大家さん必読!孤独死保険とは?もしもに備えて加入するべき

孤独死が発生した場合、当人が住んでいた住宅の大家さんが、部屋の修繕費や身の回りの備品整理を強いられる場合がほとんどです。年々孤独死発生件数が増加傾向にある日本、被害を最小限にするにはどうすればいいのでしょうか。孤独死保険とは?3種の保険を徹底解説します。

孤独死に備えるべき?孤独死保険とは?

孤独死のニュースを見聞きする度に、自身の所有する建物で孤独死が発生することを考えて不安になることと思います。孤独死に備えて何か対策をしたいと思って、孤独死保険について調べる方も多いでしょう。


実際に、東京都監察医務院の発表によると、東京23区において単身65歳以上の一人暮らしの方が自宅で死亡した件数は、平成30年で5513件、過去10年で1.5倍にもなります。また、今後も高齢単身者世帯は増加し、あわせて孤独死件数も増加するとみられています。

(参考:東京都福祉保健局東京都監察医務院 東京都監察医務院で取り扱った自宅住居で亡くなった単身世帯の者の統計(平成30年)


この記事では、

  • 孤独死に備える3つの対策
  • 孤独死が起きたらどうしたらいいのか
  • 元に戻すのにいくらかかるのか

について紹介します。


この記事を読んでいただければ、孤独死の現状と、どう対策すればいいのか理解できるでしょう。ぜひ最後までご覧ください。



孤独死に備えて主に3つの選択肢が

東京都監察医務院の定義によると、孤独死は「異常死のうち単身世帯の者が自宅で死亡したこと」を指します。特に高齢者世帯の場合は家族・親戚や、地域コミュニティとの交流が乏しいケースが多く、孤独死を未然に防ぐことは難しいといわれています。実際に、孤独死の約6割を60歳以上の高齢者が占めています。


仮に賃貸住宅で孤独死が発生した場合、再び賃貸契約可能な状態に復元させるに補修や清掃、残された家財の処分などが必要です。また、孤独死などの死亡事故が発生した物件は、新規契約時に敬遠される傾向があるため、空室期間が多くなったり、家賃の値引きが必要になったりと、孤独死は賃貸物件のオーナーにとって大きなリスクとなります。


次項以降では、孤独死に対する具体的な備えとして、

  1. 孤独死保険
  2. 少額保険
  3. オーナー向け特約付き保険

の3つを詳しく解説します。


ぜひ最後までチェックしてみてください。

1孤独死保険

自身の所有するマンションやアパートなどの賃貸物件で入居者が死亡すると、

  1. 部屋の清掃や遺品処分などの現状復帰費用
  2. 空室期間や家賃の値下げに対する家賃収入減

の大きく2つの費用が発生します。


孤独死の場合は、借主である入居者の近親者や保証人と連絡が取れず補償金を請求できないために、オーナーが費用負担せざるを得ないケースも多いようです。孤独死による原状復帰費用負担と家賃収入減とのリスクに備えるための保険が、「孤独死保険」や「孤独死対策保険」とよばれる保険です。


2011年ごろから発売がスタートし、発売以降年々加入件数は増加しています。東京海藤日動火災保険の「孤独死保険」は、2017年の加入件数が前年度の1.7倍であったという報告があり、超高齢化社会である日本において備えておくべき重要な保険の一つといえるでしょう。

2少額保険

孤独死に対する備えとして、ミニ保険といわれる少額短期保険へ加入する方法もあります。アイアル少額短期保険株式会社の「無縁社会のお守り」や、エイ・ワン少額短期保険会社の「あんしん住まいるオーナー保険」などが有名です。


現状復帰費用の補填や、家賃収入減に対する補償はもちろん、見舞金として5万円の支給が受けられたり、葬儀の実施にかかる費用も補償範囲に含まれたりと、各商品とも様々な特徴があります。


アイアル少額短期保険株式会社の「無縁社会のお守り」の契約加入件数が2019年時点で2万9000戸と加入実績があることからも、孤独死への備えとして少額短期保険人気があるのが分かります。


保険料控除が受けられなかったり、保険会社が倒産した場合のセーフティーネットが無かったりとデメリットはありますが、1室あたり月額300円程度~と保険料負担も少ないので、個人でアパートを経営している等、比較的小規模の場合は少額短期保険への加入がおすすめです。

3オーナー向け特約付き保険

火災保険の特約や付帯サービスを利用して孤独死のリスクに備えることもできます。


大手損害保険会社が発売する火災保険に、家賃収入保障や破損・汚損への費用補償などを目的とした特約を付ける方法です。


保険契約全体としての保険料は高くなりますが、孤独死に限定せず幅広いリスクに対する手厚い保証が受けられるので、企業として大規模なマンションを所有管理している場合は、こちらの保険を検討するのがおすすめです。

もし何もせずに孤独死が起きたらどうなる?

もし自身が所有する賃貸物件で借主が亡くなった場合、賃貸契約自体が終了するわけではないので、物件を借りる権利は連帯保証人や相続人にそのまま引き継がれます。そのため、孤独死が起きたとしても賃貸契約に基づき家賃請求をすることは可能です。


死亡理由によって請求可能な範囲は異なりますが、連帯保証人や相続人に対して現状復帰費用の請求することができます。

(参考:三井住友トラスト不動産 賃貸経営の法律Q&A


ただし、孤独死の場合は相続人や連帯保証人と連絡が取れないケースや、相続人が相続を放棄するケースによりトラブルに発展するケースも多くあります。


貸主側が現状復帰費用や家賃収入減の負担するだけでなく、トラブル解消のための体力的・精神的負担や弁護士費用等がかかることは、孤独死のリスクを検討する上で、考慮に入れておく必要があります。

元に戻すまでにいくらかかるの?

孤独死が発生した場合、部屋を賃貸物件として公開できるような状態に戻すのにかかる費用として、大きく「残置物処理費用」、「原状回復費用」、「家賃保証費用」の3つの費用項目があります。

日本少額短期保険協会が2019年に発表したレポートによると、それぞれの平均損害額は、残置物処理費用が約21万円、現状回復費用が約36万円となっており、家賃保証費用を含めると約90万円程度の費用負担が発生します。
(参考:日本少額短期保険協会 第4回孤独死現状レポート

実際に過去の判例では原状復帰費用として約95万円の支払いが認められたケースもあり、孤独死による費用負担は大きいです。また、残置物処置費用も原状回復費用も金額の幅が大きく、状況によっては500万円を超える支払が発生する可能性もあります。

実際にはこんな被害が

実際に被害にあった例を紹介します。60歳の高齢男性が自室で孤独死をしたケースで、現状復帰費用として約100万円、空室期間の家賃収入減として約50万円が発生しました。


このケースは、事故発生時期が7月であり、発見も遅れたため異臭が酷く、多額の特殊清掃費用や、事故部屋の隣人に対して謝罪の手土産費用等もかかりました。また、金額面での負担はもちろん、遺品整理・トラブル解消にかかる体力的・精神的な負担も相当なものだと考えられます。


他の例では、事故発生後に次の入居者が見つからず、建物自体を取り壊し駐車場にリフォームするケースもあり、リフォーム費用はオーナーが全額支払うことになりました。


孤独死発見までにかかる日数は、平均で17日であり、事故後3日以内に発見できるケースは全体の4割にとどまります。孤独死は家賃滞納や異臭、郵便物の滞納などにより発覚することが多いですが、早期発見は難しいのが現状のようです。


孤独死は発見が遅れるほど、被害範囲が大きくなる傾向があるので、日頃から入居者とコミュニケーションをとるなど、異変を素早く検知できるようにしておくことが大切です。

入居者が若かったら大丈夫?油断大敵

孤独死と聞くと高齢者の問題というイメージがありあますが、65歳未満の割合は過半数を占めており、60歳未満の現役世代でも孤独死の4割に至ります。

男性女性合計
人数 2,804(1,703)588(373)3,392(2,076)
割合(%)82.7(81.0)17.3(18.0) 
死亡時の平均年(歳) 61.4(60.8)61.0(60.7) 61.3(60.8) 
65歳未満者の割合50.8%51.2%51.0%

(参考:第4回孤独死
現状レポート 男女別孤独死人数と死亡時の平均年齢


高齢者が孤独死となる場合の死亡理由は、病死や事故死の割合が高いのに対して、現役世代の死亡理由は自殺の割合が高いのも特徴的です。自殺による孤独死のうち、約7割は40代以下というデータがあります。


また、男性よりも女性の自殺割合が高く、特に20~30代の女性の自殺割合は全世代の6割を占めています。入居者が若いから大丈夫と油断するのはやめた方がいいでしょう。

まとめ:何かしらの対策はしておくべき

いかがでしたでしょうか。孤独死について、孤独死の現状と、その対策を紹介しました。


この記事のポイントは、

  • 孤独死の件数は東京都23区だけで年間約5000件、年々増加傾向にある
  • 孤独死が発生した場合、現状回復費用、家賃収入減で約90万円の費用負担がある
  • 相続人や連帯保証人と連絡がつかず、オーナーが費用負担するケースも多い

でした。


高齢者だけでなく、若い人の孤独死が発生する場合もあります。自身の所有するマンションやアパートで孤独死が発生することも想定し、定期的な見回りによる孤独死の予防や、孤独死保険の加入など、リスク対策を取っておくのが安心です。

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