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自賠責保険の運用益の行方とは?自賠責保険料の豆知識について

自賠責保険は車を買う際に加入が義務づけられている損害保険です。この保険に支払った保険料は保管されるだけでは無く、それを運用して利益を出しています。今回は、この運用益がどんな事業に使用されているのかや、自賠責保険料が安くなる可能性、などについて解説します。

自賠責保険の”運用益”は何に使われているの?

自賠責保険は車を買う際に加入が義務づけられている損害保険です。

各保険会社・共済が回収した自賠責保険の保険料は、いったん一つの口座に集められ、配分率に応じて保険会社・共済へ分配されます。

保険料を支払ったからには、それぞれの保険会社・共済でしっかりと管理してもらいたいですよね。

しかし、これらのお金は保管されるだけでは無く、保険会社はそれを運用して利益を出していることはご存知でしょうか。

我々としては、保険会社・共済が私的に利用していないか心配になりますよね。

そこで今回は、「自賠責保険の運用益はどんなことに使用されているか」について

  • ノーロス・ノープロフィットの原則とは
  • 自賠責保険の運用益約6,100億円の未返還問題
  • 運用益の使いみち
  • 運用益があるなら保険料は安くならないのか

以上のことを中心に解説していきます。 

この記事を読んでいただければ、自賠責保険の運用益の使用用途や、保険料等への影響を知ることに役立つと思います。 

ぜひ最後までご覧ください。 



保険会社は自賠責保険では”赤字も黒字も出さない”決まりがある

自賠責保険は損害保険会社または共済で加入することになります。

しかし保険料は損害保険料算出機構という機関が設定していて、損害保険会社または共済で自由に金額を決めることはできません。

なぜなら自賠責保険は被害者救済を最優先とした保険である以上、保険料を安く抑える必要があるからです。

損害保険会社または共済ごとに保険料がバラバラでは、未加入者が多くなってしまうことも想定されます。

よって、どの損害保険会社または共済で加入しても同じ保険料となっています。

こちらでは、被害者の救済を最優先とするための自賠責保険料の仕組みを解説します。

ノーロス・ノープロフィットの原則について

ノーロス・ノープロフィットの原則は、保険の保険料率や共済の共済掛金率は、能率的な経営の下、適正な原価を償う範囲内で、できる限り低いものでなければならない(自動車損害賠償保障法第25条)、と自賠法で規定されています。


つまり、各損保が利益も損失も出してはいけないこと、を意味します。

そのため保険会社や共済が利益を出すのは任意保険のみ、ということになります。

自賠責保険料は”毎年改定”されている

前述したノーロス・ノープロフィットの原則で被害者救済の仕組みを維持するため、常に保険料の改定が必要になります。


交通に関係する社会情勢は変化し続けますし、交通事故の発生率等も毎年一定ではありません

そのため、自賠責保険料は毎年改定されることになります。

2017の時点で、自賠責保険の運用益約6100億円の未返還問題

自賠責保険の運用益について従来なら、運輸省(現・国土交通省)の特別会計に繰り入れられていました。

1994年に当時の大蔵省(現・財務省)が、国の財政の逼迫を理由として一般会計に繰り入れ、そのことが未返還問題の発端となりました。

こちらではこの問題の内容を説明します。


国の特別会計に計上される運用益が”一般会計”に入ったままだった

国側のずさんな対応で、一般会計に繰り入れられたままの自賠責保険の運用益は、返還期限となっている2000年度を過ぎても元本分以外は返還されていませんでした。

つまり、約6,100億円もの多額の運用益が特別会計に戻されていなかったことになります

このまま返済が滞れば、特別会計に残っている財源も十数年で底をつくおそれがありました。

最悪の事態になれば、自賠責保険での被害者救済に重大な影響を及ぼすことにつながります。

2018年現在も運用益の全額返済の方向へ進んでいる

被害者救済に重大な影響を及ぼす事態を回避するため、交通事故被害者らは団体を結成し、返済を求めることを決めました。 

その後、事態を重く見た財務省と国土交通省は、特別会計に残った運用益の枯渇を防ぐため一定額の返還の実施等を盛り込んだ覚書を、平成29年12月18日に締結しました。 

これを受けて財務省は、自賠責保険の運用益返還を行うことになりました。


2018年現在では運用益の全額返済の方向へ進んでいますが、今後ともこの返済を注視していく必要はあります。

自賠責保険の運用益の使い道と保険料について

自賠責保険の運用益の使い道について、当然保険会社や共済の利益になるわけではありません。

自賠責保険の運用で得られた利益は、日本損害保険協会に集められます。

主にそのお金は、交通事故の防止・被害者保護のための事業に活用されています(自賠責運用益拠出事業)。

下表を参考にしてください。
(一般社団法人日本損害保険協会「2018年度 自賠責運用益拠出事業一覧」を基に作成)

自賠責運用益拠出事業内容拠出額
自動車事故防止対策交通事故防止のための啓発・教育や、交通事故防止機器の寄贈、交通事故防止に関する研究に利用されます。137,915千円
救急医療体制の整備救命救急医療機器・機材の寄贈、救急医師・救急看護師の育成、ドクターヘリ事業の推進に利用されます。619,144千円
自動車事故被害者対策交通事故相談等への支援、交通遺児への支援、被害者・家族等の心のケア、講習会の支援、研究支援に利用されます。961,001千円
後遺障害認定対策公募による研究助成(自動車事故医療研究助成)に利用されます。70,000千円
医療費支払適正化対策医療費支払適正化の取組みに利用されます。158,525千円

-(総額)1,946,585円

2018年度では、総額で約20億円にも上る費用が被害者救済・医療体制の整備に使われています。

的確な運用益の使い道といえますが、保険料を払っている方々の中には「自賠責保険の運用益を利用して保険料を安くできないのか」と、疑問に思われる人もいらっしゃることでしょう。


こちらでは、保険料額が下がるケースについて解説していきます。

自賠責保険料額が下がるには”事故率の低下”

最近では、先進安全自動車(ASV)という、ドライバーの安全運転を支援する事故抑制システムの導入や、事故抑制技術の向上、若者等の車離れも要因となり、自動車事故が減っています。

そのため自賠責保険の支払金額も減ったため、平成29年4月1日から自賠責保険料の値下げが行われています。

自賠責保険料の値下げには、事故率の低下という良い影響が反映されているわけです。

下表を参考にしてください。(自家用乗用車および軽自動車を比較)


・自家用乗用車の保険料
平成28年度平成29~30年度
37ヶ月40,040円36,780円
24ヶ月27,840円25,830円
12ヶ月16,350円15,520円

・軽自動車の保険料
平成28年度平成29~30年度
37ヶ月37,780円35,610円
24ヶ月26,370円25,880円
12ヶ月15,600円15,130円

表を見ると、自家用乗用車も軽自動車も共に平成28年度と平成29・30年度を比較すれば、470~3,260円安くなっています。

なお、平成30年度は平成29年度の保険料が据え置かれています。

保険料の”値下がり前”に加入しても差額分の払い戻しはない

平成29・30年度に自賠責保険へ加入すればお得と言えます。

では平成28年度以前に加入した方々の保険料はどうなってしまうのでしょうか。


残念ながら、平成29年3月31日までの契約は値下げ前の金額のままとなってしまいます。

差額分の払い戻しも当然ありません。

これまでの交通に関係する社会情勢、交通事故の発生率に対応した保険料の改定のため、やむを得ない保険料の差といえます。

まとめ

自賠責保険の運用益はどんなことに使用されているかについて解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。 

今回の記事のポイントは


  • 保険会社・共済は、自賠責保険で大きな利益をあげてはならない
  • 自賠責保険料は毎年改定されている
  • 自賠責保険の運用益約6,100億円の未返還問題は解決されつつあるが、これからも行政の対応を注視する必要がある
  • 自賠責保険の運用益で自賠責運用益拠出事業が行われている
  • 事故率の低下により平成29・30年度は自賠責保険料額が軽減されている
でした。

自賠責保険料は、確かに車を所有する方々から必ず徴収される形にはなっていますが、このお金は交通事故の被害者救済・医療体制の整備にしっかりと活用されています。

ほけんROOMでは、保険に関して幅広い記事が多数掲載されています。

保険について知識を深められるので、ぜひご覧ください。

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