元認定調査員が教える!介護保険認定調査を受ける際の心得とは?

介護保険を利用するにあたり、まず初めにクリアすべき難関が「認定調査」。これは、ご本人がどれだけ介護サービスを受ける資格があるのか?という審査そのものと言っても過言ではありません。介護保険を申請される方のために、認定調査を受けるときのコツを紹介いたします。

監修者
株式会社Wizleap 代表取締役。東京大学経済学部で金融を学び、金融分野における情報の非対称性を解消すべく、マネーキャリアの編集活動を行う。ファイナンシャルプランナー証券外務員を取得。

介護保険の要介護認定調査についての全知識

高齢の方が自立した生活を送るのが難しくなったときには、公的な介護保険のサービスを使うことができます。そのサービスを受けるためには「要介護(要支援)認定」というもが必要です。 この認定を得るために最も重要なミッションの一つが、この「認定調査」。

これから介護保険を申請される方のために、元介護保険認定調査員が「認定調査の受け方」について詳しく説明させていただきます。 

要介護認定調査とは

「要介護認定調査」。

聞いたことはあっても、未経験でその内容まで詳しくご存知の方は、なかなかいらっしゃらないのではないでしょうか。


認定調査とは、保険者(市区町村)側が被保険者(介護保険利用者)を直接調査することができる、唯一の機会です。自治体から派遣された調査員が利用者本人と接し、家族など立会人も交えて本人の状態を詳しく聞き取ります。


この認定調査の結果は、認定区分(要介護度ともいいます)の振り分けに最も大きな影響を与えます。認定された区分により、月当たりの介護保険サービスの「利用限度額」や「サービスの内容と範囲」が決定されることとなります。 


より良いサービスを受けるために、認定調査は介護保険利用開始の際に最も気を配るべき案件であると言えるでしょう。

介護保険の要介護認定調査の手順

 認定を受ける為の申請から認定調査までの流れは以下のようになります。 

①申請

②認定審査   


 [認定調査] 

市区町村の職員・または委託された民間のケアマネジャーが調査員として自宅を訪問し、聞き取り調査と実際の動作確認を行います。


  [1次判定]

認定調査と主治医意見書のマークシート部分をコンピュータにかけ、自動で要介護度をはじき出します。ここでの判定はまだ最終決定ではありません。 


 [2次判定] 

一時判定結果に加え、認定調査と主治医意見書の記述部分も勘案し、介護認定審査会 (3名~5名以上の専門家から構成される)が総合的に判断を下します。ここで決まる二次判定が最終的な結果となります。


 ③認定通知 

審査の結果が自宅へ郵送されます。 

市区町村への申請

介護保険利用者本人の住民票登録地である市区町村の窓口が申請場所です。

要介護認定調査の申請場所

申請は主に利用者本人または家族が行います。近隣の地域包括支援センターや、民間の介護保険事業者に申請を代行してもらっても良いでしょう。

要介護認定の申請に必要なもの

申請時には以下のものを持参しましょう。


① 印鑑 (利用者、申請者両方)


② 介護保険申請書

市区町村や地域包括支援センターにあります。 事前に手に入った場合は記入して持参しましょう。申請時に申請書を受け取り、そこで記入することもできます。 自治体のHPからダウンロードすることも可能です。 


③-1(65歳以上の方)介護保険被保険者証

65歳になったときに、自宅に送られてきています。紛失している場合はその旨を窓口で伝えてください。


③-2(40歳から64歳までの方。特定の16疾病に罹患している方に限る)

医療保険証を持って行きましょう。


④利用者本人のマイナンバーカード、またはその写し


⑤申請者の身分を証明できるもの


⑥主治医の氏名、病院の名称・所在地・電話番号が分かるもの 

認定の審査には、主治医の意見書が必要です。申請書には主治医について記入する項目があります。普段病院にかかることがなかった方も、主治医を決定して診察を受けてください。意見書の依頼は、市区町村が医師に直接行います。

介護保険の要介護認定の訪問調査について

介護保険の要介護認定審査で決定される介護度により、受けられるサービスの内容は以下のように異なります。

区分毎の毎月の利用限度額

利用限度額は全国共通の単位数で示されます。


[月利用限度額(単位)]

要支援1…5,003単位

要支援2…10,473単位

要介護1…16,692単位

要介護2…19,616単位

要介護3…26,931単位

要介護4…30,806単位

要介護5…36,065単位

(2017年現在)


この単位数に地域別等級単価をかけたものが、利用上限金額となります。

等級単価は、例えば1級地の東京23区は原則11.4円/1単位、同じ都内でも7級地の檜原村は10円/1単位と地域によって大きく異なります。


例えば東京23区在住・要介護3の方の利用限度額は

26,931×11.4円=307,013円

となります。 

(サービスにより1単位の単価がやや違うため多少前後します) 


注意したいのは、これは支給される金額ではないということ。

あくまで介護保険サービスにかかった費用全体の金額です。 

この中から1割(前年度の収入により2割)を、利用者が負担することとなります。 


要介護2と要介護3では、利用上限金額の差はおよそ7万円。この格差を見ると、できるだけ高い介護度になった方が得な気もしますが、必ずしもそうとは限りません。

 介護度が上がれば、料金そのものが高くなるサービスもあります(デイサービス・ショートステイなど)。同じだけの利用量ならむしろ損をしますから、あくまでも現在の状態に見合った介護度に認定されることが得策と言えるでしょう。 


ただし、介護度によりサービス内容の制限もあります。 

介護タクシーは要介護1以上

ベッドや車椅子のレンタルは要介護2以上

特別養護老人ホームへの入所は要介護3以上

など、多くの条件が設けられているのです。


希望するサービスに介護度の制限がないか、申請時に窓口で聞いてみましょう。

いつ、どこで行われるのか

事前にアポイントメントの連絡が入り、互いの都合を擦り合わせて調査実施日時が決まります。

原則として主たる日常生活の場である自宅が調査場所となります。

しかしやむを得ない事情で、入院中の病院・ショートステイ先の施設・子の自宅などで実施されることも珍しくありません。

調査内容は

全国共通である74の調査項目について調査を実施します。 

各項目は主に、


  • (動作や理解が)できる/できない
  • (認知症症状などの)有無
  • 介護の手間


これら3つの基準で評価されます。 

調査の内容は以下の7つの分野にわたります。 


  1. 身体機能・起居動作(立つ・歩くなど基本的な動作について)
  2. 生活機能(食べる・排泄する・着替えるなど日常動作について)
  3. 認知機能(短期記憶力・生年月日の把握などの可否) 
  4. 精神・行動障害(被害妄想など困った症状の有無) 
  5. 社会生活への適応(金銭管理・集団活動などについて) 
  6. 特別な医療(透析・点滴・胃ろうなどの有無) 
  7. 日常生活自立度(包括的に身体機能・認知機能を点数で評価)

介護保険の要介護認定調査の注意事項

認定調査の所要時間は通常30分~1時間程度。その短い間で、本人の正しい状態を伝えなければなりません。

とかくお年寄りは、できないことについても「大丈夫、できる」と 言ってしまいがち。また、認定調査の時に限って普段では絶対できない動作ができてしまうことや、普段答えられない質問に答えられるということもよくある話です。

家族も普段の状態を正しく伝えられないまま、調査が終わってしまうことも少なくありません。

必ず家族が立ち会うようにする

本人が客観的に自らの状態を調査員に伝えることはかなり難しいと考えましょう。

かといって言ったことを家族がその場でことごとく否定すれば、本人の自尊心を大きく傷つけることになります。


認定調査では、調査時の状況より普段の状況を優先して評価するように定められています。 

「本人からの聞き取りが終わった後に、別の場所で普段のことを話したい」

ということを、事前に伝えておきましょう。手紙にしたためるというやり方もありますが、手紙の内容と調査項目の評価基準にズレがあるということが多々ありますので、やはり家族と調査員だけで面談の機会を持つのがベターです。 


また、ケアマネジャーや地域包括支援センター職員などプロに同席を頼むのも一つの方法です。

気づいた事は遠慮なく伝える

残念なことですが、認定調査員の能力や質にばらつきがあることは否定できません。とにかく早く調査を終わらせようと、いい加減な聞き取りをする者がいるのも事実です。

特に「人の話を聞こうとしない調査員」は、要注意。

それを防止する意味でも、家族の立ち会いは必須なのです。


また、気づいたことや疑問があれば本人に遠慮なく伝えましょう。もし聞く耳を持たなければ、調査の後に役所に電話しても構いません。調査員の質や態度の問題で、調査自体がやり直しとなることも少なくはないのです。



困っている事は具体的に伝える

以前調査を行っていた時のケースです。

私が訪問したAさん(90歳男性)は一人暮らし。腰痛で歩くのがつらく、長年這って生活しています。日中はほとんど横になっています。

それなのに、前回調査結果は最も軽い「要支援1」。


遠方から立ち会いに来てくださった娘さんに前回調査時の様子についてお聞きすると、調査員に日常動作について尋ねられたときに、ほとんどの項目で「なんとか自分でやっています」と答えたとのこと。

独居なのですから、自分でやるしかないのはもっともな事情です。しかし、それだけしか伝えないとマークシートで全て「自立」を選択されてしまいます。 


「自分でトイレに行くが、立ち上がるとき腰に激痛が走る」 

「自分で着替えるが、30分以上かかる」 

など、その中で生じる困難についても具体的に細かく伝えましょう。マークシートの選択自体が変わることもありますし、少なくとも記述部分には書いてもらうことができます。

まとめ

2015年4月に、特別養護老人ホームへの入居要件が要介護1以上から要介護3以上に引き上げられました。高齢者の増加にともない、財政を圧迫する介護サービスの制限はさらに厳しくなってくることが予想されます。

今後、事前に認定調査対策を行うのは利用者側にとって必須のことといえます。公的介護保険でより充実したサービスを受けられるよう、 ぜひ今回お伝えしたことをしっかり心に留めておいてください。

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