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自賠責保険は無過失責任なの?その理由や目的などを徹底解説

自賠責保険は実質上無過失責任といわれています。これは、被害者救済を目的とした社会政策的な理由からであり、被害者の故意過失を立証しないと、被害者へ自賠責保険が支払われることになります。また、加害者となってしまったご自分が無過失であることも立証する必要があります。

自賠責保険の無過失責任について解説!自賠責保険の社会政策的な側面とは?

自動車事故を起こした場合、自分に過失(不注意)が無ければ賠償責任を負わなくても良いと思われがちです。

自分が十分注意したにもかかわらず事故が起きた場合、賠償責任を負わされるというのは誰でも嫌なものですよね。

しかし、自賠責保険は実質上「無過失責任」と呼ばれることがあるのはご存知でしょうか。

ドライバーの中には、「過失も無いのに責任を取らされるなんて理不尽な!」と困惑する人もいらっしゃることでしょう。

そこで今回は、「自賠責保険が実質上無過失責任である目的と理由」について

  • 自賠責保険が実質上無過失責任であることの根拠
  • 無過失責任を免れる3つの条件とは
  • 自賠責保険は何故、無過失責任であるのか

以上のことを中心に解説していきます。 

この記事を読んでいただければ、自賠責保険がなぜ実質上無過失責任なのかを知ることに役立つと思います。 

ぜひ最後までご覧ください。 


無過失責任とは?

無過失責任とは、過失が無くても責任を負わなければいけないこと、を意味します。

責任を負わされる人には非常に重い事態と言えます。

こちらでは、民法と自動車損害賠償保障法(自賠責法)で規定されている責任の内容について解説します。

民法709条における過失責任が原則

民法では、『故意または過失』によって他人の権利または法律上保護される利益を侵害した人は、侵害の原因によって生じた損害を賠償する責任を負うこと、を規定しています(民法第709条)。

故意または過失の「故意」とは、わざと他人を侵害して損害を生じさせたことを意味します。

また「過失」とは、不注意で他人を侵害して損害を生じさせたことを意味します。

つまり民法では、わざと他人を侵害したり、不注意で他人を侵害したりしなければ、その人は責任を負わなくて良いことになります。

これを「過失責任主義」と言います。

自賠法3条の運行供用者責任を解説!無過失責任を裏付ける理由とは?

自賠責法では、自分のために自動車を運行の用に供する者(運行供用者と呼ばれています。)は、その運行により他人の生命または身体を害した時、これによって生じた損害を賠償する責任があると規定しています(自動車損害賠償保障法第3条)。

こちらの内容をみてもわかるように、民法の規定にあった「故意または過失」という言葉がどこにもありません

よって、自賠責保険は無過失責任と解することもできます。

もらい事故で損害賠償責任!2015年の福井地方裁判所の判決とは?

  • 2015年の福井地方裁判所の判決とは、一方の自動車がセンターラインをはみ出したことが原因で発生した自動車同士の正面衝突事故により、センターラインをはみだした車の方に乗っていた人が死亡した事案の判決です。
福井地方裁判所は、センターラインをはみださなかった対向車側に対し「前方不注視の過失がなかったはいえない。」として、賠償責任を認めて約4000万円の損害賠償を命じました。

前述した判決を読んだ方々の中には、「そんな!センターラインをはみだした車の方が悪いじゃないか!」と、反感を覚えてしまう方もいることでしょう。

このような判決が出た理由は、次の「無過失責任を免れる3つの条件とは?」及び「自賠責保険は交通事故被害者の救済が主目的!」にて説明します。

無過失責任を免れる3つの条件とは?

自賠責保険は完全な無過失責任というわけではありません。

自賠責保険の法律第3条の後段では、
  1. 自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかったこと、
  2. 被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があったこと、
  3. 並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかったこと
を証明したときは、責任は問われないとしています。

前述した事案では、センターラインをはみださなった対向車側が、これらの主張・立証を行えたなら、保険金を支払う責任を負わなかったものと考えられます。

以下ではその詳細を解説します。

1:自分や運転者が注意を怠らなかったこと

ご自分または車の所有者であるあなたが運転者と共に、不注意を行わなかったことがあげられます。

ご自分(または配偶者等)が運転していた場合、道路の速度制限や、一旦停止等、道路交通法で定められている注意義務をすべて遵守していたことを証明することが必要です。

しかしながら、ご自分や同乗者の主張・状況証拠だけで、この立証はなかなか難しいのが実情です。

そのため、ドライブレコーダーを設置する等して、運転の一部始終を記録できるように対策を取ることが大切です。

2:被害者や運転者以外の第三者に故意過失があったこと

被害者側が交通事故に遭う危険な行為をしていたことを証明すれば、損害賠償責任は課せられません。 

例えば、歩行者が赤信号と知りながらそれを無視して横断歩道を渡っていたり、横断歩道以外を横断したり、飛び出したりした行為を証明することが必要です。

2015年の福井地方裁判所の判決ならば、センターラインをはみだした車がいかに無謀運転だったかが記録されていれば、重要な証拠となります。

しかし、このような主張立証をすれば必ず免責されるわけではありません。

通常ならば過失相殺を主張して、損害賠償額の軽減を図る主張を行います。

やはり、その際の証拠としてドライブレコーダーの記録が重要な証拠となります。

3:自動車に構造上の欠陥や機能障害がなかったこと

ご自分の運転する自動車の車検等の法定点検をきちんと受け、整備を万全に行っていたことを証明することが必要です。

逆に車検を受けておらず、整備も杜撰であると判断されたならば、より責任が重くなります。

自賠責保険は交通事故被害者の救済が主目的!

自賠責保険はなぜ実質上無過失責任を採用している形になっているのでしょうか。

それは、自賠責保険は被害者の救済を第一に考えているからです。

自賠責保険は被害者の傷害や後遺障害、死亡に対して救済を行うことが目的とされています。

運行供用者責任や立証責任の転換により被害者救済を図る

前述した自賠責法3条では、過失の立証責任が「転換」されています。

民法709条では損害賠償の請求者(被害者)が、加害者の過失を立証する責任を負うことになります。

しかし、自賠責法3条では、逆に加害者側が自分の無過失を立証しないと責任を負ってしまうのです。

つまり、自賠責保険は被害者救済のための保険であるため、加害者に対して無過失責任に近い重い責任を負わせたことになります。

まとめ

自賠責保険が実質上無過失責任である目的と理由について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。 

今回の記事のポイントは

  • 自賠責保険は実質上無過失責任であるため、加害者は自分の無過失・被害者の故意過失・自動車に欠陥が無かったこと全てを、主張立証しなければならない
  • 自分の無過失を立証したい場合はドライブレコーダー等で記録を取ることが有効
  • 自賠責保険が実質上無過失責任なのは被害者救済を図るため
でした。

自賠責保険では被害者の救済が最優先とされます。

そのため、加害者は実質的に無過失責任を負うことになってしまいます。

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