仮に病気や怪我、事故である一定期間働くことができなくなったとしても保険金が支給されるため生活費や開業資金の返済に頭を悩ませるということはなくなりそうです。


開業医は勤務医と異なり、全て自分で決定し自分の仕事は自分で責任を追う立場といえます。


そのため働けなくなった時のリスクは非常に大きいため、休業補償保険もしっかり加入しておくとよさそうです。

保険加入はいつまでに検討するべき?


ここまで医師の保険加入について必要性などを見てきましたが、実際賠償保険などの保険加入についてはいつ頃までに考えて加入するべきでしょうか。


結論としては、医師として働きだしたら、開業を決意したらその時点で賠償保険などの見直しや保険加入を検討するべきでしょう。


医師として働くことができているうちはいいですが、いつ何時医療ミスやトラブルに見舞われるか、自分自身の怪我や病気で働けなくなるかは誰にもわかりません。


開業医の場合、これらに加えて開業のためにかかったローンの返済や病院で働いている他のスタッフの生活も背負っているためその責任はさらに重いものとなります。


なにかあってから「賠償保険に入っていれば」と思っては後の祭りです。


それらに備えるためにも、医師の保険加入は「医師として働きだしたら」「開業を決意したら」など医師としての仕事の節目に見直して加入するべきといえます。


保険加入を意識したら、ぜひお金のプロとも言われているファイナンシャルプランナーが多数在籍しているマネーキャリアにご相談ください。


ネットによるスムーズな予約、ZOOMなどを使用したオンライン面談を行っております。


相談はご納得いただけるまで何度でも可能ですので、お気軽にご相談ください。

まとめ:病院の運営をしているなら保険の検討・見直しは必須!

ここまで医師に必要な保険について見てきました。


医師として働いていることを考えるといつ何時医療ミスや事故が起こるかわからないので、そんな時の損害倍書に備えて賠償保険に加入するべきです。


それに加えて開業医として自分の病院を運営している場合、建物の損壊、ローンの返済や病院で働いている看護師や従業員の生活もかかってくるため、心配事や不安がつきまといます。


もし何かあった時の重荷は計り知れません。


そのような万が一に備えるためにもぜひ、保険の検討や見直しはきちんと行ってください。


何かあってから後悔しないようにするためにも今のうちから賠償保険や休業補償などを自分のこととして考えいざという時に備えてください。

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